第290話 今日の予定
◇◆◇ 20X0年10月21日 10:15 ◆◇◆
「これ、
「勿論、あくまできゅーめーとか、身内向けのプレゼン用デモムービーだからな」
なるほど、そういう事か。
だから
「こういう感じで、きゅーめーとかららにインタビューしていくのはどうかな、と」
「なるほど、クラン募集関連のプロモーションビデオかと思ったら、クラン員紹介のプロモーションビデオって事ね」
「当たり前だろ、今、クラン員入れたところで、きゅーめーたちに付いて来られないだろ?」
「そ、そうかな……?」
「山じーとか鳴神とかにやらせた訓練、ぽっと出の天才にこなせる訳ないだろ」
そんなに難しい事でもないと思うのだが、やはりそうなのだろうか?
「あ、でも一人だけイキの良いヤツがいたな」
「あー、そうでした。今日はその予定があるんでした」
「何だよ、それなら一緒に
「ですね」
そう言って、俺たちは準備を済ませた。
準備の中で、四条さんがやたら鏡を気にしていた。
やはり人前に出る仕事となると、身なりには気を遣うのだろう。
俺も四条さんを見習わなくては……。
「よし、いいぞ……うん。いいよな? うん、たぶん、大丈夫」
「それじゃあ急ぎでもないですし、のんびり行きますか」
2人で外に出て、鍵を閉める。
歩き始めると同時、四条さんが俺に言った。
「それでな、プロモーションビデオ用の機材を用意したいんだけど、その、クランのお金、使って大丈夫か?」
「え、それなら四条さんに任せてるんですから、四条さんの裁量の中でやってくれて大丈夫ですよ」
「そか、ありがと」
「確かにそうですよね。プロモーションビデオ……考えてもみませんでした」
「皆、【天武会】できゅーめーたちの強さは知ったけどさ、性格とか、どんな表情するのかは知らないだろうし、一度クラン員を紹介するビデオを用意した方がいいと思って……うん」
「ははは、ありがとうございます」
「べ、べつにきゅーめーのためじゃないし! 【命謳】のためなんだかんな!」
「俺も【命謳】のために何が出来るのか、色々考えたいと思います」
「いや、きゅーめーはもう十分過ぎる程やってると思うぞ……?」
「え、そうですか?」
「ま、それでも足らないと感じるところがきゅーめーの良いところだよな」
「ははは……何か照れますね」
そう言うと、四条さんもにへらと笑ってくれた。
暑くもなく、寒くもなく……とても過ごしやすい陽気の中、俺は先程の話を思い出し、言った。
「あ、そうだ」
「な、何だっ?」
「そんなに慌てなくても……」
「いや、心の準備というものがあるだろ」
「そういうものですか……」
「そういうもんだ、うん」
「さっきのビデオ関連の機材なんですけど……【ポ狩ット】の人たちに聞いたらいいんじゃないですか?」
「【ポ狩ット】か……なるほど、確かに、こと映像に関しては【ポ狩ット】は抜きんでてるかもな」
「確か、今小林さんが
「わかった、それじゃあ【
「
「えっ!? わ、私がっ!?」
「いや、だって四条さんの負担の方が大きいんじゃないかなーと」
「で、でも、
「そうですか……それじゃあお言葉に甘えます。よろしくお願いします」
そんな会話をしていると、いつの間にか【命謳】の
裏口の鍵を使い中へ入り、俺たちはビルの中へ入る。
ビルの1階には受付、応接スペース、給湯室など歓待に必要な施設が整っている。
「……うーん、内装も良い感じにカタチになりましたね」
俺がとある物体から目を背けながら言うと、四条さんは呆れながら言う。
「まず、見なくちゃならない山があるだろ」
「……凄いですね、段ボールの山」
「あれ全部、山じーのファンレターだからな」
そう、ファンレターが詰まった段ボールの山。
当然、中にはファンクラブ加入希望の要望があったりなかったり。
「ボールペン書きより毛筆のファンレターのが多いのは笑っちゃったよ……」
溜め息を吐く四条さん。
流石の四条さんも、これを相手に難色を示している。
「一応、
「わ、わかりました」
「バイト代はちゃんと払われるから安心してくれ」
「ありがとうございます……」
届いてからしか対応が出来ないというのも難儀なものだ。
「最悪、山じーに手伝ってもらうって手もあるだろ」
「え……やってくれますかね?」
「多分、喜んでやるだろ」
四条さんがそう言うのならそうなのかもしれない。
「それじゃ、私は6階に行ってるから、何か問題があったら呼んでよ」
「はい、わかりました」
俺はそう言って、エレベーターに乗る四条さんを見送った。
彼らが来るまで、どうしようか……そんな事を考えていると俺のスマホに連絡が入った。
届いていたのは、
差出人の名は――越田高幸と、【
越高―――――伊達殿、少し早めに着いてしまったが、ご都合いかがだろうか?
水の谷の結莉―玖命クン!来たよ!八王子!
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