第2話 好きな人

 海人は、未来について何かを知っている証拠のつもりなのか、転校してきて私とやりとりした後、ノートにクラス全員の名前を席の並び通りに書いた。


 夏休みの後、あいつは髪型をああするとかも書かれたけど、さすがにそれは今確かめようがない。


 それに、本当に私が夏休みの間に死ぬとすれば、その姿を見ることもないんだろう。


 だけど、仮に海人を信用したとしても、私はどうしたらいい。交通事故で亡くならないようにするって。夏休みに外へ出なければいいのか。


 海人は具体的な方法について語らない。横顔を見ても何を考えているのかわからない。


 もしも、普通にからかっているだけだとしたら。だとしても、悪趣味だし、よくわからない。


 ただ、私もこんなことを言われて、少し意地悪な心が生まれた。


「ひょっとして、私のこと好き?」


 たまたま掃除のとき、海人と二人になった廊下で聞いてみた。


 本気でそういうふうに考えたわけじゃない。でも、ちょっとはある。からかっているにしても、本気で言っているにしても、それは好きだからなんじゃないか。


 いや、動揺させて、真意を聞くのが目的だった。はず。


 そして海人は答えた。


「いや。美波じゃなくて、美波を好きな人が好き」

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