第323話 ◆伊達玖命の上申1
KWN株式会社の社長【
リビングでは、妹の
2人は階段を駆け下りて来た玖命を見て、首を傾げる。
「どうした、玖命?」
「珍しく慌てて……どうしたの、お兄ちゃん?」
2人の質問に、玖命は口籠った。
何かを話そうとしているのだが、口から出てこない。
そんな玖命の異常事態に
「これは――」
「――玖命にとっての……アレだな」
2人はすぐにそれを察知し、行動に移した。
リビングの端にいた四条棗が、ポカンと口を空けながら、その光景を覗くように見ていた。
(また伊達家が何かやってる……)
それ以上でもそれ以下でもない伊達家特有の動き。
家族の異常に敏感な伊達家に、四条は感心しながらも若干引く。
「それじゃあ玖命。私に話してみなさい。30分くらい前から、正確に」
「えと……それは難しいというか……」
「なるほど、それじゃあ今、玖命はどんな問題に直面しているんだ?」
「…………女性関係?」
首を傾げながらもそう言った玖命に、
反対に、
それを見守っていた四条は、ピクリと反応し、目よりも耳を傾け、2m程伊達家に近寄った。
「はははは、玖命もついにそんな年齢になったか。ま、ちょっと遅いくらいだしな!」
隣に座っている
「お兄ちゃん、私の審査はちょっと厳しいからね。まず、騙されてないわよね?」
正面に座った
「あ、うん……それは大丈夫……かな?」
歯切れの悪い玖命の言葉に、
「何だ、玖命にしては返事が曖昧だな?」
「お兄ちゃん、相手は誰? 私の知ってる人?」
しかし、
四条は髪の毛を整えながら大きく深呼吸している。
だが、玖命から返ってきた答えは、更に
「多分知ってる人。今、結構有名だから」
前置きとして「多分」と付けたという事実。
それが
そして、四条は大きく溜め息を吐き、
しかし、その耳は玖命の口との最短距離を選んでいる事にはかわりなかった。
そんな中、父親である
(「多分」という事は……四条さんはない。何たって、もうほとんど家族レベルだし。可哀想に。だとしたら川奈さんも無しか。頻繁に我が家に出入りするし、何たってクランの一員だ。同じ理由で
顔を歪める
「『多分』って事は、私が会った事ない人だよね? それって誰?」
それが最善、最速だと判断したからである。
「……
重々しい玖命の言葉に、皆が目を丸くする。
そして、やはり最初に動いたのは
パチンと自身の額を叩き、「そっちかぁ~~……」と呟く
(え、ちょっと待って。何で? だって、接点があったとしても月刊Newbie10月号の取材の時と、今日の12月号の件。それに、間接的にだけど【天武会】の時……くらいよね? それ以外に会ってた? ううん、お兄ちゃんが、私にそれを黙ってるはずがない。やっぱり2回? 2回しか会ってないよね? 何、2回って? 伊達家で2回って言ったら買い物金額のダブルチェック……! もやし1袋、きゅうり1本の値段さえ2度見しなさいって教えて来たけど、2回よ!?)
そう思いながら、
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