第3話 ケモミミさんは人里へ行く

...ハッ!?勢いのあまり、目の前の男に拳を叩きこんでしまった...。まぁいいや、オレのこと痴女呼ばわりしたし...。取り敢えずローブを羽織る。うん。体全体が隠れていい感じ。もう痴女とは言わせない...!

てか、名前聞くの忘れたなぁ。後で聞くかぁ。

それよりも!この人らがどこから来たのかカナーリ気になるッ!聞きたいッ!聞きたいぞォッ!


「...んむぅ?」


金髪を肩の辺りまで伸ばした神官の格好をした女の子が目をこすりながら可愛らし声を出して起き上がる。


おぉ...なんか小動物みたいで可愛いな...


オレは彼女を刺激しないようにできるだけ優しい声で話しかける。


「...目が覚めたか?」

「ふぇぇ...?あ、あなたは...?」

「オレの名前はアイン。君の名は?」

「せ、セレナですぅ」


取り敢えずセレナちゃんにミルク粥と栄養たっぷりのドロドロドリンクを飲ませる。

栄養ドリンクを渡したとき、この世の終わりみたいな顔をしていたがちゃんと全部飲んだらしい。

アイン特性栄養ドリンクを飲めてえらい!オレでも嫌だもん!オークの血が入ってるし...


昔、オークとの戦いで腕を噛み千切ってやったとき血を飲んじゃったんだよね。そしたらビックリ!体の傷が治ったではありませんか!

効果があるのはオークが生きているときだけらしい。でもコイツら首を切らない限りすぐに体が再生するから新鮮な血が取り放題なんだよね!

一家に一台オークくん!!


「......ありがとうございます...」


セレナちゃんは人間とは思えない程の青い顔をしながら感謝の言葉を告げてきた。ちょっと面白い。


...オレのことを怖がらないのか?てっきり「ヒィッ!?あ、悪魔ですぅ~!来ないでください~!!」とか泣き叫ぶと思ってたんだが...


「...アインさん?どうしたんですか?」


じっと見つめすぎたらしい。セレナちゃんは不思議そうに聞いてきた。


「......君は...オレのことを魔族だとおもわないのか?」


オレは恐る恐る聞いてみた。

彼女は少し目を見開いて、微笑みながら言った。


「確かに最初は怖いと思いましたが、今はそうは思いません。だって、アインさんが私たちのことを助けてくれたんですよね?いくらダークビーストマンだからといって命の恩人に失礼なことはできません」


確かに彼女は心からそう思っているのだろう。だがオレにはわかる。シルヴァ村で何回も見たから。少なくともそのエメラルドのような綺麗な瞳には怯えの色が混じっていることを...


それよりも...!


「...だーくびーすとまん??」

「肌の色が違う獣人のことです。エルフならダークエルフ、ドワーフならダークドワーフと言います」


おお...ダークドワーフって......すっげぇそのまんまだな...てかエルフもドワーフもいるのね


「...そうか、教えてくれてありがとう...起きたばかりでしんどいと思うが、どうしてこの森にやって来たか教えてくれないか?」


ついでにやって来たところも教えてくれないか?


「...私たちは冒険者ギルドで依頼を受け、魔物が突然急増したナジュラの森を調査しに来たんです」


ほぇ~この森ナジュラって言うんか。

って、冒険者ギルド??ますますファンタジーっぽくなってきたな...ん?


「いてて...あれ?痴女は?」

「ここは...?」

「いってぇ~、どこだよここ?」


おっ、みんなも起きたみたい。あとつむじハゲ、お前...おぼえとけよ?





皆が起きた後、全員に栄養満点オーク汁を飲ませ、改めて自己紹介をした。


「俺の名はアゼル。助けてくれてありがとな、アイン」


燃えるような赤い髪に無精髭を生やし、腰にロングソードを差している男がつむじハ......アゼルだ。20代後半だろうか?


「......マリーンよ、助けてくれてありがとう...」


次は、青い髪を持つ童顔の女の子。マリーンちゃん。

黒いローブを身に付け、とんがった帽子を被り自身の身長よりも少し小さいぐらいの木でできた杖を持つ姿はいかにも魔女っ娘って感じだ。

身長がかなり低いのもあって、どうみても少女がハロウィーンのコスプレを着てはしゃいでるようにしか見えない。

あんまりにも可愛らしかったから頭を撫でようとしたらめっちゃ怒られた。

22歳らしい。合法ロリ...!


「オレ、トーマスっす!アイン姐さん!今夜オレとディナーに...ほげぶッ!?」


マリーンちゃんに顔面パンチを食らってのびているのがトーマス。

見た目はいかにもチャラ男って感じ。貴族の三男坊にこういうヤツいそう...偏見だけど。


金色の短髪に少しつり上がった目に青い瞳、軽装に身を包み腰にダガーを差しているその姿からして、RPGでいうシーフだろうか?


...うーん。やっぱりトーマス以外の皆には少し警戒されているようだ。かく言うトーマスも最初は警戒していたが、少し優しくしただけでゾッコンだ。

...対等に接してくれるのはありがたいけど、さっきからディナーを一緒に!とか彼氏いんの?とかずっと喋りかけてきてちょっとウザいんだよね...しかもこの男、セレナちゃんにも色目を使っているのだ。美人なら誰でもいいのか...!

でもマリーンちゃんには普通に接している。何故なんだと聞いたら

「小さすぎて、恋愛対象には見れないッス~!」

あー、トーマスくん...後ろ後ろ。般若がいるよー。...うぉっ!人ってあんなに飛ぶんだ~。たーまやー。


さっきから2人でずっと相談していたハゲとマリーンちゃんがやってきた。ちなみにセレナちゃんはオレに膝枕をされて顔を真っ赤にしている。可愛いから仕方ないよね!うりうり。......勢いでしてしまったけど、大丈夫だよね?


「なぁ、アイン俺たちは町に戻ってこの森で起きたことを報告しなきゃなんねぇ。勿論、お前についてもだ。だから、お前にも一緒についてきて欲しい。そこでここでのことを説明して欲しいんだ。」


......!!!

つ、遂にオレも人里へ!?

こ、ここここここここはっ、冷静に...


「...フン、勝手にしろ...」

「そんなこと言ってるけどお前尻尾揺れすぎだろ...そんなに嬉しいの...あぎゃぴんっ!?」


お前は何も見ていない...いいな?


「...ひゃい」

「...ほら、こんなとこで時間を食っている場合じゃない...今すぐ準備をして行くぞ」


俺が悪いのか...?と疑問を持つアゼル君でした。

そこで上半身が地面に埋まっているチャラ男はほっていこう。


いざっ、しゅっぱーーつ!!






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