第11話 ケモミミさんは仕事をさがす

 子どもたちと遊んだ後、オレはシスターに場所を教えてもらい、エリィと一緒に商業ギルドへ向かっている。ちなみに水晶玉は協会の物なので返しておいた。ダークの少女がちょっと泣きそうになっていたが許してほしい。いっぱい撫でておいた。…エリィが物凄い形相で少女を睨んでたけどね…


「ふふーん、ふん、ふーん」


 オレの横でニマニマと笑みを浮かべ鼻歌を歌うエリィ。そんなにオレと働けるのが嬉しいのか…。上機嫌の彼女を見ながらため息をつく。彼女はオレと結婚するなどと言っているが正直に言うと、年の離れた妹が若さゆえか「おねえさまとけっこんしゅるー!」と言っているようにしか見えないのだ。……それにしては、少し愛が重いような気もするが…。


「ここが商業ギルドなのー!」


 なんか、うん、普通の市役所って感じ。オレたちは西部劇の酒場にでてくるような扉を開けて、中に入る。おお、結構人が多いんだな…。


 仕事の探し方がわからなかったので、オレは女性職員さんに聞くことに。ほんの一瞬だけど嫌そうな顔されてちょっと傷ついたよ。悲しい。


「仕事を探しているのなら、あそこに依頼用紙が貼ってあるボードがありますので、そちらをご覧下さい」


 女性職員さんの言葉を聞いたエリィが一直線に向かっていった。速っ!50m走6秒ぐらいなんじゃないの?あの子…。女性職員さんが「元気ですねぇ」って苦笑している。ほんと、エリィにはいつも驚かされてばかりだなぁ。…不思議と悪い気はしないが。


「…よし……仕事探すか…!」







「…見つからへん…」

「見つからないの…」


 今、気付いた。オレ字読めねぇや。

 貼ってある用紙を片っ端から職員さんをいれて3人で見たが、どれもこれもエリィには出来ないような力仕事や専門的な仕事ばかりだ。おまけに年齢制限のあるものやダークお断りなんかあるもの。腹立ってきたね!

 エリィが唯一やりたいと言ってきた仕事なんか黒い袋を燃やすだけで金貨3枚!なんて実に胡散臭い仕事だった。…いったい黒い袋の中身は何なんだ……。


 仕事探しに疲れたオレは椅子に座って、エリィが上の方にある用紙を取ろうと一生懸命ジャンプしているのを眺めていた。頑張れーエリィー。……まぁ、エリィが取ろうとしてるところはオレと職員さんが見たんだけどね…本人が頑張っているので、黙っておくことにした。


「えいっ!なのっ!」

「…おお」


 おもいっきり溜めてジャンプ!右手を伸ばし、エリィは勝利の証(依頼用紙)を掴み取った!


「……ん?」


 エリィが取り外した用紙の後ろに、まだ比較的新しめの依頼用紙があった。「褒めて!」と視線で語ってくるエリィを避けつつ、その依頼用紙を職員さんに見せる。


「えーと、……トゥンベリア侯爵家…メイド…募集…初心者でも良い…種族、年齢…問わない…どうやらメ──」

「これだっ!」


 て言うか、今のところオレたちに当てはまる条件がこれしかないっ!


「んー?アイン、いい仕事見つけたの?」

「…ああ、この仕事なんだが…エリィはやりたいか…?」

「アインと一緒ならなんでもするの!」


 ……うん。エリィさん、そういう恥ずかしいこと言うのやめてほしいんだけど…


「あーっ!アイン顔真っ赤なの!」

「…うるさいっ!」


 職員さんがこっちを微笑ましげに見ている…!なんだか周りのあったかい視線も感じるし…


「と、取り敢えず、受付行くぞ!ほら!エリィ!」

「えへへ、アイン恥ずかがってるのー」


 ええいっ!この小娘ェッ!!もう許さんッ!!


「きゃはは!アイン、くすぐったーい!」


 オレはエリィが許しを請うまで脇腹をくすぐり続けるのであった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る