第171話 北海道旅行1
◇◆◇ 20XX年8月29日 14:00 ◆◇◆
「
「ラーメンだろうが!」
「蟹だよ!!」
「らあめん!!」
俺の眼前で蟹なのかラーメンなのか蟹ラーメンなのかを話してるのは、
まぁ、全員ビジネスクラスらしいが、この人数だ、派遣所としては赤字だろう。
そして、その帰還が明日の夕方という事で、今日の昼過ぎから明日の昼までは北海道旅行を満喫するという事で決定した。
…………したのだが、
「寿司!」
「ラーメン!」
「こっちが蟹から寿司に譲歩してやってんのに、何で鳴神はそう頭が固いかな!?」
「カタだろうがバリカタだろうがハリガネだろうがカンケーねーだろーが!?」
「きゅーめー! お前はどっちだ!?」
「そうだ玖命ぇ! ラーメンだろ? ぉ?」
ノーコメントとしたいが、二人の鬼気迫る表情に、俺は何も返せなかった。
――ので、
「あ、水谷さんから電話きてたんだった。ちょっと電話して来るね」
「蟹だ!」
「四条てめぇ! 戻ってるじゃねーか!? ラーメンだろボケ!」
「お前に譲歩する気が失せただけだ! かーにー!」
「らーあーめーんー!」
子供のまま大人になった二人だな、ありゃ。
まあ、翔はともかく四条さんはまだ
ただ、相手が我の極致にいるような翔だし、遠目で見守るくらいがちょうどいいのかもしれない。
俺は
水谷に電話をかける事……3コール。
『もしもし!?』
「あ、もしもし、水谷さんですか?」
『こっちからかけ直すね!』
ものの3秒で電話が切れた。
……もしかして、こちらの通話料を考えてくれたのだろうか。
そんな事を考えていると、水谷から着信が入った。
電話をとり、
「あ、わざわざすみません」
『いーのいーの、こっちの用事なんだから。何、今北海道なんだって?』
「え、相田さんに聞いたんですか?」
『
確かに、プライベートではない仕事の話だ。
相田さんが話したとは考えにくい。
『
電話しながらウィンク決めてそうなテンションである。
なるほど、水谷ファンの
「そういえば、以前ウチに集まった時に連絡先交換してましたね」
『うんうん、玖命クンの情報がいち早く入るから助かってるよ』
「
『だいじょーぶだいじょーぶ、今度お礼も兼ねて一緒にご飯食べる約束してるんだ。もう友達だよ、友達っ』
「そこまで
『まぁ、
「あー……【
『玖命クンは勿論だけど、北の【剣聖】を観られたのは収穫だったよ』
「え、あれ小林さんがかけてたゴーグル越しだから、小林さんは観られなかったはずですけど……」
そう言うと、水谷はさも当たり前かのように言ったのだ。
『何言ってるの? こばりんの視線と剣の軌道、玖命クンの動きを見れば、彼がどう動いたかなんてすぐにわかるでしょ』
「ちょっと何言ってるかわからないですね」
『あははは、でも玖命クンも強くなったよね。もう私でも敵わないかもしれないよ?』
「いえ、水谷さんの方が強いですよ」
そう言うと、水谷はしばらく沈黙を選んだ。
『…………さらっと言い切ったね?』
「でも、もうすぐだと思います」
『それはまた……うん、わかった。じゃあ私も抜かれないように頑張るね』
「はい、応援してます」
『玖命クン……何か狙ってるんじゃない?』
「えぇ、早いところ、水谷さんには第5段階の天恵に成長して欲しいですね」
『……ふ~ん、それで私の天恵も手に入れちゃうのかな?』
……これだけ俺と共に行動している水谷だ、俺の嘘情報も知ってる訳だし、ここまで読んでくるのは予想出来た。
というより、たった今、俺がヒントを出してしまったという事もあるだろう。
まぁ、それにいち早く気付いたのは彼女じゃないんだけどな。
「よくお気づきで」
『っ! ……へぇ、もう隠すのをやめたの?』
「う~ん……というより――」
『――というより?』
「ようやく準備が整ったってところでしょうか」
『あははは、いいね。じゃあこれからはもっと玖命クンの活躍が見られる訳だね?』
「いや……別に活躍したいという訳ではないんですけどね、はははは」
『いやいや、玖命クンは自分から目立ちに行ってるでしょ? これは多分
流石に相田さんを出されると、こちらが形勢不利である。
そう思い、俺は本題へと戻った。
「コホン、それで? 何の用だったんですか?」
『実は私、高幸に借りがあってね』
「越田さんに?」
『まぁ、以前大怪我負った時に助けてもらった時の借りなんだけど』
あぁ、最初に俺を助けてくれた時が、そのリハビリだったとか言ってたやつか。
「えーっと、その借りと、俺に何の関係が?」
『高幸がその借りの返済を求めてまで私に頼んできた事だよ』
「なるほど?」
『玖命クン、【大いなる鐘】に入らない?』
「お断りします」
『あはははは! だよねっ? 高幸も無駄な貸しを使っちゃったと思わない?』
「いえ」
『……え?』
「少なくとも、越田さんの本気度は伝わりましたよ」
そう言うと、水谷はくすりと笑って言った。
『いいね、北海道でも成長したんだね。玖命クンは』
「それはどうかわかりませんが、今まで放置していた問題を片付けようと思うくらいには前進出来ました」
『というと?』
「俺、Cランクに上がったら……クランを創ります」
そう言った後、俺は気付いてしまった。
今の
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