第13話 ケモミミさんは屋敷に行く

 ギルドで登録した後、ギャルさんにトゥンベリア家の屋敷の場所を教えてもらい。二人でそこに向かっていた。

 てっきり、トゥンベリア家の領地に行くもんだと思ってたのだが、なんでもトゥンベリア家の一人娘が半年後、来年の春に学園へ入学するために今は王都にある別荘で過ごしているらしい。とはいっても両親は領地から離れられず、メイドや執事を雇う金が無いので、別荘にはお嬢様一人とその他数人しか居ないそうだ。

 だから募集をしていたのかな?賃金もそこそこ安かったしなぁ。住み込み可能らしいけど。

 考えに浸っていると、突然エリィに声をかけられた。


「ねー!アイン!」

「…ん?なんだエリィ?」

「本当に20歳なのー?」

「…あー、いや、わからん。多分そのくらいだろ」


 里から逃げたときは12歳だったが、そこから何年たったか数えてないからなぁ。

 確か、冬が7、8回来たから…20歳ぐらいだと思う…多分。


 それからエリィと軽い雑談をしながら、屋敷へと近づいていった。






 エリィと二人で貴族街に入ったが、視線が痛い。いかにも奥様って感じの人たちがこちらを見るなりヒソヒソと話始めるのだ。蔑むような視線を向けて。

 まぁ、平民の少女とダークビーストマンがこんなとこ歩いてたら怪しいもんな…泥棒が盗みに入る家の下見をしに来たと思われてるんじゃないのか?…っと確かここら辺だったな。


「…ここだな」

「ここなのー!」


 オレたちが来た屋敷は周りの家と比べても一回り小さい。ボロボロと言うわけではないが、かなり古さを感じさせられる。初代バイ○ハザードの洋館みたいだ。

 そう、まるで…


「…お化け屋敷なの…」


 あーあ、エリィさんそんな事言ったら怒られるよ?


「…お化け屋敷とは失礼ですね…」

「ぎゃーっ!幽霊なのーっ!!」


 すっころぶエリィ。

 ほら、言わんこっちゃない。思っても言わないの!

 て言うか幽霊って……可愛らしいメイドさんの幽霊だなぁ。


 箒を持ち、こちらをじっと見つめてくるメイドさんは長いダークブラウンの髪で、丸い眼鏡をかけた小動物のように愛らしい美少女だ。リスみたい…この世界って美少女率高いっすよね。


「…こんなところでなにしてるですか。掃除の邪魔なのでしっしっですよ」


 メイドさんは箒を盾にしながら、手を振ってオレたちを追い払おうとする。かわいい。

 腰に両手を当て、小さな胸を張りふふんと鼻を鳴らすエリィ。


「ここに働きにきたの!」

「……は?…です…」


 ですは絶対に付けるんだね…


「…こいつエリィの言うとおりだ。ここでメイドとして働きたい…証拠に、ほら…商業ギルドで貰ってきた紙だ…」


 訝しげにこちらを見ながらも、オレから紙を貰うメイドさん。

 丸眼鏡をクイッと上げ、鼻の先と紙がくっつきそうなくらいの近さで読んでいる。

 ……見えてる?


「…むぅ、ほんとみたいですね…わかりました。ついてきてくださいです…」


 オレたちはメイドさんの後へと続いた。





「ほわぁー」

「…ふふ、この館はプリシエラ様の祖父、ホットドッグ様が王都に建てられた別荘なのです…汚さないならもっと見ていいですよ」

「……ホットドッグ…」


 ごめん、美味しそう。


 屋敷の中はかなり掃除が行き届いていて、ちょっと埃臭いが、独特な雰囲気が漂っていて非常に趣を感じられる。

 なんだか、安心感があるというか、ずっとここに居ていたくなるような気分だ…。

 大広間を抜け、廊下を3人で歩く。


 コンコン


 部屋の前に着くと、メイドさんが扉をノックする。


「入っていいですよぉ!」


 中に居たのは、腰がすっかり曲がったお婆ちゃんだった。


「お婆様、この人たちがここで働くって言ってるです…」

「まぁ!助かるわ~。最近、腰が痛くてねぇ~この屋敷にはメイドが私とマロンだけしかいないからねぇ…そっちの獣人さんは…」

「…アイン…です」

「力持ちそうだし…そっちの可愛らしいお子さんは…」

「エリィなの!」

「………元気…そうだしね!助かるわぁ!」


 ぷぷっ…エリィさん…げ、元気そうって…


「…ぷぷっ」

「むー!アイン笑わない!!エリィ、役にたつの~!!!」


 ごめんよエリィ、だから叩くフリしてお尻を触らないでおくれ…


「仲が良いのねぇ」







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