第5話
:ミノタウロスが惨殺されてて草
:ブモォ!→死!
:Sランクの魔物が次々とやられていくのに草生える
:あ、また一匹やられたww
:八つ当たりされるミノタウロスさんかわいそす
「皆さんなんで牛さんに同情してるんですか……」
:いや状況的に考えて
:一方的に蹂躙しながら言われましても
「むぅ……」
リスナーのみんなはどうかしてるな。
牛を狩りながら進むこと数分後、違う魔物が現れた。ふよふよと浮かぶ姿は風船のようだが、何本も生える毒々しい触手がそれを否定する。それはまさに———
「クラゲですね」
:ようこちゃんはこう言ってますがSランクのトートクヴァレです
:言いにくww
:ようこちゃんからしたら全部同じなのだ
:Sランクすら雑魚にしてしまう、そこに痺れる憧れるぅ!
「みなさん、あんなに可愛いクラゲがSランクなわけないじゃないですか。いい加減にしてください!」
:いい加減にするのはお前だ!
:俺達に罪を着せられても……
:事実ですしお寿司
「もう好き勝手言って……あんなの石一つあればこうですよ」
俺が石を投げるとクラゲは頭部を破壊され呆気なく命を散らした。やっぱり雑魚じゃないか。こんなのがSランクとか言うのはやめて欲しい。Sランクの魔物に失礼だろ!
:クラゲーーーー!
:トートクヴァレ、何もできず敗退
:いい奴だったよ
:もう何も言わねえ
:今日もようこちゃんは可愛いなぁ(白目)
:現実逃避ニキは戻ってきてもろて
:どんな速度で石投げたら魔物の頭が弾け飛ぶんだよ
俺はクラゲの狩りも交えてどんどん奥へと入っていった。
配信を初めて二時間後くらいか?
ボス部屋前に到着した。ボス部屋に通じる扉は崖に張り付けられている感じで、武骨なデザインだ。
「さて、ボス部屋ですね。今回はどんな魔物がいるんでしょう」
前と同じくボス部屋の扉を開ける。可愛い子がいたらいいなぁ……。
「………え」
扉を開けた先に居たのは、でっかい猫ちゃんだった。モフモフの毛皮に凛々しい目を持ち、白と黒のシマシマの体は筋肉質でとても逞しい。
そのすべての要素が、俺には魅力的でとても可愛らしく思えた。
「かわいいー!」
:嘘だろ……
:かわ、いい?
:戦闘力ニキ計測よろしく
:ホワイトタイガー?
:なんだあの魔物
:まだ確認されてない奴だ
:新種!?
:戦闘力ニキはよ!
:測ったぞ、戦闘力5000だ
:5000!?
:嘘だろ!?
「戦闘力? 何ですかそれ」
:ようこちゃん、首傾げてる場合じゃないよ、早く逃げろ!
:そいつはマジでやばい!
:黒竜を倒せたとしてもこいつは……
「? よくわかりませんが可愛い猫ちゃんですね」
猫ちゃんは俺をまっすぐ見て、ガルルと唸った。うん、かわいい。絶対ペットにするから待っててね。
「ガルァ!」
そう吠えてから一気に距離を詰め、俺に攻撃の鉤爪を浴びせようとする猫ちゃん。俺はそれをいつも通り片手で受け止める。
「ガァ!?」
驚いてる顔もかわいいなー。そうだ、ペットにするのは決定だけどネロの時みたいにちゃんと聞かないと。
「猫ちゃん、私のペットになりませんか?」
「……ガルァーーー!!!」
猫ちゃんはなぜか大きく鳴き、俺に噛み付いてきた。俺は一旦離れる事でそれを避ける。
むぅ、やっぱり力の片鱗を見せた方がいいのかな。このままじゃ交渉もできないし。
……仕方ない。やるか。
俺は威嚇する猫ちゃんに殺気を放つ。逆らったら殺すという明確な意志を持った純粋な殺意をぶつける。
そして言葉の端々にも殺気と圧を込めて再度同じ質問をする。
「猫ちゃん、私のペットになりませんか?」
「………にゃ、にゃーん」
猫ちゃんはお腹を見せて鳴いた。うん、これで無事ペットになったね。
「君はこれから私のペットです。いいですね?」
「…にゃーん」
俺は猫ちゃんのお腹を撫でながら確認する。よしよしいい感じだな。
:ヒェッ
:なんか寒気が
:圧が…圧がすごい
:なんかボスの魔物に相対したくらいのプレッシャーを感じたんだけど
:こわいって!
