第172話 北海道旅行2

 たっくん――玖命、既読無視酷くなーい?

 たっくん――明日の昼には東京着くんだけど?

 たっくん――おーい^^

 たっくん――あ!既読付いた!

 玖命――――返事が遅れました

 たっくん――ネカフェで【姫天】観たよー^^強くなってるじゃーん!あ、勿論、いおりんとの戦闘もね!

 玖命――――まだまだですが、山井さんと出会った時よりかは……まぁ

 たっくん――うんうん、若いってだけで才能だからね!それで、クランの事なんだけど、事務所オフィスってもうあるの?

 玖命――――いや、まだ創立すらしてませんよ。まだ俺Dランクなので

 たっくん――そっかー。それじゃあ履歴書をそんなに急ぐ必要もないかー

 玖命――――本当に入るつもりなんですか?出来たとしても俺以外に3人ですよ?

 たっくん――鳴神翔とKWNの令嬢でしょ?話題性抜群じゃーん!

 玖命――――うわ、もうバレてるんですか…

 たっくん――さっきニュースになってたよ^^

 玖命――――流石特定班…

 たっくん――あいつら敵にまわしたくないよねー^^Sランクモンスターより手強いし^^

 玖命――――確かに…

 たっくん――それじゃあクラン出来たら教えてねー!それまでは都内のホテルや旅館渡り歩いてるから^^

 玖命――――はぁ……わかりました


「はぁ……とりあえず、水谷さんと山井さんはひと段落ってところか。…………後は」


 この、日本一の男……か。

 遠目で翔と四条さんを見ると、未だに言い合いは続いているようだ。

 みことと川奈さんと月見里やまなしさんは、薄橙うすだいだい色のソフトクリームを幸せそうに食べていた。

 あれはおそらく夕張メロンソフト……!

 羨ましいし……恨めしい。

 三人は勿論だが、翔と四条さんも行きたい場所の提案合戦である。ある意味では北海道旅行を楽しんでいると言える。

 しかし、俺はといえば……全然北海道を満喫出来ていない。

 まともに過ごしたのなんて、川奈さんと偶然会ったあの札幌ラーメンくらいじゃないだろうか?

 それ以外なんてラブホテル事件と犯罪組織、大手クラン、病院食しか記憶にないぞ?


「はぁ~……まぁでも、この人に連絡しない訳にはいかないんだろうなぁ」


 そう思いながら、俺は越田さんとのメッセージを起動した。


 越高――伊達殿、近々正式にお会いしたい。


「うーん……やっぱりそうなるか。仕方ない……」


 玖命――かしこまりました。明日の夜に東京へ戻るので、その帰りでよろしければ【大いなる鐘】の事務所に伺えます。


「確か羽田着は……これを計算すると……」


 玖命――19時頃に新宿に着けるかと

 越高――それはありがたい。本来であれば私が伊達殿の下におもむくべきなのだが、気を遣わせたようで申し訳ない。では、その時刻に迎えを用意しよう。では明日。

 玖命――わかりました。明日、よろしくお願いします。


「…………意外にすぐ終わったな」


 元々、越田さんは回りくどいタイプじゃないし、こんなものか。

 いつもプレゼントもらう時の手紙も、用件と一言くらいしかないしな。

 そんな事を考えつつ、俺はスマホをポケットにしまった。

 すると、言い合いに決着がついたのか、俺の前に翔と四条さんがやって来た。


「カカカカッ! 決まったぞ、玖命ぇ!」

「ふん、これが知恵と判断力の勝利ってやつだ」


 おかしい、二人揃ってご満悦である。

 二人が満足するような折衷案せっちゅうあんがあったというのだろうか。


「「昼は蟹! 夜は寿司! 夜中はラーメンだぞ!!」」


 折衷案っていうか、詰めるだけ詰めたって感じの回答だ。

 その詰め込みプランが決まるや否や――、


「ひっ!?」


 みこと、川奈さん、月見里やまなしさんが神速のフリック入力をしながらブツブツ言い始めた。


「あ、お昼の蟹、この時間なら食レポランキング3位のお店予約出来るみたいです。ここから徒歩7分。予約しまーす」


 みことの決断力には頭が上がらない。


「あ、そこクーポンありますよ。リンク送っておきますね。夜のお寿司は二ヶ所おススメがあります。確認してくださーい」


 川奈さんって、俺のスマホプレゼンの時もそうだったけど、しっかり割引きとか使うの流石だよな。両親の教育がいいのだろう。


「あ、それなら最初のリンクのところがいいかも。今夜花火あるらしいから、そこの座敷からなら、いい感じで見られるみたい。はい予約完了。ラーメンはどうする?」


 月見里やまなしさん……いつの間にか溶け込んでるな。

 俺と翔が気を失ってる間に、仲良くなったのだろうか。

 まぁ、元々四条さんとは仲良さそうだったし……いいのか。


「あ、ラーメンはお兄ちゃんに送っておけばいいかと。私は流石に遠慮します。今日だけで体重増えちゃいそう」

「ははは、そ、そうですよねぇ……」

「そうね、私もヤバイし、伊達と鳴神と四条だけでいいか。適当にリンク送りつけておくねー」

「ありがとうございまーす」


 みことが返事をすると、俺のスマホがピコンとToKWトゥーカウの着信を知らせた。

 翔と四条さんの言い合いが20分近くかかったのに、プランはものの3分で、決まってしまった。

 やはり、現代女子の適応力は最強かもしれない。


「おう玖命ぇ! まずは蟹だ! 蟹っ!」

「かーにー! 蟹だぞきゅーめー!」


 先陣を切るあの二人は、絶対に店の場所を知らないだろう。

 しかし、あの二人の手綱は誰が握るのだろうか。


「頑張って、お兄ちゃん!」

「伊達さん! お仕事ですよ!」

「伊達、しっかりね!」


 三人からの応援もあり、俺が抜擢されてしまった。


「きゅーめー! 夜のお寿司も楽しみだな! 今はウニとイカが旬みたいだぞっ!」

「かーにー!」

「うーにー!」

「「いーかー!!」」


 いつもなら、あの中に川奈さんが入りそうなものだが、四条さんのが、翔とフィーリングが合うのか?

 とか思っていると、川奈さんは川奈さんでスキップを始めていた。


「ラーメン! ラーメン!!」


 そういえば、川奈さんは深夜ラーメンを否定していなかったな。

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