第12話 ケモミミさんは登録する

 エリィをあの手この手で鳴かせた後、オレたちは受付へ向かった。


「ちィーっす、きょーはどんな用件スカー?」


 これまたキャラの濃い受付嬢だなぁ!

 赤髪で、くせ毛がひどくオレから見て左の頬にはハートマークのメイクをしている。

 …ギャル…なのか…?前世ではギャルという生き物に関わったことがなかったのでわからない…。

 オレは受付嬢のあまりの派手さに思わず後ろへ下がってしまう。エリィもオレの後ろへ隠れてしまった。…ってこら、勤務中に爪を弄らないの…。そしてエリィ!さりげなくお尻を揉まないの!


「…あーオレたち、この仕事を受けたいんだが…商業ギルドに登録してなくてな。登録がしたい」

「んー?どれどれー?ぶわっはッ!なんスカこの仕事!おねーさんメイドしたことあるんスカ!?

 …ん?なになに?初心者でも良い…?なーんか胡散臭いっスネー!年齢も種族も問わないィ?メイドってこたぁー住み込みも可能なんスカねー?……いいかもしれないっス(ボソッ)あーしも一緒に働いていいっスカー?

 …!てゆーかトゥンベリア侯爵家じゃないスカー!あの貧乏貴族のとこだったんスカ!?いやー、やめといたほーがいいっスヨー?あそこ、侯爵家でそこそこ地位も高いんすケド昔ッから領地でよく魔物がでるらしくてー、被害が大きいせーでぇー、領地の復興の為にお金ばんばん使って御屋敷がボロボロらしいんスヨー?まぢヤバっすヨネ!

 領主のヘンリー様はイケメンでー、お優しくてー、貴族としても一流とか聞きますケドー、お金がないならダメダメっスネー!

 平民ならあーしも働いて生活できるケドあーしの稼ぎだけで屋敷維持するのとか、むりむりむり!…あーでも、貴族の元で働いたことがあるって実績が…うーん、やっぱトゥンベリア家はなー、…でもこの人についていくといいことありそうだしー…それに、か、カッコいいし…(ボソッ)…女の勘ってやつっスカねー??

 あー、やっぱりあーしと一緒に別のトコで働かないスカー!?そこの女の子は置いて!あーしここ辞めたかったんすヨネー!」


 …お、おう…よく喋るな…この人…

 しっかし、トゥンベリア侯爵家…か。たしかに貴族で、しかもかなり階級の高い家が、商業ギルドでわざわざメイドを募集する必要ないよな…。種族も年齢も問わない。……怪しい実験とかしてんじゃないの…?

 なんも考えずにこの仕事にしたけど、なんか怪しい匂いがプンプンするからやめとこうかな…。オレは受付嬢の未だに続いている言葉を遮って喋る。


「…あー、やっぱりナ──」

「貴族様が困ってるならエリィとアインで助けるの!」

「──シで…」


 おおい!エリィさん!?

 心の中で全力で突っ込んでいると、エリィが幼いながらもやけに妖艷な笑みをこちらに向け、


働くの」


 や、やけにオレと一緒に働くことを強調しますね…


「…そースカ、まぁ、いいっスヨ?別に?ちょっとカッコいいて思っただけで?一緒に働きたいとは思いませンシー?でもぉ、アインさんがあーしと働きたいならー?別に行ってあげてもいいと思うッすケドー?」

「……オレ?」

「アインが格好いいのは認めるの!でもエリィと二人だけで、愛を語り合って働くの!部外者は引っ込んでろなのっ!」

「………」


 …彼女らは一体何を言っているのか…私にはわからん。


「…お二人とも?登録がしたいんですが。後ろも沢山並んでますし…」

「「…ハッ!」」


 ギャルさんは姿勢を正し、こちらを真っ直ぐと見た。


「おほん!…し、失礼したっス。それではお二人の登録をするっス。」


 そう言ってギャルさんは下から厚めの用紙と、ペンを取り出した。


「ここに、名前と年齢、住所か今滞在してる場所を書くんスヨ!」


 ギャルさんからペンと用紙を貸してもらったオレたちは書き始めようとしたのだが…


「…あのー、エリィさん?」

「ん?どうしたのアイン!」

「……字、書けないので書いてもらっていいスカー…?」


 エリィに全部書いてもらったオレであった。

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