最終話 運命

 海人は、私だった。


 私は死んで、異世界で勇者になった。そして海人になった。私を救いに来た。


 私が夏休みを無事に過ごすことができたら、海人の運命も変わる。というか、私を救いに来ることまでが、運命だったのかもしれない。


 変な話だ。かつて私が死んだから、私は海人に会えた。


 私が生きるということは、そこのぐるぐるから抜け出すこと。もし死んでしまったらまた同じことが繰り返されるか、勇者になれなかったらそのまま終わりか。



 今のところ、私は決めている。


 海人は真実を告げ、まるで最初からいなかったように消え、なぜか机だけ残った。


 本来の海人が来る時間にはまだ早いはず。外は雨。海人が消えたのは私が、生きてほしいというメッセージをちゃんと受け止めたから?



 チャイムが鳴って、みんなが席に着く。廊下から足音がして、先生と誰かが扉を開けて入ってくる。


 入ってきた誰かは、海人とは似ても似つかない誰かだった。


 本来の私は、この人と誰かをめぐって、死んでしまうことになったのか?



 夏休みはまだ少し先。これからどんなことがあって、どんな気持ちになるだろう。


 今の私にはまだ、未経験なこと。


 辛くなったら、泣いてしまったりするだろう。


 異世界に行きたい気持ちにもなるのかな。


 そしたら心の中の海人が、止めに来るかな。


 今のところ、私は決めている。


 夏の日差しを浴びる。トラックは避ける。










「え、異世界って、あの?」


 海人の告白を見て、心の中で思ったこと。並行世界だけじゃなく、異世界は異世界で、本当にあるんだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る