第302話 ◆嘘でしょ?
「伊達……これ、マジ?」
「大マジです。因みにこれらの銃器についてご存知でしたか?」
「う、噂には聞いてたけど、クランに出回ってるなんて初めて聞いたわよ……!」
玖命にソファへ誘導され、腰掛ける
「命謳が初めてみたいですよ」
その言葉に、
「アンタ、部長に何言ったのよ?」
「いや、『
ニコリと笑う玖命に、
「調査課スカウト班に登録されていた
玖命がそう聞くと、
「これでもスカウト班だったのよ? わかるわよ、フツーに」
「スカウト班も銃器の扱いを?」
玖命が首を傾げる。
「基本は偵察任務が多いけど、場合によっては警察の銃器を使いながら、モンスターに対して遅滞行動をする事もあるからね。え、これ私にくれるの?」
目を輝かせながら言う月見里に、玖命がジトっとした目を向け、言う。
「貸与です。緊急時を除き、使用は許可制ですので、ご注意ください」
「えっ? 嘘でしょ?」
「それで給料の件なんですけど」
「ちょっと、聞いてるのっ?」
「完全歩合制です」
そう言い切った玖命に、一瞬、時が止まる。
あんぐりと口を開けた月見里だったが、ようやく零した言葉は――、
「…………は?」
これだけ。
すると、玖命が説明を続ける。
「四条さんのアドバイスの下、それが一番のベストかと」
「ちょ、ちょっとちょっとちょっとぉ!? 私、それ聞いてないんだけどっ!?」
「だから今説明してるじゃないですか?」
キョトンとする玖命に、月見里が肉薄する。
「今じゃ遅いのよ! どうするのよ!? 私もう調査課辞めちゃったのよ!?」
「大丈夫ですよ、稼げばいいんですから」
「でも銃器は許可制なんでしょ!?」
「はい、因みに使用した弾薬は月見里さん持ちです」
「後出しが多すぎるんですけどぉ!?」
「四条さん曰く――」
「――あの子が何よ!?」
月見里が聞くと、玖命はボイスレコーダーをポケットから取り出し、再生する。
『あいつは優秀だけどアホだからな。動かなくちゃお金が貰えないって理解させた方がいいだろ。働けば働くだけお金が入る。それならあいつのやる気にも繋がるだろ』
録音データの再生を止め、レコーダーをしまう玖命。
「という訳です」
四条のアドバイス、玖命の意思に、月見里は口をパクパクとさせている。
そして、ほんの少し考えた後、渋々ながらも先を促すように玖命に聞く。
「……明々後日には結構な請求がくるんですけど?」
「大丈夫です。とりあえず、明後日までには返済出来るようにはしますから」
「嘘っ!? そんなに稼げるの!?」
月見里が立ち上がり、興奮した様子で玖命に聞く。
すると、玖命はニコリと笑ってから言った。
「稼げるんじゃなく、稼ぐんですよ」
感情のよく見えない玖命の言葉を受け、月見里は
ゾクリと肩を震わせる月見里。
「風邪ですか?」
「あ、いや……うん、風邪かも。半休とか使える?」
自身の危機を察知したのか、察知してしまったのか、月見里はそう言った。
「構いませんよ」
玖命の思わぬ言葉に、月見里はホッと胸をなでおろす。
がしかし――、
「でも、まだ出勤して10分くらいなので、あと3時間50分は頑張ってくださいね」
全ての出口は、玖命によって塞がれた瞬間だった。
そして、
「それじゃあまず、ホブゴブリン100匹あたりからいってみましょうか」
「嘘でしょ?」
◇◆◇ 管理区域A ◆◇◆
「ちょ、嘘でしょ!?」
無数のゴブリン、ホブゴブリンを引き連れて来る玖命に、驚愕する月見里。
「ホブゴブリンのみ狙ってください! ゴブリンの討伐許可は貰ってませんので! 集中! 集中ですよ!」
「ギィイイイッ!!」
ホブゴブリンが銃弾の前に倒れる。
「ナイスショット! 次、誘導しますよ!」
「このこのこのっ!! ぁ」
間の抜けた声が漏れる中、1匹のゴブリンが倒れる。
「ギィァ!?」
「今のはゴブリンですね。後程、派遣所に謝罪文を送付しますから、文章考えておいてください」
「はぁ!? たったこれだけで!?」
「はい、だからやらないように気を付けてくださいね。それに、あまり外し過ぎると、弾薬の代金の方が高くなっちゃいますからね」
「無駄弾なんて撃ってないわよ!」
「大丈夫です、【
「くっ……じょ、上等じゃないっ!」
管理区域Aに無数の銃声が響き渡る。
玖命が引きつけ、月見里が撃つ。
当然、玖命の労力を考えれば、月見里に付き添うだけであれば【命謳】にとってデメリットが大きい。
しかし、玖命が付き添う場合、必ずソレに意味がある。
半休の事など頭から離れ、夕暮れ時、管理区域Bに入り、ホブゴブリンの屍の山が出来上がる頃、月見里は……玖命に驚きの目を向ける。
「………………嘘でしょ?」
月見里の眼前に浮かび上がるメッセージウィンドウ。
書かれた文字に月見里が目を走らせる。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【脚力SS】を取得しました。
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