第314話 やって来た訪問者1
……結局2人に押し切られてしまった。
俺は頭を抱えながらもようやく家路につく。
玄関前で玄関ドアを開ける前に、俺はうんうんと唸っていた。
「……
そんな事を呟いていると、俺の背後から突き刺すような言葉が届いた。
「別に、普通に行ってくればいいじゃない?」
「うぉ!? み、
そう、声を掛けて来たのは、我が妹様。
買い物バッグを持っているところを見ると、夕飯に必要なものを買って来たようだ。
しかし、
「え、俺が【
「さっき、棗ちゃんと、ららちゃんと、鳴神さんと、山じーさんと、水谷様から連絡が入ったのよ」
凄い、全員から連絡きてる。
そもそも、名だたる天才たちの連絡先を握ってるってウチの妹は、もしかして最強なんじゃ……?
「お兄ちゃん、何? 入らないの?」
「あ、そうだな、うん……入るか」
すると、そこには何故か親父が立っていた。
何故、親父が待ち構えているのか、俺にはわからなかった。
がしかし、すぐにそれを理解する。
親父がリビングを指差すより早く、俺はその気配を察知した。
「玖命……お客さん? が来てるぞ」
そんな親父の疑問交じりの言葉が気になったのだろう。
しかし、俺はそれを身体で止めた。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん……土足土足! って……お兄ちゃん……?」
俺はただ親父と
そこに座っていたのは、先日の【天武会】で決勝で、俺が倒した男だった。
関西最大クラン【インサニア】代表――【
「よぉ、邪魔してるぜ」
口の端を上げ、ニヤリと笑う番場さん。
「親父、何でこの人、入れちゃったの?」
俺は番場さんを指差しながら、親父に聞く。
「いや、一応彼、犯罪歴はないからさ。やっぱまずかったか?」
流石は親父である。線引きが絶妙だ。
確かに……親父に危害を加えた訳でもない。
親父がこの家の中に招いたのであれば、彼は客人。
そう、客人……ふむ、段々客人に見えてきた気がする。
「お兄ちゃん」
「何?」
「お茶、
「お湯は今沸かしてるぞ、うん」
俺は溜め息を吐き、
「とりあえず、一番安いやつ、出してあげて」
そこまで言うと、
第5段階の【戦神】――
俺は仕方なしと大きく息を吸い、すんと一気に鼻息を吐く。
そして、番場さんの前に腰掛け、言った。
「どうやって我が家を?」
「……知りたいか?」
ニヤリと笑って言う番場さんに、俺は呆れた視線を向ける。
「勿体ぶる必要があるんですかね?」
「ない。……が、知っておいた方がいいとは思うぜ?」
意味深な言葉に、俺は首を傾げる。
「それを聞いて、教えてくれるんですか?」
「茶の礼にしてはデカいと思うがな」
「…………伺いましょう」
言うと、番場さんは俺にスマホを見せてくれた。
そこには、とんでもない情報が記載されていたのだ。
直後、俺は立ち上がっていた。
「っ! ふはははっ! すげぇ殺気だな、伊達ぇ?」
出て当然だ。俺の目の前には――、
「……凄いな、これ、闇サイトかい?」
親父がスマホを指差して番場に聞く。
「……お前の親父、すげーな。この殺気の中、平然と動くのかよ」
「玖命は俺に危害を加えないからな。それで、これ、闇サイト?」
「……あぁそうだよ」
「へぇ……」
親父が呟くように零すと、
「うーわ、これ、ウチの
番場さんのスマホを覗き込む
そんな
「お前の妹もすげーな」
「それはどーも。あ、お茶置いときますね」
そう言って、
「おい、そろそろ
「あぁ、失礼」
親父が番場さんにスマホを返す。
俺は番場さんを見据えながら聞く。
「つまり、既に伊達家の情報が闇サイトに出回ってると……?」
「そういうこった。茶のグレードを上げてくれてもいいんだぜ?」
「いえ、それがウチで一番のお茶です」
「そうかよ」
そう言って、番場さんは、一気にお茶を呑み干した。
「まさか、それを教えるためにわざわざ?」
「茶の礼だって言ったろ? 俺がここへ来たのは別件だ」
別件……一体番場さんは何をしにウチにやって来たのか。
そんな事を考えていると、
「気が利くじゃねーか。伊達妹」
「お茶のお礼があの情報なら、お茶菓子だとどんなお礼を貰えるのかと思いまして」
そんな
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