第202話 【命謳】始動4
「てめぇどこ見てんだゴラァ! 嬢ちゃんはアッチだろが!」
翔のビンタでリザードナイトが困惑。
困惑しながらも翔のギラついた視線により川奈さんへ誘導。
「そちらではない! あ、いかん。目を潰してしまったか!? えぇい! 面倒臭いわっ!」
たっくんがリザードナイトの尻を叩き、川奈さんへ誘導。
「あはは……ヘイト集めいらない感じですね」
そう笑いながらも、リザードナイトから目を切っていない。
どうやらこれまでの訓練が身体に刻み込まれているようだ。
「こんなの! 伊達さんの訓練に比べれば! 大した事ありません!!」
リザードナイト4体も、今の川奈さんのガードを貫く事は出来ない。
最初からランクB以上のダンジョンに当たれるとは幸運だったが、
だが、翔とたっくんの二人のアタッカーが優秀過ぎて
俺なんて……何もしてないし。
強いて挙げるのであれば、翔、川奈さん、たっくんへの【大聖者】による【パワーアップ】。更に【士官】の身体能力向上。武器持ちである川奈さんとたっくんへの【魔法剣】。
「カカカカカッ!」
「ほっほっほっほ!」
「「ぶっ飛べっ!!」」
「すごーい! ホームランですぅうう!!」
翔とたっくんの一撃が凄まじすぎてピンポン玉のようにリザードナイトが飛んでいく。それがいけなかったのだろう。
いや、これがいけないと表現するには、俺たちのクランは強すぎた。リザードナイトが建物に当たり、跳ね返り、何度かの跳弾を繰り返し……ダンジョンの奥へと消える。
その直後、
「ビィイイイイイイイイイイッ!!!!」
聞こえてくるボスの声。
「あ」
俺の間の抜けた声など、翔とたっくんには届いていなかった。
「さっさと来いボケェエエエッ!」
「こっちは待ちくたびれとるんじゃ! 茶ぐらい出さんかっ!!」
モンスターが出す茶とは一体……。
「気になります……」
どうやら川奈さんも同じ気持ちのようだ。
しかし、今の遠吠え……リザード種ではなさそうだが、一体?
……足音が聞こえる。
ボスにしては小さいようだ。
いや……大きい? 動きが非常に軽い?
まさか……!?
俺は空を見上げた。
ダンジョンは洞窟ではなく、どこかの崩壊した市街地のような場所。つまり、空があるのだ。
だとすると――、
「っ!?」
直後、小さな振動が大地を伝った。
それがボスの跳躍を示すものだと、俺たちはすぐに気付いた。
俺と川奈さんの正面、翔とたっくんの背後にふわりと降り立ったのは――、
「
たっくんの言葉が全てだった。
まさかリザードナイトが生息するダンジョンのボスがグリフォンだとは思わなった。
同種がボスになるという事は勿論絶対ではないのだが、あまりにもかけ離れていたからだ。
「はぁ~~……」
翔がガクリと肩を落とす。何で?
「興覚めじゃ」
たっくんも二本の剣を納刀する。何で?
「おう、
「え?」
「儂らは解体といくかのう。ららちん、手伝ってくれんか?」
「あ、はーい」
「……え?」
そう言いながら、3人は俺を置いて解体へ向かってしまった。
「…………ッ!」
グリフォンが物凄く睨んでる。
どうやら、翔とたっくんに
「そ、そうだよな。お前Sランクだもんな……ははは」
そう俺が苦笑したのも束の間、グリフォンは一瞬で後方へ跳び、自慢の翼で勢いをつけ、俺に向かって来た。
「しょうがないな……」
そう呟き、俺は一人寂しく刀を抜き、半歩だけ横に動き、グリフォンの動きに合わせた。
縦に振られた
次の瞬間、グリフォンの右胴体は俺の左側を抜け、左胴体は右側を抜けていく。
「あー…………Tシャツが……」
グリフォンの血が俺の
失敗したなと後悔していると――、
――【
――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。
――グリフォンの天恵【脚力S】を取得しました。
「いや、遅いだろ……」
そう、自分の天恵に突っ込まずにはいられなかった。
「お、しっかり魔石避けて斬ってるじゃねーか、流石玖命だぜ!」
「解体ほとんどしなくてすみましたね!」
「ほっほっほ! やりおる」
最後の人だけ、何かイメージが合わないんだよなぁ。何でだろ?
「ありがとうございます」
まぁ、いいか。
そんな事を考えながら、俺も解体作業に入ったのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
強化巡回、もといダンジョン破壊を終え、俺たちが天才派遣所の八王子支部まで戻ると、相田さんが心配そうな表情で俺たちを迎えた。
「伊達くん!」
受付カウンターを抜け、駆け寄ってくる相田さん。
「だ、大丈夫……? 怪我はない?」
そう言いながら、相田さんは俺の胸元を見ている。
「あーこれですか? 大丈夫ですよ、ただの返り血です。ダンジョン破壊、終えてきました!」
そう言って、袋にまとめられた魔石を掲げると、相田さんはホッとした様子で俺に言った。
「んもう、ダンジョン侵入するって言うから心配したんだからね?」
「あ、あははは……す、すみません」
そういえば、俺の意思で明確な違反行為を相田さんに告げたのは初めてだったかもしれない。エティンの時は、不可抗力だったしな。
「伊達さん、カッコよかったですよ!
「【
「初の凱旋といったところかの、ほっほっほっほ!」
こうして、クラン【
その時、俺のスマホが着信を知らせた。
俺はポケットからスマホを取り出し、表示された名前に、首を傾げる。
「
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