第14話 ケモミミさんはメイド服を着る
「…改めて…アインです…」
「エリィなの!」
「アインちゃんとエリィちゃんねぇ~。私はアンナ、メイド長よ~。そして、この子が孫のマロンよ~」
「マロンなのです…よろしくです。アインさんエリィさん…」
オレたちは軽い自己紹介をし、頭を下げる。
エリィも真似して、ぎこちない礼をしている。…ふふふ。珍しくエリィが緊張しているな。
「「よろしくお願いします」」
「じゃあ二人には早速、着替えて働いてもらおうかしらねぇ~」
「……え?面接は?…ないんですか…」
「面接なんていらないわ!選り好みできる程余裕ないもの!即戦力よ~!」
…大丈夫か?オレ、料理と掃除しかできんぞ?…え?家事できんのかって?…里にいた頃、いじめが怖くて家からでなかったからな!引きこもりだよ!両親に申し訳ないから家事を手伝ってたんだよ!
「はーい!エリィメイド服着るの!」
……この子はほんと、わが道を行ってるよな…まぁそこがエリィの良いところなんだけど…
オレたち二人はメイド部屋に案内された。ここが住む部屋で、オレはエリィと相部屋だそうだ。……不安だなぁ。
「わー!二段ベッドなのー!」
エリィがわいわいとベッドの上で跳ねている。おい、やめないか!怒られちゃうぞ!
横のメイド長から黒いオーラがでてるって!顔は笑ってるのに目が笑ってないよこの人!
「ふふふ、元気ねぇ…でもエリィちゃん?後でちゃーんとベッド、直してもらいますからね?」
「…ぴぃ」
エリィはきぜつした…!
オレは荷物(ほとんどないが)を部屋に置き、気絶したエリィをおんぶしてメイド長についていく。エリィさんはオレの背中でだらしない顔をしながら「えへへ……あいんのせなかぁ…」と言って、涎を流している。おい、起きてるだろ。
「さ、お着替えをして貰うわ~!エリィちゃんはマロンのお古を着ましょうね~」
「はーいなの!」
エリィとマロンさんの身長はほとんど同じくらいだ。
「…エリィさん、何歳なのです…?」
「…?12歳なの!」
「………12歳と…おなじ…なのです…」
後で聞いた話だが、マロンさんは16歳らしい。まぁ、12歳と身長がほとんど同じは…ねぇ…
「アインちゃんはおっきいわねー!サイズ合うかしら~?」
まぁ、190cmぐらいありますからね!おっぱいもありますよ!ふふん!
オレは自慢気にぽいんぽいんと揺らして胸を張る。
「「おお…」」
幼女ふたりの視線が熱いが気にしないことにする。一人は欲情。もう一人は嫉妬だ。
「…アインさん…」
「…ん?」
「…その胸に付いている駄肉を削ぐのです…私が棄ててくるですよ…」
「………」
マロン先輩…目が怖いッス…
「そのお肉エリィに頂戴なの!」
……エリィさん…アンタ…。
「ふふーんなの!」
エリィがスカートの裾を持ち上げくるくると回る。
メイド喫茶で着ているようなフリフリのメイド服ではない。黒いワンピースに白いエプロンを着た、本場のクラシカルメイド服だ。
…意外と似合ってんじゃん…
「エリィちゃんはメイド服が似合うわね~」
「ふふふ…あ!アイン!」
「…ん?」
「うっふ~んなの~」
「………」
エリィが腰を引き、胸元を少し開けて上目遣いでこっちを見てくる。少女のくせに、やけにセクシーだ。エリィが絶世の美少女だからだろうか。
若干、ドキドキしつつも
「…あー、メイド長…もっと大きいサイズはないのか…?」
メイド長は、女性にしてはかなり背が高い。すっかり腰が曲がっているが、背筋をぴんと伸ばしたら、170cmくらいはあるだろうか。背筋を伸ばしたメイド長…。見た目だけなら、厳しそうなお婆さんになりそうだ。顔は結構怖いしね。口調はかーなり緩いが。
マロンパイセンがエリィと同じくらいの身長で、新しくメイド服を買うお金もないから、自動的にメイド長のお古を着ることになったのだが…。
「………臍と太腿が見えてるんですが…」
なんでオレだけミニスカートのメイド服なの!?ちょっと動いたらパンツ見えるんですけど!お腹も丸見えで冷えるし!あと胸の辺りがかなり窮屈なんです!
ていうかこのメイド服、エリィのに比べてフリフリとかリボンとか付いてるし!
他の皆は本場のメイドさんなのにオレだけメイド喫茶で働く大学生みたいじゃん!
この格好!つむじはげのアゼルが見たら絶対に痴女って言われるよ!
「アイン…えっち…せくしー…う゛っ!!」
「…むきー!なのです!…その胸!許さないのです…!マロンは絶対勝つのですー!」
「あらあら、若くていいじゃな~い。私の若い頃はよく旦那とこの服を着て…ぽっ///」
エリィが鼻血を出して倒れた!?マロンさんは何に勝とうとしてるの!?メイド長は妄想に浸ってないで戻ってこーい!
結局、3人が正気に戻るまで30分かかるのでした…。
…ほんと、大丈夫か?この職場…。
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