:ヒェ
:逆らったら消し炭にされそう
:犠牲になったホワイトタイガーに敬礼!
:頭の上に乗ってるネロも震えてるぞ
「え、そうなんですか? ネロ、怯えさせてごめんね?」
「ブォ、ブォフ」
「うん、許してくれてありがとう」
まさかネロを怯えさせてしまっていたとは。うん、以後気をつけよう。
さてさて、この猫ちゃんをペットとして持ち帰る前に名前を決めなきゃな。どうしよっか……。
そうだ、ここは配信者っぽくリスナーに名前の案を募集するのがいいかも!
「それでは皆さん、今からこの猫ちゃんの名前を決めます。今回は皆さんに決めてもらおうと思うのでいい案があったらください!」
:ふっ、ようこちゃんの頼みとあっては仕方ない
:安直に白虎とか?
:↑それは種族名的な感じだろ
:シンプルにシロ!
:ホワイト!
:ブラン!
:駄目だネーミングセンスが壊滅的だ
:
:誰も戦闘力5000を屈服させた事に触れてないの草
:ようこちゃんを心配しても無駄だと言うことを改めて実感した
:タマ!
:ユキ!
「たくさんありがとうございます。あ、銀花っていうのいいですね。確か雪の別名でしたっけ」
すごいネーミングセンスだ。俺じゃあ絶対に思いつかないいい名前。雪のように白い毛皮を持つこの子にぴったりだ!
「決めました。この子の名前は銀花にします」
:いい名前やな
:無駄に洒落た奴じゃなくていいと思う
:綺麗な名前だな
:センスある人羨ましいわ
「さて、名前も決めたところで、宝箱を開けましょう」
ボス部屋の奥にある宝箱部屋に入る。中には前回と同じような大きな宝箱が設置されていた。
一応罠がないか確認して宝箱を開ける。中に入っていたのは一つのスキルオーブと、大剣だった。大剣は黒塗りのもので、一眼でわかるほどの業物だ。白鞘もそうだったがダンジョンで手に入る武器はいいものが多いのだろうか。
「スキルオーブは分身というスキルみたいです」
:分身!?
:ようこちゃんが増える!?
:天国!?
:黒竜や白虎を手懐ける程強いようこちゃんが増えたらえらい事になりそう
:世界滅ぶだろ
:ようこちゃんあなたなにとんでもないスキル当ててるんですの!?
「さて目的も果たせましたしそろそろ出ましょうか。銀花、小さくなれますか?」
「にゃん」
銀花はくるっと一回転すると着地した時には小さな白猫になっていた。
そして俺の肩の上に乗った。やばいかわいい。吸いたい。
でもそれは後でもできるな。まずは配信を終わらせないと。
「それでは皆さんここまでお付き合いくださりありがとうございました。明日は雑談配信をしようと思っています。質問ボックスを作り、それに届いた質問に答えていく感じです。明日は20時から開始しますので是非きてください。ご視聴ありがとうございました」
告知と礼を告げ、俺は配信を終わらせる。それから家に帰り、変身を解いて元の姿に戻った後、ペット達と一緒に風呂に入り、料理を作る。魔物は基本何を食べさせてもいいが味覚はちゃんとあるし好き嫌いもあるので腕によりをかけて作る。
材料は配信の合間にダンジョン内で採取したものを使う。俺は食事しなくてもいいから今までしなかったけど二匹はしないといけないと思うし、美味しいものを食べさせたい。
作ったのはふわふわとろとろなオムライス。前世で見ていた動画サイトで流行ってたのを思い出したからこれにしようかと思って作った。
結構いい線いってると思う。その証拠にネロも銀花もガツガツと平らげてるからな。今世の俺は料理上手なのだ!
ふへへ、食べてる姿可愛いなぁ。
「美味しいか、ネロ、銀花」
「ブォフ!」
「にゃん!」
気に入ってくれたようで何よりだ。銀花も俺に懐いてくれたし、やっぱりご飯の力ってすごい。ご飯を食べ終えた俺達はソファに座りのんびりしていた。
ネロは腹が膨れたからか早々にベッドで寝て、銀花は俺の膝の上にいる。俺は銀花を撫でている。やばいめっちゃサラサラだ。
気持ちいいのかトロンとしている銀花めっちゃかわいい!
サラサラの毛並みを充分に堪能した俺は、明日の配信の告知をネットでして、二匹と一緒にベッドで寝た。
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