第253話 呼び出された玖命1
◇◆◇ 20X0年10月2日 10:00 ◆◇◆
今日は午後から初の企業警備。
八王子の南大沢にある【私立
朝に【命謳】と【ポ狩ット】の懇親会の記事を見た俺は、【ツイスタX】のアカウントを作ろうか迷いながら、八王子から池袋まで走った。
すると驚く事に、ものの20分で池袋に着いてしまったのだ。
「軽く流して来たのに、意外に早く着いちゃったな……」
本日、池袋に来たのは理由は一つ。
KWNの社長――
会社まで来たはいいが、約束の時間まで後30分ある。
さて、どうしたものか?
そんな事を考えていると、会社の前に魔石でコーティングされた軍用走行車両が停まった。
おー、KWNの最新モデル【KW-ZXM】……【
と、思っていたら、車のドアが勢いよく開いた。
中から出て来たのは――川奈宗頼。
「伊達君じゃないか? ふむ、待たせてしまったかな?」
「こんにちは。早く着き過ぎてしまって、どうしたらいいかわからなかっただけですよ」
「ははは、そういう時は、受付まで行ってゲストルームに通してもらうといい。君は既にここのVIPなのだから、いるだけで皆が安心するというものだよ」
なるほど、そういうものか。
確かに、ここの警備も任されている以上、滞在自体は問題ないのか。
「シャワールームと仮眠室もあるからね。話は通してあるから、こちらで何か用事がある時は、受付に言えば泊まる事も出来るからね。さぁ、ここでは何だ。入ってくれたまえ」
「ありがとうございます」
そう言われ、俺は川奈氏と共にKWN本社ビルへと入って行った。
エレベーターの中で、俺は川奈氏に聞いた。
「でも驚きました」
「何がかね?」
「社長があの軍用車両【
「ははは、今の世の中はデザインよりも機能性。それに、あれはある意味超高級車とも言えるからね」
ニヤリと笑う川奈氏。
なるほど、これが金持ちジョークか。
確かにあの軍用車両はCランクまでのモンスターであれば、籠城出来る頑強さを誇っている。まぁ、Cランクまでしか耐え切れないから人類最後の砦という事もあり、【終わりの桃源郷】なんて名付けられてしまう訳だが。
超高級車か……そういえば、【
「………………ん?」
先日、川奈さんと一緒に訪れた応接ルームまでやって来た俺は、その部屋を見て首を傾げた。それはもう、物凄く。
まず、最初に映ったのは、正面にあるモニターだ。
モニターには、先日の海老名襲撃時に奮戦していた川奈さんがドアップで映っており、しばらくその映像が流れたかと思ったら、川奈さんの写真が数秒毎に切り替わるスライドショー。最後には、何故か昨日の懇親会の写真まで流れ始めた。
「…………ん?」
次に目に付いたのは本革のソファの上である。
「【
端には控えめに【命謳】のロゴ入りクッションもある。
「……ん?」
次に見えたのは、奥にある川奈氏の席の隣。
何やらパネルのようなものが見える。
後ろ側でよく見えないが、あそこまで回る訳にいかない。しかし、行く必要もない。
正面のガラス越しに、川奈さんの姿が見えたからだ。
つまり、あれは川奈さんの等身大パネル。
…………【
「掛けてくれたまえ。紅茶でいいかね?」
「あ、はい……ありがとうございます」
あれは流石に川奈さんに怒られるんじゃ?
いや、川奈さんの事だから、お小遣いと引き換えに了承しているかもしれない。
「わかった、秘書に持ってこさせよう」
ソファに掛け、目に入ったのは――、
「ん? ん~~~?」
正面のテーブルに置かれた月刊
見れば、社長の机にも置いてある。
奥に見えるバーカウンターにも……うーむ、駅にある求人フリーペーパーよりあるかもしれない。
奥の部屋から秘書の方が出て来る。
紅茶を置き、頭を下げ、無言で去って行く。
やはり、
さっきの【
今後の展望について考えていると、川奈氏がノートパソコンを持って現れた。
川奈氏の操作と共に、部屋が暗くなり、天井からプロジェクタースクリーンが降りて来る。
何やら動画を見せたいようだが、これは一体?
「今日、伊達君を呼んだのは他でもない」
「……というと?」
「先日の海老名の一件……KWN銀行海老名支店の防犯映像がようやく掘り起こせてね……伊達君の意見を聞きたい」
俺は、その映像を見て驚愕した。
それは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます