第204話 もしかして

「お……おぉお……やべ…………」


 明細書


 リザードナイト(小)――230000円×51体=11730000円

 リザードナイト(中)――250000円×39体=9750000円

 リザードナイト(大)――270000円×25体=6750000円

 グリフォン(大)――200000000円×1体=200000000円

 魔石核(大)――――1500000円

 罰則金―――――――△1100000円

 ダンジョン破壊―――250000円

 依頼報酬――――――400000円


 合計―――――――――――――229,280,000円


「に……2億2千万……!? うっ、は、吐きそう……!」

「だ、伊達さん、大丈夫ですかっ!?」


 川奈さんが背中をさすってくれているものの、俺は目の前が真っ暗になりそうである。


「ほー、グリフォンの魔石がデカかったんだな、こりゃ。普通サイズなら1億ちょいだしな。カカカカカッ!」

「報酬は巡回強化分だけだしのう、こんなものか。ほっほっほ!」


 翔とたっくんは、全く驚いていない。

 まぁ、それは川奈さんもなんだけど。


「大丈夫、伊達くん?」

「あ、相田さん……あ、ありがとうございます。ね、念のため、内訳の詳細を伺えますか?」

「え、うん。かしこまりました。まず、モンスターの分ね。Bランクを超えるモンスターの魔石相場は大体20万超。Cランクから一気に一桁上がる理由としては、このランクから魔石のアーティファクト運用が出来るからです。Bランクの魔石を使う事で、【腕力G】や【脚力G】なんかのアーティファクトが出来るそうです」

「おー! アーティファクト! 完成が楽しみですねぇ!」


 川奈さんは確か、既にアーティファクト装備購入の約束を川奈氏と結んでいるそうだ。おねだりのレベルが規格外過ぎてついていけないが……。


「因みにAランクの魔石は以前伊達くんが倒したエティンのように、200万円を超えるものが多くなります」

「グリフォンは……Sランクですね? 一つのランクでそんなに上がるものなんですか?」


 川奈さんの質問に、相田さんが丁寧に答える。


「Sランク以上の魔石は、需要が高く、争奪戦になる事も珍しくありません。このクラスになると、天才の方々はご自分のアーティファクトへ使用するため、そもそも派遣所に販売してくれない事も多いからです」

「あー、確かに既製品を買うより、自分で魔石を持って加工を依頼した方が安いですもんね」

「そういう事です。だからこそ、市場にはあまり流れません。それ故、価格も高騰するのです」


 相田さんがそう言うと、川奈さんはちらりと翔を見た。

 翔は川奈さんの視線を受け、ニヤリと笑って言った。


「そういうこった、嬢ちゃん。カカカカッ!」


 そう、川奈氏が翔を雇って凶暴化リザードマンを倒させていた理由が、おそらくコレ。まぁ、今は【大いなる鐘】が引き継いでるようだけど。


「アーティファクト以外にも、Sランク以上の魔石は多くの用途があります。中でも、発電エネルギーに使用される事が多いですね」

「小さい魔石だと無理なんですか?」

「小型のものであれば使えなくはないらしいけど、大量発電に関しては魔石同士が反発し合って上手く発電出来ないらしいの」

「なるほど」


 これは俺も初めて知った。

 そういうものなのか。大量の小さな魔石で発電出来ないのには、そういった背景があるのか。

 だとすれば、KWNが大きな魔石を欲しがる理由がわかる。

 しかし……反発し合うか。

 まるで、モンスターが縄張りを主張し合うかのようだ。

 魔石に意思でもあるのだろうか。


「次は魔石核ね。これは大きさで固定されてて、小さいのから30万円、80万円、150万円です。これは昔から変わらずですね。魔石核の魔石は、他の魔石と同じくコーティングに使用される事が多くて、単純な大きさだけでの判断となります」

「他の魔石と同じ材質……ってところでしょうか」

「その認識で構わないかと」


 ふんふんと頷く川奈さん――


「えーっと……それで罰則金ですが……」


 ――が、相田さんから顔を逸らした。

 口笛まで吹き始めてしまった。


「Cランクに満たない川奈さんの侵入がマイナス10万円、残りの100万円が、不正規のダンジョン破壊に対する罰則金です」

「「すみませんでした」」


 俺と川奈さんが頭を下げ、翔は小指で耳をほじり、たっくんは欠伸あくびをしている。


「川奈さんの件は褒められたものではありませんが、【天騎士】を保有している点から考慮して、私からは強く言えないのが現状です」


 とはいえ、相田さんから注意を促すジト目が飛んできている。


「は、ははは……すみません」


 単純な注意の方がまだ良かったかもしれない。

 まぁ、これ以上の注意がないのは、彼女なりの信頼なのだろう。


「後者の件は慣習みたいなものですから、高ランクの天才の方々に対して、何かあるというものではありません」

「なるほど……」


 やはり、たっくんの言った通りなのか。


「ダンジョン破壊報酬は定額25万円、依頼報酬は、今回の強化巡回の分のみです。以上が今回の詳細となります」


 相田さんが目を伏せ、説明を終える。

 すると、川奈さんが皆に言った。


「それじゃあ……4等分でいいですかね?」


 川奈さんのダンジョン侵入は皆で決めた事。

 それを川奈さんの負担にするのは確かに違うだろう。

 この金額を4等分……1人あたり5732万円?

 ………………あれ?

 もしかして借金返済出来るんじゃ?

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