第233話 1すくみ
俺が3人にじーっと見つめられている中、それがいたたまれなくなったのか、
「そ、それじゃあ、ここの支払いはいいからごゆっくり……あは、あははははは」
そう言って、
それを止めたのは守護神。
「いや、
そう、伊達さんちの
「
四条さんが怯えている。
しかし、こういう時の
あの
当然と言えば当然かもしれない。潜り抜けている修羅場の数が違う。
「……そ、そうよね……」
水出しコーヒーを飲んだばかりだというのに、乾いた唇。
乾いた声……彼女が追いこまれているのが手に取るようにわかる。
「ボールペンです」
俺は
一枚は俺、もう一枚は
その二枚を並べ、俺はスマホで写真を撮る。
「そ、そこまでする……!?」
「そこまでするんだよ、伊達家はな」
他の家ではこうしないのだろうか?
「それじゃあこれは
「わ、わかったわ……」
そう言って頷き、
「逃げたわね」
「逃げたな」
「まぁ、私たちは伊達さんの方が聞きやすいですからね」
「さ、さてと……俺もそろそろ帰るかな……」
しかし、俺の隣にいた四条さんと川奈さんが微動だにしない。
店内だろうと四条さんに触れでもすれば逮捕コースだ。
その先には川奈さんがいる。今や押しも押されぬ実力者である。
二人のファンクラブには、既に5桁以上の会員がいる。
彼女たちを敵に回せば、俺は世界を敵に回す事になる。
そして、正面には
ここで大きな騒ぎが起きれば、俺たちの正体がバレてしまうだろう。
俺たちの正体がバレるという事は、一緒にいる
芸能界……? アイドル? 俳優っ? スター!?
どうしよう、スターダムを駆け上がる姿しか想像出来ない……!?
「お、お兄ちゃん……大丈夫?」
「あ、いや……うん。大丈夫」
仕方ない。ここは嘘を吐かず本当の事を言うしかない。
「……実はね、先月の北海道での調査課からの依頼……
川奈さんは前日入り、
3人は頷き、俺を見る。
「飛行機がファーストクラスでさ。飲み放題だから
……ふむ、上手く言えたと思う。
真実を見せずに嘘を吐かずに本当の事を言う。
これが今の俺に出来る限界である。
3人は俺の話を聞いた後、見合い……何故か四条さんと川奈さんは
「どうだ、
「伊達さん、嘘、言ってます?」
うそ発見器こと伊達
「嘘も真実も言ってない感じ」
守護神には敵いませんでした。
「ま、その真実については触れない方が良さそうだな」
「え?」
そう言って四条さんは背もたれに身体を預けた。
「伊達さんが私たちに隠すって事は相当な事でしょうし?」
とぼけた様子で川奈さんが言う。
「いいわよ、お兄ちゃん。見逃してあげる」
天は俺を
がしかし、ソレに代償はついてまわるものである。
「お兄ちゃんっ」
やたら弾んだ声の妹が満面の笑みで俺を呼ぶ。
「きゅーめー?」
この四条さん顔は、猫を被った時のアレだ。
「伊達さん?」
あ、知ってる。これ、わがままを言う川奈さんの顔だ。
「私、ここのケーキセットがいいなぁ」
「私はフルーツ盛り合わせだな」
「私はアフタヌーンティーセットをお願いします」
その多段攻撃に、俺は屈する他なかった。
「…………はい、喜んで」
がくりと頭を落とした俺は、3人の弾んだ黄色い声に包まれながら、「こういうのも悪くない」と思う事にした。
いや、思うしかなかった。
「アフタヌーンティーセットって何ですかっ?」
「待て、今調べてる……えーっとこの店のはケーキとかスコーンとかサンドイッチも入ってるみたいだぞ?」
「ここの焼きたてスコーンは美味しいんですよ~! 皆でシェアしましょうっ!」
ケーキセット3000円。
フルーツ盛り合わせ4200円。
アフタヌーンティーセット7700円。
おかしい。俺は今日ここにお金を回収しに来たはずなのに……財布の中身が減っている? 何だろう、このデバフ攻撃は?
精神汚染系の魔法でも掛けられてしまったのだろうか。
そう思い、現実逃避に窓の外を見る。
乙女3人と俺。
勿論、俺は違う。
しかし、世間は基本的に
――俺が窓の外に
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