エピローグ 星の見える丘で
「えーっと、これ映ってんのか?」
〈映った!〉
〈それでも暗くて草〉
〈久しぶりの配信来た!〉
〈勇者生きてたのかww〉
「あ、映ってるみたいですよ!」
「良かった、久しぶりだから忘れかけてるよなー」
〈どこにいるんだ?外?〉
「うん、外。みんな1ヶ月ぶり!ヒロです!ちょっと一瞬だけ配信します!」
「おにいちゃん、はやくきて!すっごくきれいだよ!」
〈かにゃいる!〉
〈みんな元気してるのか⁉︎〉
「みんな揃ってまーす。つってもみんなは来ないけど、もうすっかり興奮してるからな」
「それも仕方ないですよ。私も感動してなんて言えば良いのかわかりません」
〈なんの話なんだ?〉
〈これ時差でそっちは夜ってことだよな〉
「そうそう。時間そんな無いしさっさとやるか。ってことで、ジャーン!」
〈スゲェ!〉
〈めっちゃ綺麗な星空!〉
〈行ってみたい!〉
「綺麗だろ?俺たちは今、綺麗な星の見える丘に来ていまーす。ちなみにあっちにいる人影が奏音とかみんな」
〈めっちゃはしゃいでるww〉
〈幻想的だな〉
〈星空と人影とか絵になりすぎる〉
「本当に今日はこれを見せたかっただけ。カメラじゃ魅力がほとんど伝わらないと思うから、いつかみんなも来てみてください!」
〈最高!〉
〈これからも時々でいいからこういうのやって欲しい!〉
「そうだな、余裕があればやろっかな」
「何してんのよ、早く来なさい!」
「やべ、呼ばれてるからそろそろ行くわ。ということで短いけど配信来てくれてありがとう、それじゃあまた!」
〈元気で過ごしてくれ、次の配信待ってる!〉
「配信終わりましたか?」
「おう、それじゃあ行こーぜ、待たせすぎるとアイツら怒りそうだ」
「仕方ないですよ。1回目と2回目は雨、3回目でようやく見れたんですから」
「そうだな。で、どうだ?感想は」
「だから言ったじゃ無いですか、言葉なんて出てこないです。それぐらい綺麗で……皆さんが約束をしていたのも、今なら納得です」
「だろ?つっても俺も改めて感動してるんだけどな」
「ところで勇者様、少し話は変わるのですが一つ聞いても良いですか?」
「ん?」
「勇者様はどうしてずっと配信者をしていたんですか?ずっと不思議だったんです、配信者をしなければ勇者であることもバレなかったのにって」
「そうだな。でも俺は残したかったんだ、魔物との戦い方を」
「戦い方、ですか?」
「魔王がいなくなって、勇者もこの世に必要なくなった。でも俺はずっと、迷宮は恐ろしいものだと思っていた。だから勇者じゃなく一人の人間として配信者を始めたんだ、俺の戦う様子や戦い方を一人でも多くの人に伝えるために」
「みんなが魔物と戦う力を身につければ勇者も必要なくなる、ということですか?」
「そのとーり、だから今も全部残したまんまだ。いつかまた誰かが迷宮の魔物を悪用しようとしても、俺の配信でみんなが魔物との戦い方を学んでくれていれば、前のような悲劇は起きないはずだ」
「勇者様はいつも人のことを考えていたんですね」
「まーな……この話はもうやめだ」
「はい!ふふっ」
「二人ばかりずるい」
「うわぁ、紗凪⁉︎急に横に現れるな!あとしがみつくな!」
「おにいちゃん、わたしも!」
「ならアタシも行こうかしら」
「来るんじゃねーよ!」
「加護の力をそんなことに使うんじゃねぇ!てか眩しくて星が見えねぇだろうが!」
「相変わらずだな。ところで紫安、何を食べてるんだ?」
「そこに生えてた毒草だよ、こんな綺麗な星を見ながらだと余計に美味しく感じるよねー」
「はぁ……なあ、バッドエンド。久しぶりに思い出すな」
「なにをだ?」
「俺とお前が常識人枠で、苦労させられていたことだ」
「ああ、最近旅に慣れてきたからか余計に酷くなってきやがったな」
「大丈夫です、私も常識人ですよ」
「そうだな、嬢ちゃんが増えて助かるぜ。つぅかアイツらは?」
「柊彩さんの取り合いをして、そのまま丘を転がってしまいました」
「何をやっているのだか……とりあえずアイツらのところに向かうか」
「わかりました、行きましょうか」
「おい紫安、食ってねぇで行くぞ」
「はーい」
「おにいちゃん、すっごくきれいだね!」
「そうだな、ところで降りてくれないか?」
「あー、おにいちゃん!そこは『奏音の方が綺麗だよ』っていわないと!」
「どこでそんなこと覚えたんだよ」
「こうしてみんなで横になって見るのも良いわね」
「俺は横になったんじゃなくて倒されたんだけどな」
「柊彩、みんなが来る前に二人で」
「やだ」
「まったく何をやって……って、横になっていたのか」
「俺はなりたくてなったわけじゃねーけどな」
「せっかくですし、全員で横になってしまいましょう!」
「おお、スゲェなこれ。星に包まれてる気分だ」
「横になって星を見て食べる、幸せだねー」
「……なあみんな、これから何が起きるのかわからない。世界中回って、時には大変なことも起こると思う。でも俺は信じてる、俺たち8人でなら絶対大丈夫だって。だから、これからも俺と一緒にいてくれ」
「何を今更」
「私たちは決して離れない」
「僕たちの絆は永遠、だからねー」
「アタシたちはこれからもずっと一緒よ」
「テメェこそ、もういなくなろうとするんじゃねぇぞ」
「わたしがおとなになっても、みんないてね!」
「私たちは仲間です、これからもずっと」
「ありがとう、みんな」
「勇者様、みんなで約束しましょう。私たちはこれからも一緒、だからまたここに来るって」
「いいわね、それ」
「そうだな、それじゃあ約束だ。またみんなで来よう。いつか必ず、この──」
『星の見える丘で』
fin.
底辺配信者(元勇者)、配信切り忘れで身バレする〜バズりすぎてて一生通知が鳴り止みません〜 上洲燈 @viola-000
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