第344話 社長の好物

 ◇◆◇ 20X0年11月20日 命謳ビル ◆◇◆


 命謳ビル軍用走行車両ミサイル事件から三日、御剣さんには何の被害もなく過ごせている。

 KWN堂に対しては、KWN本社から何やら通達があったらしく、御剣さんが【命謳ウチ】にいるという事は不問になっているそうだ。

 本来、こういった事はたとえ川奈社長であっても難しいだろう。しかし、七海の裏に潜むパラティア共和国、【大いなる鐘】、【命謳】が関わってしまえばそうは言ってられないだろう。

 結果的に無茶を通す事になってしまったのは、俺の失態だ。

 今度、川奈社長には菓子折りでも持って行こう。


 そんな事を考えていると、俺のスマートフォンに連絡が入った。


 最強の父――玖命、川奈宗頼さんって何が好きなの?

 玖命――――娘じゃないかな

 最強の父――そうでしょうとも。いや、そうじゃなくて、お菓子とかそういうの


 正に今しがた考えていた事。

 俺もいつかそういう事もあるだろうし、ここは川奈さんに聞いてみるか。

 そう思い、俺は正面でパソコン仕事をしている川奈さんに話しかけた。


「川奈さん、今ちょっといいですか?」

「え? はい、大丈夫ですよ。新しい企画練ってただけなので」


 確かに、普段のパソコン仕事ならば四条さんがやってるはず。

 川奈さんがパソコン前にいる事自体珍しい。


「新しい企画って何です?」

「ファン感謝祭です!」


 何やら不穏な企画である。


「ファン感謝祭…………なるほど?」

「はい! 天才と一般人を繋ぐ企画ですよ!」


 前言撤回。面白そうな試みである。


「へぇ、具体的にはどんなものに?」

「ファン倶楽部会員限定のメンバーとの握手会、それに一般開放してからメンバー同士の座談会。大物有名人とか呼んでトークしたいですね。【KWtubeカウツベ】にある【命謳】チャンネルを通して、遠方の方とのコミュニケーションをとれたらいいなーと」

「そこまで煮詰めてるなんて凄いですね……!」


 俺がそう言うと、川奈さんはニコリと笑ってそれを否定した。


「いえ、これは海外ではありふれたイベント内容ですから。それに以前【大いなる鐘】もこういったファン感謝祭をしているので、二番煎じもいいところなんですよー」

「な、なるほど」

「まぁ、それでもやる価値は十分にあるので、四条さんと一緒に色々考えてるんです。その第一弾がこれです!」


 言いながら川奈さんは俺にパソコンを向けた。

 そこには華やかなフォントが使われ、こう書かれていた。


 ――命謳代表【伊達玖命】との3時間デート券を懸けたビンゴ大会!!


「…………ナニコレ?」

「当選枠を5口にする事で、平等性を保っています」

「そんなしたり顔で言われても……」


 というか、平等性ってどういう事だ……?

 いや、これ以上は踏み込んじゃいけないような気がする。


「あぁ、うん。企画を通す時は教えてくださいね……ははは」

「はい! わっかりましたっ!」

「あ、そうだ川奈さん。お父さんの好きなものって何か教えてくれます?」

「私……じゃないですかね?」


 どこかで見た事のあるやりとりだ。


「あ、えーっと菓子折りとかで、持って行くといいもの話で」

「あー、なるほど! そういう事ですか!」


 まさか親父とやったやり取りを、親父側としてやるとは思わなかった。


「うーん、そうですねぇ。駄菓子の詰め合わせとかどうですか?」


 菓子折りとして絶対に挙がらない候補がきた。


「駄菓子……好きなんです? 川奈社長」

「好きも何も、会社のテーブルとか自分のデスクとかの引き出しに駄菓子詰め込んでますよ?」

「秘書の方が買ってきてくれるそうなんですが、駄菓子に縁がなかった方らしくて、好きな駄菓子が手に入らなくて辛いとか言ってましたね」

「そ、それは意外ですね。わかりました、ありがとうございます」

「はい! どういたしましてっ!」


 そう言って、川奈さんは鼻歌を歌いながらパソコン仕事?に戻った。

 しかし駄菓子とは意外だ。

 お金持ちの考える事はよくわからないが、駄菓子が好きな気持ちもわからないでもない。

 そう思い、俺は今回の話題の元に連絡を入れる。


 最強の父――おーい、玖命くーん?

 玖命――――今、川奈さんに聞いてきた。

 最強の父――お、何だって?

 玖命――――駄菓子の詰め合わせがいいらしいぞ。

 最強の父――正気?

 玖命――――俺は正気。それに、川奈さんからの情報だし、嘘は吐いてないでしょ。というか、何でそんな事聞いたんだ?

 最強の父――あ、いや、何でもない。いつか挨拶する事もあるだろうし、予めリサーチしとこうと思ってな!じゃあ俺はもう会社出るから!しっかり天才の務めを果たすように!

 玖命――――あやしい


「会社出るって……まだ昼前だぞ?」


 という事は営業?

 まさかKWN本社に乗り込む気じゃ…………いや、親父に限ってそれはないか。

 ……いや待てよ?

 確か以前、川奈さんの水着写真はNGって川奈社長が電話してきた時――、


 ――テクノライクエンジニアリングは以前から私も目を付けていた会社だ。伊達君のお父様が勤務する会社だったとは驚きだよ。ふふふ、面白い繋がりが出来るかもしれないな。


 とか何とか言ってた気がするが……まさかな?




 ◇◆◇◆◇◆◇◆ 後書き ◇◆◇◆◇◆◇◆


 WEB雑誌【COMICユニコーン】発!


 コミカライズ版『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』第一巻の発売日となりました。


 漫画:はやさかめばゑ

 原作:壱弐参


 皆様、是非手に取って読んで頂ければ幸いです。


 下記、特典情報です。


 ◆電子書籍特典画像

 背中合わせの伊達兄弟に加え、デフォルトイラストの水谷と相田さん。


 ◆書店共通(紙媒体)特典ペーパー

 ⇒コミック一巻では登場しなかった【川奈らら】ちゃん。


 ◆メロンブックス特典ペーパー

 ⇒エネルギーチャージする【相田好】さん。


 ◆書泉・芳林堂書店特典ペーパー

 ⇒一巻では大活躍の【水谷結莉】くん。


 ◆ブックファースト新宿店特典ペーパー

 ⇒八南高校の制服姿の【伊達命】ちゃん。


 サンプル画像を見られるので下記、COMICユニコーン公式HPのリンクをご参考くださいまし。

 ⇒https://unicorn.comic-ryu.jp/blog/tensaihakenjo01/


 では、本日の正午にお会いしましょう٩( ᐛ )( ᐖ )۶

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る