第241話 日本震撼
渋谷の一角にある、昔ながらの喫茶店。
俺、川奈さん、四条さんは、そこで合流していた。
「えぇ!? 道路って……あの道路ですか!?」
俺は間の抜けた声を漏らし、隣でパフェを食べる川奈さんに聞いた。
「はい! 翔さんがずこーんってやって、家が傾いちゃいました!」
何て恐ろしい事をパフェ食べながら美味しそうに言えるのだろうか、この美少女は?
「あれじゃ、しばらくは再起できないだろうなー」
正面に座る四条さんがコーヒー片手にニコリと笑う。
小悪魔的微笑を浮かべ、ちびちびとホットコーヒーを飲む美少女。やっぱり四条さんも恐ろしい。
ど、どうやら4人は思った以上に派手に動き回ったようだ。
「そ、それにしてもよく周囲の家がすぐに退去出来ましたね? お金を支払ったからって、そんなにすぐ引っ越しなんて出来ないでしょう?」
「私がお父さんに連絡した20分後には、30m四方の家との商談に入ってましたよ。快く引き受けてくださった家から順々に、私がアタッシュケースを持って行ったら、後は荷物を運んで、山じーさんが切り刻むだけでしたからね」
普通、家は切り刻めないんだよなぁ……。
うーむ、これ以上聞くのは怖い気がする。
そんな俺の気持ちを汲み取ってくれたかのように、四条さんが言う。
「それより、きゅーめーは何したんだよ?」
「え? 山井さんに教わった殺気を……10分くらいかな? 川奈社長が借りてくれた隣の部屋から飛ばして……それで帰りましたよ」
「え? それだけ?」
「それだけですよ? 警告にはなったかなーくらいだと思いますけど……甘かったですかね?」
「甘い! 甘いぞきゅーめー! そういうのはしっかりキッチリやっておかないと尾を引くんだぞ!?」
「そ、そうですかね……?」
「泣かせて、失禁させて、謝罪させて、泡噴かせて、白目剥かせて、後悔させて、懺悔させて、ハゲ散らかすくらい追い詰めなきゃ、奴らまた
「あ、でも、玄関ドア越しに謝罪は聞こえてましたよ?」
そう言って、俺は鯉口を切って【
すると、その動きに川奈さんが聞く。
「伊達さん、さっきからカシャンカシャンってやってますけど、それ、何してるんですか?」
「あぁ、出来上がったばかりの鞘は鯉口と
「「ほぇ~」」
【
川奈さんの大盾の【頑強A】、軽鎧の【体力C】があれば、天使長ルシフェルみたいなモンスターが相手でもビクともしないだろう。
それにしても……【天使長ルシフェル】か。
過去の文献を調べても、そんなモンスターは存在しなかった。
つまり、世界で初めて【命謳】が接敵したという事になる。
一応、相田さんを通して詳細は提出したが、この先、同じ存在が出て来ないとも限らない。念には念を入れておいた方がいいだろう。
この前の戦いで、川奈さん、翔、たっくん3人の天恵も着実に成長し、解析度が上がった。
この3人が第5段階目を踏むのも時間の問題と言えるだろう。
そして、俺と四条さんの【天眼】の成長も。
だが、やはり気がかりは、俺に語り掛けていたようなあのルシフェルの反応。
人型とはいえ、モンスターと意思疎通が出来ないのは世界共通認識。
倒したとはいえ、ルシフェルが俺にコンタクトをとろうとしてきたのは事実である。これも念のため派遣所には報告したが、おそらく何の回答も出ないだろう。
そして最後に……天恵【
俺の最初の天恵【探究】は文字通り、『探し、究める』と書く。
そして次の天恵……第2段階目【
意味は……『問題を掘り下げて考えること』…………?
――――誰が?
だからこそ、俺は、俺自身の天恵に意思が宿っていると思うに至った。その証拠に、進捗速度の変更について、俺に許可を求めていた。
これはつまり、『天恵が天恵を掘り下げ、考え、解析している』のではないか?
そして、その天恵【
【討究】の意味は『深く研究する事』以外に、文字通り『討議し、研究する事』を意味する。
ここで、もう一つの可能性が出て来る。
『誰が?』の後に『誰と?』が付け加わるのだ。
――――誰と?
これは……やはり俺の事なのだろうか。
天恵と俺が、天恵を討議し、研究するのだろうか。
でも、これまでと何か変わるのだろうか。変えなければいけないのだろうか。疑問は疑問を呼び、答えが出ない。
他の天恵との同期率は80%。
これ以上の上昇はやはり第4段階目という事になるのだろうか。
……やはり答えは出ない。
俺は深い溜め息を吐き、四条さん奢りのコーヒーを口に運ぶ。
すると、四条さんの隣に翔が腰掛け、その隣にたっくんが腰掛けた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「おう、【
翔がたっくんに聞く。
「国税局じゃ」
「そうそれ、そこに洗いざらいぶちまけてやったぜ」
そう言ってバチンとウィンクをする翔。
正直、このウィンクはいらない。
俺が感謝を伝えようと思った矢先、たっくんに異変が走る。
「……っ!」
殺気というより剣気?
鋭い視線で俺の背後……その上を見ている。
見れば、そこには喫茶店が設置しているテレビがあった。
たっくんの尋常じゃない目つきと気迫に、皆、
俺は、ニュースの内容より、その見出しに目を奪われてしまった。
いや、俺たちはそれだけで理解してしまった。
ニューステロップが大きく表示され、その文字には、
――【インサニア】の
それだけで、理解出来てしまったのだ。
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