第208話 ◆月刊Newbie1
KWN株式会社の子会社である
月刊
【私立八王大学】を好成績で卒業し、天才関連のジャーナリストとなるべくKWN堂に入社。端正な顔立ちながら、キツイ性格が災いし、男性との交際までは発展するも長続きせず、以降仕事だけに身を置いている。
「堀田くん」
御剣の近くを通りかかったカメラマン、堀田を呼び止める御剣。
「はい! な、何でしょう御剣さん!」
「別に怒ってないから。これから【
「え、佐伯さんどうしたんですか?」
「佐伯くんが風邪なんだって。このご時世だしキツく言えないのよね」
「いや、そもそもキツく言っちゃいけないんじゃ……」
「何か言った?」
「いえ、滅相もない! えと……それじゃあ準備してきます!」
そそくさと準備を始める堀田に、御剣が小首を傾げる。
(おかしい。いつもならすぐ断られるのに……)
そう思いながら、御剣は【命謳】の資料を流し見る。
「……なるほど、堀田くんの目当てはこの二人か」
「準備できましたぁ!」
敬礼しながら鞄を持ってくる堀田に、御剣が目を丸くする。
「ず、随分早いのね」
「いやぁ、僕も前の現場バラされちゃって暇してたんですよ。それに、今話題の【命謳】相手ですからね! ちょうど撮りたいと思ってたんですよ!」
「堀田くんの目当ては、この川奈の令嬢と四条って女の子でしょ?」
「うぇ!? そ、そそそそんな訳ないじゃないですかぁ!?」
「どっちもルックス抜群だものね、若いっていいなぁ」
「は、ははははは……御剣さんも負けてないっすよ……うん……」
「そういうお世辞は、【命謳】に向けてあげて」
そんな御剣の言葉に、堀田が首を傾げる。
「というと?」
「【命謳】の代表からカメラNGが出てるのよ」
「えっ!? それじゃあ僕、意味ないじゃないっすか!?」
「だから、一応付いて来てもらって、現場で交渉するのよ」
「そんな事して……またデスクに怒られますよ?」
「大丈夫、もう始末書は書いてあるから」
「始末におえないってこういう事なんですね」
「なーに
「いや、交渉は御剣さんがしてくださいよっ? 僕じゃ役不足ですから」
「力不足ね」
「そうとも言います」
「そうとしか言わないのよ。それじゃ13時に派遣所の八王子支部で待ち合わせだから、そろそろ出ましょう」
「え、派遣所で取材するんですか?」
「【命謳】はまだ
「うわ、それマジっすか?」
「そこら辺も色々聞いてみたいじゃない?」
「た、確かに……でも、天才たちの視線浴びるだろうなぁ」
「そんなもん気にしてたら記者なんて務まらないわよ」
「僕、カメラマンなんです」
「相手はそんな事気にしてくれないわよ」
先を歩く御剣を前に、溜め息を吐く堀田だった。
◇◆◇ 9月18日12:40 ◆◇◆
天才派遣所八王子支部の応接用レンタルスペースでは、クラン【命謳】の代表【伊達玖命】が頭を抱えていた。
「しょ、翔……そ、その服は……!?」
「おう
内に【命謳】のTシャツは見られるものの、その上から羽織る真っ白な
「おぉ……のぉ……」
「ほっほっほっほ、気合いが入っとるのう!」
後ろを見れば、そこには元インサニア参謀兼序列2位の山井拓人が立っていた。
「袴とTシャツって……意外に合う……?」
「こりゃ袴パンツだからのう」
「え、そんなのあるんですか?」
「ほほほ、玖命、遅れとるのう」
「でも……色合いは合いませんね」
「ぐっ、それは儂も気にしてたのに……」
「【命謳】仕様の羽織作りましょうか……」
「おぉ、それはいいかもしれんな」
「翔も勝手に特攻服作ってますし、山井さんのオリジナルって事にすれば悪くないかもしれません」
「うんうん、インサニアではこういうのなかったしのう。嬉しいのう」
「でぇ…………」
振り返りながら二人の乙女を見る玖命。
ドヤ顔をする
黒チェック柄のハイウェストミニのプリーツスカート。ヘソ出しの【命謳】Tシャツ。
川奈の右腿にはガーターリングが見える。
「川奈さん……それは……?」
「わかりますか、伊達さん!? 病みカワですよ病みカワ!」
「えぇ……川奈さん超元気じゃないですか」
「元気と可愛いは別です!」
肉薄する川奈をおさえつつ、玖命は四条を見る。
「四条さんはサスペンダーですか」
「に、似合わないならやめるぞっ!?」
「あ、いや……似合ってます、似合ってます!」
「……そか、うん……そか」
ほんのりと顔を赤らめる四条。
抑え切れなくなった川奈がまたずいと出て来る。
「今日は四条さんと双子コーデです! どうですかっ!?」
「……あ、はい……それぞれ個性が出ててとてもよろしいかと」
「ふふふ……そうでしょうそうでしょうっ?」
喜びながらくるくる回る川奈を前に、玖命が額を抱える。
(どうしよう……この人たち、完全に写真撮られに来てる……)
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