第315話 やって来た訪問者2
ポカンとしていた番場さんだったが、その後すぐ、じっと
「流石は
カンとテーブルに置かれた、親父愛用の2つの
ドンとテーブルに置かれた、親父が少しずつ大切に呑んでいる酒。
「こいつぁまさか……【
それは大災害を超え、八神右京を倒した後、皆で集まった時に水谷がお土産として持って来た幻の日本酒。
「
「宝は使ってこそよ」
流石
親父もその一言にぐうの音も出ない。
俺は、
「
油の切れかけたロボットのように、か細い言葉と強い決意。
俺はそんな親父の背中から、いつも以上の哀愁を感じた。
こんな手札を出されるとは予想だにしていなかったのか、番場さんは【
俺は深い溜め息を吐き、番場さんに言った。
「1杯ずつ。それ以上は親父の心がポッキリ折れちゃいますから……1杯ずつなら許可します」
「大黒柱……折れない……がまん……する……」
親父はそんな小さな威厳を見せ、震える手で番場さんにお
「悪いな」
「い、いえ、む、むむ息子が……いつも……お世話になっております……ぐぅ!?」
いつ俺は番場さんの世話になったのだろうか。
しかし、凄いな親父。
――……一心には一心の戦いがある。
俺は親父の背中にその決意を見た。
クイと一気に【
「…………
「へ、へへへ……喉が焼けるようでしょう? ですが、それはたった一瞬。その後、訪れる爽やかな喉ごし。踊るように流れ下りる酒は、喉、食道を焼き、癒し、確かな足跡を残します。癖になるでしょう?」
まさか、親父がここまで健闘してくれるとは思わなかった。
伊達家のもてなし。俺が一切参加出来てないのは本当に不甲斐ないが、ここは親父の戦場なのかもしれない。
「……よし、【
番場さんがそう言うと、
「あ?」
「大丈夫です。
再びポカンとする番場さん。
我が妹ながらなんてえげつない動きをするのだろうか。
さっき親父が番場さんのスマホを見たあの一瞬で、長いURLを覚えたのか。天才とは
ようやく我に返ったのか、番場さんが肩を震わせる。
「くっくっくっく……今日はここに来て良かったぜ。とんでもねー上玉に出会えたからな」
「
「…………そーいう意味じゃねーよ。すげーヤツは見るだけで楽しいだろーが。つーか、その殺気やめろ」
「それはまぁ……否定しませんが」
俺がそう言うと、番場さんは天井を見上げた後ですんと鼻息を吐いた後、俺に言った。
「んじゃ、その闇サイトの
「是非」
「【
番場さんのその一言で、俺は息を呑んだ。
「【
【生まれながらの
「【NBH】が闇サイトに関与していると……?」
「あくまで
「何故?」
「殺されたんだよ」
「っ!? …………誰に?」
「【ドン・ロジャース】」
ドン・ロジャース……【NBH】の代表であり、アメリカのトップと言っても過言ではない実力を持った……正に最強の男。
「なぜ、ロジャースさんが?」
「向こうの知り合いによれば、【異物の排除】らしいぜ」
番場さんの説明に、俺はぞくっとした悪寒を感じた。
ロジャースが恐ろしいのではない。ロジャースが他の天才を葬った事が、表沙汰になっていない事が恐ろしいのだ。
そんな俺の感情を読み取ったのか、親父が動く。
「さ、こちらも
【
番場さんはまた一気にソレを空け、目を丸くする。
「………………凄ぇな、これ」
「そうでしょうそうでしょう」
また揉み手が高速に……。
「舌に確かに残る重み。ですが、それに気付いた時には、酒は既に消えている。職人たちのたゆまぬ努力が生み出した叡智の結晶。正に幻。正に芸術……私はこちらの方が好きなんですよ」
そんな親父のウンチクに一つ頷いた番場さんは、再び俺を見る。
「【
「え?」
「【WGC】、行くんだろ? その間、俺がこの家を守ってやる」
そんな思わぬ申し出に、俺は目を丸くするのだった。
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