第248話 お転婆姫の狙い2
おかしい、米原さんに対して、俺の天恵【
一体何故? 何が起こった?
――【討究】の進捗状況。天恵【
そう考えても答えなんて出て来ない……と思ってたら、天恵が俺の心を読んだかのように、メッセージウィンドウが開く。
――【討究】に成長した事により、解析出来る天恵が増えました。
――これより、【固有天恵】の解析が可能です。
さらっととんでもない事を言うな、この天恵。
「伊達殿?」
越田さんの言葉に、俺はハッと我に返る。
「あ、え? す、すみません。集中しますっ」
慌てる俺に、キョトンとする米原さんと、越田さん。
「えと、それで……番場さんをどうするんですか?」
「早い話、番場殿というより、【インサニア】を蚊帳の外にしてしまおうという話ですよ」
越田さんが、何か恐ろしい事を言ってる気がする。
「蚊帳の外……」
――【討究】の進捗状況。天恵【
お前の事じゃないな。
「ハブくという事ですね」
米原さんの言葉に、俺はようやく理解した。
ハブられるのか……【インサニア】が?
そんな疑問に答えるかの如く、米原さんが続ける。
「現在、【命謳】は【大いなる鐘】と同盟を結ばれています。そして、【命謳】の傘下クランとして【ポ狩ット】が加わりました。さて、ここで【大いなる鐘】の代表、越田高幸殿と、【ポ
「それは…………【ポ
俺がそう言うと、二人は頷いて説明してくれた。
「非常に楽しそうな試みだと思います。我が【大いなる鐘】も、【インサニア】の振る舞いには頭を抱えていた。傘下クランへの嫌がらせ、契約企業への破壊行為。証拠こそ掴ませない狡猾な動き。これが成れば、多くのクラン、企業、天才、一般人問わず救われるでしょう」
【大いなる鐘】も被害を受けていたのか。いや、【大いなる鐘】の傘下クランやそこの企業契約に支障が出ていたのか。
ほんの少し前まで【戦王】だった番場さんが、【元帥】越田さん相手に直接動く事はないだろう。
……というか、今、この人……楽しそうって言った?
「どうせなら、【ポ
微笑む越田さん。
「はい、マスコミに問われた際、否定せず、肯定せず……ふふふふ」
微笑む米原さん。
「は……はは……はは……」
無理やり微笑む俺。
――【討究】の進捗状況。天恵【
「越田殿、思った通りの方でした」
「米原殿、【インサニア】を封殺出来た際には、こちらから同盟を依頼したい」
2人は立ち上がり、固い握手を交わす。
どうやら、とんでもない企みは、俺の目の前で決まってしまったらしい。
「では、簡単なすり合わせをしておきましょう。共通事項があればあるだけいい。伊達殿、書記をお願いしても?」
「あ、はい!」
そう言って、俺はホワイトボード用の水性マーカーを持った。
ポカンとする二人に、俺は首を傾げる。
「い、いや……出来れば四条さんにお願いしようと思っていたのだけどね」
「伊達さん自らとは……ふふふ、やっぱり伊達さんは伊達さんですね」
嬉しそうに笑う米原さんを直視出来ず、俺は越田さんにどうするかとアイコンタクトを向けた。
「確かに私の言い方が悪かったですね。『書記の手配を~』と言うべきでした」
まぁ、四条さんもお茶を持って来ないし……おそらく一緒にパソコンを見ている小林さんに色々教わってるのだろう。あの人、かなり裏方の仕事に従事してるらしいから。
四条さんの行動も【
「大丈夫です。書記、やります!」
そう言って、俺は水性マーカーのキャップを外す。
――【討究】の進捗状況。天恵【
「では、お言葉に甘えましょう。日本有数の実力を持った秀才の……書記を」
その言葉に、越田さんが本当に俺を褒めてくれている事がわかった。多分、こういった場では、俺は一生この人たちには敵わないのだろう。
「それでは始めようか」
何たって、巨大クランが
その後、俺たち3人は、噂が広まった後のマスコミの対処法を考え、回答集を作り、まとめた。
湯水のように出て来る2人の案に、俺は笑い、苦笑しながらも、ペンを走らせた。
暗躍や腹芸が楽しいとは思えないけど、こういった場で違うクランの人たちが交流を持てる事は、本当に良い事だと確信する事が出来た。
それだけで、今日、俺がここに来た事は間違いじゃなかった。
――【討究】の進捗状況。天恵【
――成功。最低条件につき対象の天恵を取得。
――天恵【
まぁ、おまけもあったけど。
◇◆◇ ◆◇◆
「え? 俺がですか?」
「はい、私、八王子は初めてなので、伊達さんに案内して欲しくて……」
レンタルルームを出た時、俺は米原さんに呼び止められていた。
流石にそれはまずいと思い、俺は付き添いの小林さんに視線を送った。
「………………ぷいー」
どうしよう、小林さんが目を合わせてくれない。
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