第13話
俺としゅんこは洞窟の壁をぶち壊し、魔物を蹴散らしながら進んで行った。流石にしゅんこのやったように階層を蒸発させることはしなかったが、順調なペースで進んでいる。
それにしても、相変わらず魔物が一撃で死ぬんだよな。しゅんこのダンジョンでもそうだったから、少し期待してたんだがな……。
まぁまだ上層だし、中層くらいには骨のあるやつがいるかもな。
「姉上、ここは10階層じゃから次はボス部屋じゃ。そこでなら手応えのある者がおるかもしれん」
「そうですね、上層のボスなら手応えあるかもしれませんね!」
そうか、次は上層のボスか。だったらデコピンでは終わらないはずだ!
俺としゅんこは張り切って10階層を駆け抜けた。
魔物を薙ぎ倒し壁をぶち抜き進んでいれば、あっという間にボス部屋の前に着いた。
「さて、どんな魔物がいるんでしょうか……」
「姉上、楽しみなのはわかるが、もうちょっと殺意を抑えてくれ。怖い」
:ようこちゃん、いつから君はそんなバトルジャンキーに……
:強い者に飢えているのか……
:ようこちゃんがサ◯ヤ人になっちゃう
:強さ的にはそれくらいあってもおかしくないがな
「むぅ……殺意なんて出してませんよ。さて、行きましょうか」
俺はそう言ってボス部屋の扉を開けた。
扉の先にいたのは、ゴブリンがそのまま小汚いおじさんになったような魔物がいた。それを見て俺が最初に思ったのは——
「可愛く無い」
:ようこちゃんそんなこと言わないの
:はぁ!? かわいいだろ!?
:あのぼてっとした体がいいんでしょ
:まさかゴブリンキングファンがいるとは思わなんだ
へぇ、ゴブリンキングって言うのか。確かにそんな見た目してるわ。
キングって言うからにはこれまでのゴブリンとは一線を画す程の強さがあるんだろう。決してデコピンだけで終わることはないだろうな。
「さて、やりましょうか」
「頑張れ、姉上!」
:行けようこちゃん、デコピンだ!
:デコピンでぶっ飛ばせ!
:木っ端微塵にしちまえ!
:うおおおおお!!
「えぇ……じゃあ一回だけですよ」
リスナーのみんながデコピンしろとうるさいので、一回だけする事にする。正直デコピンで倒せるわけがないので相手の反撃を予想しながら俊敏に動き、間合に入る。
「えい」
軽ーい掛け声と共にデコピンを放つ。すると、デコピンしたゴブリンキングの頭が木っ端微塵に弾け飛んでしまった。
「え?」
なんとか返り血は避けたが、動揺を隠せなかった。え、なんで倒せたんだ?
こいつ上層ボスだよな? 上層で一番強い魔物のはずだよな?
嘘だろ……まさか上層ボスがこの程度だったとは………。薄々気付いていたが、もしかしなくてもここ初心者ダンジョンだろ。
うん、どう考えてもそれだわ。初心者ダンジョンの上層なら、この程度で納得だ。
「みなさん、どうやらここは初心者ダンジョンのようです。なので、あまり戦闘が派手にならないかもしれません」
:は?
:何言ってんだこの子
:まさか自分でも無双できるから初心者ダンジョンとか言わないよな?
:↑ようこならありえる
:てかそれが真実だろ
「察しの言い方がいますね。そうです、私はダンジョン探索初心者です。そんな私がデコピンだけで普通のダンジョンの上層をクリアできるはずがありません。つまり、ここは初心者ダンジョンなのです!」
:うわぁ……
:なんでそうなった
:しゅんこちゃんもなんで頷いてるの
:まさかしゅんこちゃんも同じ考えとかじゃないよな?
「む? 姉上はともかく里の落ちこぼれであった儂が無双できるダンジョンなぞ、初心者ダンジョンに決まっておろう」
:駄目だこりゃ
:しゅんこちゃん、さっきから自分は里の落ちこぼれとか言ってるけど過去に何があったんや
:何かすごい闇を抱えてる予感
:こいつら自分を過小評価しすぎなんだよ
:もうちょっと自信持ってもろて
:ダンジョン破壊してる時点で初心者の域なんて出てるんよ
「初心者ダンジョンだとわかればさっさと攻略してしまいましょう。しゅんこちゃん、中層に行きますよ」
「おう!」
俺達は気合を入れて、中層の入り口に向かった。
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