第295話 救難信号

 玖命――――――という訳で、今月見里やまなしさんがいらっしゃってます。

 血みどろ――――斥候か。確かにいりゃ【命謳】の活動範囲も広がるし、いざって時の目になるからいて損はねーと思うが?

 Rala――――おー、月見里さん【命謳】に入るんですね!悪くないと思います!

 たっくん――――【脚力S】なら、玖命が叩いちゃえばすぐに【脚力SS】になるよね^^アリなんじゃないかなー^^

 四条棗―――――あいつ素行以外は優秀だから、賛成。寧ろ、派遣所の便宜も付いてくるなら悪くない提案だと思う

 水の谷の結莉――梓ちゃんなら何度か一緒に仕事した事あるよ!勘がいいから、すぐに慣れると思う!

 Rala――――段々、クランらしくなってきましたね!

 たっくん――――いおりんは何て言ってるのー?

 玖命――――――「お役所の給金には限界もあるし、クランで雇った方があいつものびのび出来るだろう」と

 たっくん――――いおりんらしいねー^^

 血みどろ――――四条がいねー間、事務やってもらえばちょーどいーんじゃねーの?

 四条棗―――――外面そとづらはいいからな。アリだと思う。

 水の谷の結莉――もうすぐ帰るよー!


 そんなやり取りの後、俺は月見里やまなしさんを向かいのソファに座らせた。


「えーっと山井部長から色々聞きましたけど、【命謳】……入りたいんですか?」

「え? 入れてくれるの!?」


 座った途端に立ち上がる月見里やまなしさん。

 まぁ、彼女の今日の用事は金銭関係。

 まさか今日、【命謳】に入るという事までは考えていなかっただろう。


「山井部長から連絡があるはずです。一応、【命謳】にならという事で加入許可が出ているのですが、どうしま――うぉ!?」

「――入る入る入るぅ! あぁ! ようやくあの酷い職場とおさらば出来るのね! 最高、ほんと最高ぉ!!」


 四条さんの時もそうだったけど、月見里さんもか。

 情報部ってそんなに大変なのかな?


「モンスター見つければホウレンソウ、異音がすればホウレンソウ! 異臭がしたらホウレンソウ! 何かあればホウレンソウホウレンソウ! そんなにホウレンソウが好きならお浸し、、、にして出してくれればいいじゃない! それに給料! 月々30万でどーやってくのよ!?」

「額面ですか?」

「手取り!」


 月見里やまなしさんの年齢を考えれば悪くないとは思うけど? 彼女、確か俺の1歳上の22歳だったよな?

 それに、仕事もお役所って感じでキッチリしてるだけで、そこまで大変そうには……うーん。

 彼女の事に関してはみことにも相談した方がいいかもしれないな。


「どうする!? 討伐とかするの!? 何なら今から行っちゃう!?」


 目の中に¥マークが見えるのは気のせいだろうか。


「いや、まだ情報部所属なんですから無理に決まってるじゃないですか。とりあえず、退職手続きをしてきてください。明日は予定があるので、明後日の23日、またここにいらしてください。それでいいですか?」

「もっちろんよ!」


 そう言って月見里やまなしさんはバッグを持って最後にウィンクを送ってきた。


「伊達、良い男~、最高!」


 そして、テンションMAXで去って行った。

 ホント、嵐みたいな人だったな。

 月見里さんが、【命謳ウチ】に入る……か。

 俺はスマホを取り出し、先程かかってきていた電話に、再度電話を掛ける。


「あ、どうもお世話になっております、伊達です。はい、今しがたお帰りに。今日明日で退職手続きをとお話ししました。はい、明後日ですね。いえいえこちらもありがたい戦力補強になります。それで、早速お願いしたい事、、、、、、、がありまして。えぇ――――」


 ◇◆◇ 10月22日 11:00 ◆◇◆


 その後、俺は、兵庫から帰って来た水谷と共に討伐依頼を継続した。改めて水谷の動きを見、衝撃を受ける。

 彼女の剣は独学らしいが、やはり天才仕様として作られているが故に、その動きには感心させられる。

 水谷は討伐リソースばかり先行していて、体力、技術リソースが疎かになっていた。【剣皇】を【剣神】へと成長させるには、鍛錬が必要だろう。とはいえ、一度翔やたっくんの天恵を成長させた事を考えると、そう難しい事でもないだろう。

 まぁ、それは当然、月見里やまなしさんにも言える事だ。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 玄関で靴ひもを結ぶ俺に、みことが心配そうに声を掛ける。


「うん、大丈夫大丈夫……一度倒した相手、、、、、、、だしね。それに、向こうは手錠がついてるんだし、何も起きようがないよ」


 俺がそう言うと、みことが頷く。だが、その心配は拭えないようだ。


「はい、これ」

「……ボイスレコーダー? スマホあるけど?」

「我が家のお守りみたいなものでしょ。それに、使ってあげないとダメになっちゃうでしょ。充電はしといたから」

「……わかった、使わせてもらうよ」

「うん、行ってらっしゃい!」


 みことの見送りの言葉に背中を押され、俺は家の扉を開ける。


上忍じょうにん羽佐間はざまじん

道化師どうけし八神やがみ右京うきょう

将軍しょうぐん阿木あぎ龍己たつき

将校しょうこう飯田いいだはじめ


 今日向かう先は天才特別収容所――通称【天獄てんごく】。

 既に多くの聴取を終えた奴らから新しい情報が出てくる事はないだろう。だが、俺が今の奴らを見、話す事で何か得られる可能性があるのであれば、それはやはり行くべきなのだろう。


「行ってきます」

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