第7話

それから俺はリスナーからの質問をいくつか答えて配信を終えた。いやー、疲れた。

特になんで巫女服なのかって質問が来た時に「最強装備だからです」って答えたらみんなメイド服やらスク水やらを着させられそうになったのは疲れた。

でも面白かった。次の配信はいつにしようか。

明日の夕方くらいでいいかな。毎度お馴染みダンジョン攻略をしよう。

次の日、俺はいつものダンジョン前にいた。カメラを起動して、よし。配信開始だ!


「皆さんこんにちは! 新人ダンチューバーの狐坂ようこです。今回もダンジョンを攻略していきます」


:きたぁーーーーー!!

:きちゃあああああ!

:始まった、俺の生きがい

:ようこちゃんいつもかわいいよぉーーー!

:妹にさせてーーー!

:ようこちゃんハァハァ

:もしもしポリスメン?


今日もみんな元気だなー。一部変態がいるが俺今仮面してるから素顔なんて見えないはずなんだが……。

今日攻略するのはいつもの所だ。正直言うと毎回同じダンジョンを攻略するのはもう味気ないと思うんだよな。

でもこのダンジョン前攻略した時はなんか内装変わってたんだよな。だから今回ももしかしたら内装が変わってるかもな。

そう思いながらダンジョンの扉を開く。

するとそこには迷宮でもなく森でもなく、竹藪が広がっていた。何万本とも立ち並ぶ竹は圧巻で、壮大で、気圧されてしまいそうになる。

まぁ大袈裟に言ったがただの竹藪だ。壮大でもないし気圧されもしない。というか普通に歩きづらい。

そうだ、歩きづらいなら斬ればいいんだ。よし斬ろう。すぐに斬ろう。


:あの〜ようこさん?

:なんで無言で刀構えてるんですかね

:もしかして斬るの?

:新しいエリアに生えてる植物斬るの?

:結構な価値があるのに斬るの?

:斬っちゃうの?


斬!

俺は持ってきた白鞘で辺り一面の竹を斬り倒した。なんか竹藪の中にいた魔物も巻き込まれてるけど気にしたら負けだな。ともあれ、これで歩きやすくなったぞ。


「さて、ではどんどん行きましょう」


俺は宣言通り、どんどん魔物を倒していく。中には新しく見た魔物なども居たりして、素材も集まってきている。

正直いうと素材自体はあまり重要じゃない。だって初心者ダンジョンで獲れた素材が貴重なはずないんだからな。まぁでも一応集めるが。

重要なのは肉などの食料だ!

魔物はとてもうまいんだ。だからどれだけあっても困らない。

昨日二匹と一緒に食べたオムライスは本当に美味しかった。やはりでかいニワトリ(コカトリス)の卵は質が違うんだろうな。どの料理にも合うから汎用性も抜群なんだ。

見つけたら積極的に卵を奪——ゲフンゲフン、回収していこう。


:普通に戦闘力2500とかのやつ切り刻んでて……ハハハ

:もうなんかランクとかいらないと思うんだ

:たしかに全部切り刻めば同じか

:ようこが異常すぎるだけ定期

:ようこちゃんからしたらスライムもミノタウロスも黒竜も変わんないんだよな

:普通に国滅ぶのにな

:あれ、じゃあ俺らもしかしてようこちゃんに生殺与奪の権握られてる?

:ようこちゃんがその気になったら国なんてパーさ

:たぶんえい、で終わると思う


「もう皆さん何言ってるんですか。私が国なんて滅ぼせるはずありません!」


:うそだ!!!!


嘘じゃねえ!

俺なんかが国を滅ぼせる訳ないだろ。俺は探索者始めたばっかの初心者ぞ。そんな初心者がベテランに勝てる訳ないって。


「あ、扉ありましたね」


そうこうしていると、ボス部屋の扉の前まで来た。相変わらずあっという間だな。

思えば、このダンジョンのボスは可愛い子しかいないんじゃないだろうか。

ネロと銀花なんてもう本当に可愛いもんな。これは次にも期待ができる。可愛かったら絶対にペットにするぞ!

俺は期待にない胸を膨らませ、扉を開けた。

そこはいつもとは違っていた。ネロと銀花がいたような武骨で何もないフィールドとは違い、そこには朱の神社があった。どこか神聖さを感じるそれの御扉が開く。

現れたのは、狐の耳と、三本の尻尾を持つ幼女だった。

幼女は口を開き大声で名乗る。


「儂の名はしゅんこ。このダンジョンのマスターじゃ! 跪け、人間!」


………どこから突っ込めばいいんだ?

まぁでもとりあえず、幼女は保護しなくちゃいけないか。

しゅんこと名乗る幼女に近付き、目線を合わせる。しゅんこは俺の動きを警戒して見ていた。それもそうだ、あの子からしたら見ず知らずの仮面を付けた巫女が近付いてくるんだからな。警戒しないはずがない。


「しゅんこちゃんもしかしなくても迷子だよね? お父さんかお母さんの名前言える?」

「迷子ちがああああああう!!!!!」

「え?」


:wwww

:wwww

:ようこちゃんwwww

:迷子www

:普通あんな神聖で怪しい所から出てきたダンジョンのマスターを名乗る存在なんて警戒するもんだけど迷子wwww

:まさかの迷子www

:ケモ耳幼女か、俺が保護しよう

:いや私が

:いやいや俺が

:儂っ子ケモ耳ロリとか属性ありすぎだろ

:性癖よじれるわ!


「貴様! 儂は誇り高き妖狐じゃぞ! 貴様なぞ簡単に殺すことができるのじゃからな!」

「そうなの、すごいねぇ」

「むきーーーー!」


:やばいwwおもろすぎるwwww

:むきーー、ってwww

:ようこちゃんもおもろいししゅんこちゃんの返しもおもろいwww

:もうコンビ組めよwww


「こら皆さん、しゅんこちゃんに失礼ですよ?」

「いつも見ておったがお主はなぜそんな機械に話しかけておるのじゃ?」

「お姉ちゃんは配信者って言ってね、世界中の人達にダンジョンを攻略するところを見てもらってるの」

「ふむふむなるほど。では儂がここでお主に勝てば、儂の力を全世界に発信できるという訳だな!」

「ふふっ、そうだねぇ」


:ようこちゃんが完全にお姉ちゃんになってるの草

:ようこお姉ちゃん………ひらめいた

:↑通報した

:ようこお姉ちゃんハァハァ


……コメ欄相変わらず終わってるな。それにしてもしゅんこちゃんはどこから来たんだろうか。狐の耳と尻尾が生えているからたぶんどっかのダンジョンから来たのかもしれないし、俺のように突然生まれたのかもしれない。

他のダンジョンから来た場合はそこに連れて行ってあげたらいいけど、俺のように突然ポップしていた場合、行き先がない。

む〜……とりあえず、しゅんこちゃんが落ち着いたら事情を聞いてみるか。


「勝負じゃ人間! 儂が勝ったらその二匹を置いて儂のダンジョンに二度と来るな。貴様が勝ったらなんでも言うことを聞いてやろう」

「いいよー」


とりあえず、満足いくまで付き合ってあげよう。それと、なぜかネロと銀花を置いて行けって言われたけど、うん、大人気ないとこ見せちゃうかもな。

言っていいことと悪いことってあるんだよ、しゅんこちゃん?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る