第200話 【命謳】始動2
天才派遣所の仕事は、実はそんなに多くない。
勿論、それは高ランクの依頼に限った話である。
中堅どころと呼ばれるのはD~Cランク。
Bランク以上の依頼は、ほぼ高ランクと呼ばれるものである。
だから、今俺が受けられるCランクの仕事は、その日一件受けられるか否かといった件数しか、派遣所に回ってこない。
理由としては、やはり高ランクのモンスターが
何故なら、
そして発見された
これまで俺は、イレギュラーな経験ばかりしてきた。ゴブリンジェネラル、エティン、大災害、北海道武器工場のオーガ。Cランクモンスターとダンジョン外で出会った事など、数えればそれくらいなのだ。
いざ探そうと思って高ランクモンスターを見つけられれば苦労はしない。
「相田さんから紹介された仕事……強化巡回でしたね」
川奈さんは、相田さんに渡された詳細ポイントが記された地図を片手に言った。
そう、昨日発見されたBランクモンスター……リザードナイト。
それが倒され、強化巡回の任務が派遣所に回って来たのだ。
意気揚々と派遣所に行った翔とたっくんだったが、依頼内容を聞いて物凄く落ち込んでいる。
「
「『出来れば討伐依頼であるとありがたい』とか……儂、恥ずかしい」
先程の俺を見ているようだ。
二人ともがっくりと肩を落としながら、俺たちの後に付いて来る。
彼らの心がこうも上下に激しいと、クランの活動に影響が出るのではないだろうか。
そう思うも、
「センパイ、強化巡回で
「無論じゃ、罰則金払ってでも
すぐにその考えは払拭された。
「伊達さん、そうなんですか?」
「え、あぁうん。
そこまで言うと、派遣所と付き合いの長いたっくんが教えてくれた。
「左様。昔のなごりを、良い意味でも悪い意味でも残しているようじゃな」
「なごり……ですか?」
川奈さんが聞くと、たっくんがその詳細を教えてくれた。
「【
「へぇ、罰則金を上げるという対策は出来なかったんですか?」
「一時は上げたんじゃよ」
「え、そうなんですかっ?」
「じゃが、その期間、【はぐれ】になる天才が増えるというデータが出てしまっての」
「「あー…………」」
俺と川奈さんは同じタイミングで納得してしまった。
「苦肉の策なんじゃよ。破っても破られても互いが折り合いのつく金額。それが罰則金100万という事じゃ。今の今も、この規定は薫ちゃんが守ってるんじゃ」
「薫ちゃんって……誰ですか?」
と、川奈さんが聞く。
その意味がわからなかったのか、たっくんが首を傾げる。
あぁ、こういうのも俺の仕事なのだろうか。
仕方ないと思いつつ、俺は川奈さんに説明する。
「統括所長の
「おー、確かに薫ちゃんです」
得心した様子の川奈さん。
そりゃ、統括所長をそんな風に呼べる人間は限られてるしなぁ。
生きる伝説――山井拓人。そんな人が、【
「あれ? ところで翔さんは?」
川奈さんが周囲を見渡す。
「あぁ、翔なら、たっくんが『無論じゃ』って言ったあたりから、消えてますよ」
「今はあのビルの上じゃな」
太陽の中に、確かに翔と
「悪人にしか見えませんね」
「時刻が夜なら狼男か」
「いんや、それでいいじゃろ。後輩は孤高の一匹狼なんじゃろ?」
なるほど、確かに高いところにいるな。
「あ、跳びました」
「飛び下りましたね」
「悲鳴が聞こえるのう」
川奈さん、俺、たっくんは、翔が着地すると同時、その笑みに目を丸くした。
「どうやら……」
「あれは……」
「ほっほっほ、見つけたようじゃの」
まさか強化巡回始めて早々に
とはいえ、人生初めての自分のクランでのダンジョン侵入……頑張らなくては。
「えぇっ!? 私、外で待ってるんですかぁ?」
と、唯一ダンジョンに入れないDランクの川奈さんが、言いましたとさ。
◇◆◇ 後書き ◆◇◆
祝! 200話達成٩( ᐛ )( ᐖ )۶
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