第320話 独占インタビュー2
「――へぇ、そんな経緯があったんですね。道理で……最初、記者の御剣さんが司会に
「そうなんです。決まってからは勉強や発声や活舌練習やらでもう大変。いい経験にはなりましたが……やはり私には
苦笑しながら【天武会】での経験、経緯を説明する御剣さん。
どこか疲労が見えるのは気のせいではないのだろう。
それに……隣のカメラマン――堀田さんが御剣さんをチラチラと見ている。その何か言いたげな表情に、俺は首を傾げる。
「堀田さん、どうかされましたか?」
「あ、いや……な、何でもないっす」
何か御剣さんの件で言いたい事があるのだろうか。
気になるところだが、堀田さん、御剣さんが言わないのだ。
突っ込んで聞くのも野暮というものだろう。
「それでは伊達さん、表紙用の写真、それと、いくつかシチュエーションごとに写真を撮らせて頂きますね」
「あ、は、はい! よろしくお願いします!」
俺は立ち上がり、深く頭を下げた。
その後は、御剣さん、堀田さんの相談の下、様々な写真を撮られた。
パソコン前に座る姿、資料を読む姿、コーヒーを呑む姿……を断り、湯呑でお茶を呑む姿。
何故か、御剣さんにはネクタイを緩める姿をリクエストされたのだが、あれは必要だったのだろうか。
その他、バストアップなどの写真を撮り、何事もなく独占インタビューを終えた。
10月号、12月号と雑誌に載るとは思わなかったが、【天武会】の後、11月号発売間際だったというのに、10月号の売り上げが凄まじかったようで、増刷がかかったのだとか。
12月号には俺一人。
勿論、後半部分には他のクランや天才が掲載されるようだが、1/3のページは伊達玖命という男で埋まるらしい。
何とも恐ろしい事を聞いてしまった。
月刊Newbie……確かに新人扱いされる経験値ではあるが、しっかりと成長して、御剣さんや堀田さんに呼ばれないようにならなくては。
「それでは伊達さん、後日原稿が上がったら連絡しますね」
「あ、はい。確認作業ですね」
前回の海老名事件の時とは違い、今回は何事もなく取材が終わった。KWN堂の御剣さん、堀田さんを
その後は米原さんやこばりん、何故か四条さんまでというか、その場にいた全員と一緒に写真を撮り、その日を終えた。
クラン代表執務室――通称【玖命の部屋】で、俺はその身を椅子に預けた。
「……ふぅ」
肉体的な疲れはともかく、精神的な疲労にはいつまで経っても慣れないものだ。
顔を揉み、首を左右に振って身体から疲れを追い出す。
ほんの少しウトウトしていたそんな時、今日この場にいなかったクランメンバーから
血みどろ――
翔から? 今日は個別で依頼があるから来られないと聞いていたのだが、一体何があったのだろうか。
玖命――――時間ならあるよ
血みどろ――よし、品川まで来な
翔からの呼び出しとは珍しい。
リザードマンの時以来、そんな事は起こっていなかったのだが、翔にしては余裕がないようにも思える。
今の翔から、用件だけを俺に伝えるというのは
しかも、翔はこの時間、俺が
それでも尚、俺だけを呼んだという事は……何かあったのだろうか。
◇◆◇ 11月12日 17:04 ◆◇◆
御剣さんと堀田さんが帰り、半強制2ショット撮影会が終わって2時間半くらいが経っただろうか。
俺は翔に言われた通り、品川にまでやって来ていた。
「……3回目の場所変更……これはもしかして……?」
翔は何度も待ち合わせを変更して俺に連絡をしている。
まるで、俺がいつ来ても構わないかのように……移動しているようだ。
そこから推察される翔の動きは……おそらく尾行。
個別の依頼だとは聞いていたが、まさか翔がそんな依頼を受けていたとは思わなかった。
家から家へ、ビルからビルに跳び、人目を避ける。
最後に呼ばれた場所は……東京湾に面した品川区の埋め立て地。
そこにある廃ビルの屋上で、俺は翔の背中を見つけた。
「……翔」
俺は、翔の隣に着地して小さく言った。
「おう
「尾行か……?」
俺が疑問に思っていた事を聞くと、翔はそれを否定も肯定もしなかった。
「取材はどーだったよ? あの記者のまびぃねーちゃんにアレコレ聞かれたんだろ?」
話題をそらしているかのようだ。
「……まぁ、当たり障りのない事ばかりだったよ。前みたいにズバズバ聞かれるような事は……まぁ、プライベートな話には触れたかな?」
「カカカカッ、噂好きなやろー共は、
そこまで翔が言ったところで、俺は翔の指がずっと一点を指している事に気付いた。
あれ……この指っていつから出てた?
確か翔が……――『あの記者のまびぃねーちゃんに~』と言ってるあたりで……ぇ?
俺は翔の指の先を見ながら目を細めた。
廃ビルの屋上からとある施設の屋上。
そこにはヘリポートがあり、着陸したヘリが今正にエンジンを止めているところだった。
ヘリから降りて来るのは、先程俺を取材していたはずの……御剣さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます