第17話 ケモミミさんはモフられる

 しっぽをモフモフするという約束を交わしたあと、オレたちは遂に仕事に取りかかることになった。


 掃除、洗濯、料理。オレ的にはそこそこ出来たつもりだったが、メイド長からするとダメダメらしい。やっぱり本職の人にはかなわないなぁ。


 でも「アインちゃんは筋がいいから~すぐにマスターできるわ~」と言って褒めてくれたので、これからも頑張ろうと思う。

 ……でエリィなんだが…


「ちーん…なの」


 エリィは孤児院で、洗濯と掃除はしていたらしいので、そこそこできていたが、料理はもう…ね。まっっっったく!駄目だった。


 焦げる料理、いつの間にか無くなる調味料。挙げ句の果てには空飛ぶ包丁。

 …なんで?包丁が飛ぶのなんか前世含めて初めて見たよ???

 空飛ぶ包丁がマロンちゃんに刺さりそうになって


「…ポンコツエリィさん!何をしたら包丁が飛ぶですか!?2度と包丁を触らないでくださいです!!」


 と大変ご立腹だった。メイド長も


「あのね、エリィちゃん。料理ができないのはいいの。でもね、包丁は空を飛ばないのよ?」


 と黒いオーラをだしながらガチトーンで怒られて、お尻ぺんぺんの刑をくらいその場に突っ伏していた。


「お尻いたいの…」

「…まぁ、努力すれば…野菜は切れるようになるんじゃないか…?……2年後くらいに…」

「うう…アイン~慰めてほしいの~…」

「……よく、頑張った…と思う…?」

「頭撫でてほしいの~」


 ぐっ、そんな目で見てもオレはなにも……まぁ…撫でるくらいならいいか…。


 なでなで


 気持ち良さそうに目を細めるエリィ、上目遣いでオレにフリフリとお尻を突き出してきた。


「お尻もじんじんしていたいのー撫でてほしいのー」

「…棒読みだなぁオイ…」


 ダメだよ!幼女のお尻を撫で回すのは!犯罪ですヨ!


「アイン~?撫でてほしいの~」


 腰をくねらせ、蕩けきった顔で誘惑をしてくるエリィ。こいつ…サキュバスじゃねぇの?

 魅惑魔法でも使ってるんじゃ…なんでオレはこんな少女に胸をドキドキさせているんだ?

 いかんいかん。耐えろアイン!気持ちを抑えるんだ!いたいけな少女の尻を汚してはならぬ!!


「…ニ゛ャッ!!?」


 突然しっぽを触られる。やさしく、しかし激しくもある触り方で、しっぽを愛撫してくる。な、なんてテクニシャンなんだ…

 付け根の辺りを撫でられる度に背中にびりびりと電流のようなものが走る。


「…んっ…ちょ……っと…エリィ!…やめ…っ…」

「アインは約束したの~しっぽを触らせてくれるって~♪」

「今じゃ…ん…なくてもいいッ!?…だろ……」


 わ~!やめろ~!頭おかしくなりゅ~!!


 バンッ!!


「お辞めなさい!」


 物凄い勢いで扉が開かれ、良く通る声で叫ぶ人物。


「ぷ、ぷりんしゃま…?」

「げっ!…プリン様なの…」


 息を切らして、肩を上下させたプリン様が!助けて!この変態少女エロィをオレから離してください!プリン様ぁ!


「次はわたくしの番ですわ!」


 ………え?


「……プ、プリン…様?」


 まるで、捕食者に食われる小動物のように肩を震わせ、潤む瞳でプリン様に助けを乞う。


「そんな目で見つめてもダメですわ!プリンという名を定着させた報い、とくと受けなさい!!」

 わしっとしっぽを掴まれる。


 ニ゛ャ~~~!!!


「エリィは耳を触るの!わふわふ~」

「ニ゛ャーッ!」

「猫はしっぽの上をトントンすると喜ぶって聞きましたわ!」

「ウニ゛ャーッ!!!」


 トントンとしっぽの付け根を叩かれると、腰が浮く。息も絶え絶えだ。

 あーやばいこれやばまじやばだわこれほんとやばい。

 室内にオレの矯声が響き渡る。


 やめてー!!私のライフはもうゼロよッ!!

 ガクガクと腰を震わせ、オレはその場に膝をついて倒れた。エリィたちから見れば、お尻を突き出している格好だ。

 ……さっきのエリィと同じ体制だな…

 意識が遠くなる前に、そんなことを考える。


「………もッ…ムリ…」

「「あっ」」


 オレは気を失った。






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