第317話 訓練、鍛錬、トレーニング
「いいですね! その調子で倒しちゃってください!」
「ったく、注文が多いのよ!」
銃声こだまする【管理区域B】。
今日、俺は
数十メートル離れた個体の眉間に、1発、また1発と撃ち込まれる銃弾。
やはり、スカウト班で有望だっただけに、非常に良いセンスを持っている。
また、【脚力SS】の恩恵もあり、動体視力もよく高速で動き回る中、しっかりとモンスターがどこにいるのか把握し、立ち回りも、位置取りも完璧と言って過言ではない。
これはおそらく、たっくんの指導によるものだろう。
翔も関わってるのだろうが……、
「集中……集中でしょっ!」
あのたまに出る「集中」発言は誰から真似たものなのか。
「……うん、いいじゃないですか」
ホブゴブリンの死体の山が築かれる中、俺は
「ふふん、でしょ? もっと褒めてもいいのよ?」
「そうですね。それじゃあ、ゴブリンジェネラルやグレーターデーモンクラスを相手に上手く立ち回れるようになったら、契約書の見直しをしましょう」
魔石を回収しながら言うと、月見里さんは一気に俺に肉薄してこう言った。
「ホントッ!? そ、それってお給料の見直しって意味で合ってるわよねっ!?」
正に現金な性格である。
まぁ、俺も似たようなものかもしれないけど。
「そ、そうですよ……」
「Bランクのゴブリンジェネラルとグレーターデーモンね? 前にぶっちぎった事あるし、楽勝よ、楽勝!」
「逃げるのと戦うのは違いますからね。くれぐれも命を大事にしてください」
俺がそう言うと、月見里さんはニコリと明るく笑って言った。
「わかってるわよ。お金よりも命、ね!?」
妙にものわかりがいいな。
「命よりもお酒! ふふふ」
そうでもなかった。
「それじゃ、これ」
そう言って、俺は
「え? これって、前に書いた借用書じゃない?」
「そうです。26530円」
「26530円……」
「じゃあこれを……」
言いながら、俺はその場で借用書を魔法で燃やした。
「え、えぇ? い、いいの……?」
「今回の討伐で、返済出来るので問題ありません」
「マジ!? やったぁ!」
「これで月見里さんが抱えてる債務はなくなりました。先に渡しておいてくれた請求は全て四条さんに処理してもらいましたので」
「え? も、もしかしてそれで歩合制にしたの?」
「それだけじゃないですけどね」
「……それって何でよ?」
「歩合制だと信用が低いですからね。これ以上
「マジ? ららちゃんも絡んでたのっ?」
驚く
確かに、川奈さんの名前は意外だったのだろう。
しかし、仲間、友人ながら……恐ろしい事を考えるものだ、川奈さんは。
天才派遣所の調査課で月給制だった
「道理で……新しいクレカの申請が通らない訳よね……」
しかし、クラン所属となり、完全歩合制という信用、実績も薄い観点からならば、しばらくクレジットカードを作る事は出来なくなる。たとえ今一番勢いのあるクラン【命謳】のメンバーだとしても、だ。
その助言を川奈さんから聞いた時は、少し恐怖を感じたものだ。
ていうか、この人、やっぱり新しいカード作ろうとしてたのか。
「もう、以前のカードが使えるはずです……が――」
「――が?」
「さっきの話、条件をもう一つ追加します。『もし、以降、月見里さんの金回りに異常を感じ取れば、都度契約の見直し。注意勧告の後、改善が見られなければ、契約解除。1度でも契約の見直しが起これば、Bランク以上のモンスターを手玉にとったとしても、給料アップは無し』です」
「えっ!? ちょっと冗談でしょ!?」
「別に、問題を起こさなければいいだけじゃないですか?」
「そ、それはそうだけど……」
「勿論、お酒関係も同じ事ですからね」
「ぐっ!?」
月見里さんは若干表情を引き
「わ、わかった! わかったわよ、もうっ!」
「もし、そういった兆候が見られれば、俺や四条さんから適宜牽制を入れますから。いきなり契約見直しが起こる訳じゃないので、そこはご安心を」
「それが何気に一番怖いんだけど……?」
「任務中のお酒は絶対禁止ですからね?」
「…………オ、オーケーボス……顔が怖いのよ、もうっ」
月見里さんから最後零れた言葉は、聞こえなかったふりをしよう。
【
クラン活動も安定してきたし、最近はモンスターパレードも起きていない。
とはいえ、あくまで関東近郊の話である。
先日の青森の一件もある。油断は出来ないだろうな。
そんな事を考えていると、四条さんから
四条棗――きゅーめー。
玖命―――どうしました?
四条棗――月刊Newbieから取材依頼がきてるぞ。12月号、伊達玖命オンリーで一面を飾りたいって。
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