第193話 本題
四人で応接フロアへと戻った俺たちは、そこにいる人たちを見て驚いた。
「どうしたんだね、君たち?」
フロアのエレベーター前にいたのは、先程川奈氏が人払いした社員の方々。
何やら焦った様子である。
「主に低層階からの連絡が入りまして……」
とても言いにくそうなご様子。
俺たち3人は顔を見合わせる。
「何かね?」
「地下からの振動が物凄く……避難する社員もいて……その……」
「「あ」」
4人の声が揃った瞬間だった。
と同時に、俺は社員の方々に頭を下げた。
「す、すみませんでしたっ! 業務の妨げになるような事をして! ほんと、すみません!」
「いやー、ごめんごめん。まさかあそこまで白熱するとは思わなくて、ね?」
凄い、水谷の軽い謝罪とスマイルで、皆の顔が綻んだ。と同時に、俺への奇異の視線が。
「すまなかったね、君たち。紹介しよう。我が社で新しく契約するクラン【
直後、俺は目を丸くした。
「「お世話になっております!」」
「あ、はい……よろしくお願いします」
俺が頭を下げるも、頭が上がった時、彼らはまだ頭を下げていた。凄い……ジャパニーズビジネスマン凄い。
「下の階には謝っておいてくれ。『我が社のセキュリティが更に向上した』とも付け加えてな」
川奈氏がニコリと笑うと、社員の方々は頭を上げ、ホッと息を吐いてからエレベーターに乗って去って行った。
俺の隣では、何故か川奈さんがニヤニヤと川奈氏を見ていた。
どこか水谷も似たような表情なのは気のせいだろうか。
「おとーさん」
川奈氏の肩口から顔をひょいと出す川奈さん。
どこかいつもと違う雰囲気だ。
「何だらら?」
甘えている娘に向ける父親の顔という印象だが、当の川奈さんはどこか違うような?
「社長~?」
あれ? 水谷も同じだな?
すると、川奈さんがその答えを出してくれた。
「ウチの代表はー、まだ契約を結ぶなんて一言も言っておりませんが、それはおとーさんの一存で決められる事なんですかー?」
うーわ、凄い。
今、とんでもない言葉が飛び出たぞ?
「そうですよ社長~? 玖命クンの価値は今、うなぎのぼり。【
水谷は完全に悪乗り状態だが、【大いなる鐘】が俺をどう見ているかを伝えているのか。
……やはり、今、水谷が俺にウィンクを送ってきた。
あれは、俺の価値を上げようと躍起になっている顔だ。
まぁ、半分はそれなんだが、もう半分は、完全に楽しんでるな。
「そ、そうだったね。すまなかった伊達君」
「あ、いえ」
「困りますよ、おとーさん?」
「そうですよ、社長~?」
可哀想な川奈氏……。
戦い以外では、あの二人を敵に回しちゃいけないな。うん。
◇◆◇ ◆◇◆
再び応接フロアのソファに腰掛けた俺、そして隣に川奈さん。
川奈氏はこれにあまり良い顔はしなかったが、川奈さんが静かな笑みを送ったら、営業スマイルに戻った。
その間、水谷は越田さんに連絡すると言って、席を外した。
俺は川奈氏に持って来るように言われていたクランメンバーの資料を渡した。
「さて、伊達君……クラン【
今日の川奈氏はとても大変そうだ。というか、さっき俺が言っただろうに。完全に忘れてたな、今の顔。
「おとーさん」
「あ、いや、【天騎士】の川奈ららさん……? それと【天眼】?
「はい、四条は戦闘員として登録こそしていますが、基本的には【
「結構。では、伊達、鳴神、山井、川奈の4名が戦闘員という事で話を進めさせてもらうが、構わないかね?」
「はい、よろしくお願いします」
「うん、
「はい」
やはり大企業。全ての会社を一つのクランで守り切れる訳がないという事か。
「企業案件についてはある程度知っているという認識でいいかな?」
「はい」
「では、細かい事は追々決めていくとして、【
川奈氏が資料を見せ、俺たちに説明する。
「おー、中々いいお仕事ですね」
川奈さんが口を尖らせながら喜んでいる。
【KWN重工】といえば、広大な土地を使い、様々な軍用車両、戦闘機を造る世界的に有名なKWNの子会社。
それに、【私立八王大学】って言えば、二十年くらい前に出来てから、瞬く間に世界大学ランキングで100位以内に入った、超マンモス大学だ。
なるほど、土地が広ければ広い程、
「それでお父さん、最後の一件は?」
「ここだが?」
………………なるほど?
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