第152話 ◆JCAFの謎3
その魔石が向かう先。その途中には様々な機械があった。
小さい魔石を砕く機械。砕いた魔石が、巨大な魔石を搭載した機械を経て、薄紫色の液体となる。更にその液体は透明なパイプを通り、巨大なタンクへと溜まる。
そのタンクからは、少量の液体が絶えず次の機械へと流れている。
(やはりあった……アーティファクトの製造所……!)
(奥に見えるのは通常の武具ですねー。あれは通常取引用でしょうが……ここはアーティファクトの製造許可は申請していないはず。つまりこれは――)
((――密造アーティファクト工場……!))
巨大な犯罪組織の証拠現場を目の当たりにし、玖命は更に周囲を見渡す。
そう、玖命への依頼は、このJCAFの悪事の証拠となる物を持ち返る事。
小林が撮っている映像だけでは、まだ「
奥のセクションに入ると同時、玖命は足を止めた。
「凄いな……」
そこにあったのは、様々な武器や防具。
素材となる武具。魔石のコーティングがされた武具。更に、魔力を感じる事の出来る武具があった。
(ブロンズからアイアンクラス。ゴールドからミスリルクラス。更にはアーティファクト……やはり武具だけじゃなく、アーティファクトまで造っている)
玖命はちらりと後方にいる小林を見る。
(一応小林さんが動画を撮ってるけど、あれは【ポ
玖命は加工し難いフィルムタイプのインスタントカメラを取り出した。一枚、また一枚と写真を撮り、可能な限りの証拠を集めていく。
すると、曲がり角の奥から話し声が聞こえてきたのだ。
玖命と小林は跳び上がり、機械の上に身を置き、その死角へと入った。
「ホントっすよー。カメラに何か映った気がするんす」
聞こえたのは若い男の声と、
「上のカメラじゃないんだな?」
老いを感じるしゃがれた声。
「こっちっすよ」
「ならさっさと階段確認すればいいだろう」
「いやいや、無理っすよ。こえーっすもん。というか、爺さんはそういう時のためにいるんすよね?」
「ったく、クソ眠ぃってのによ」
やがて、声が近くなる。
角を曲がった二人の男たちに、玖命は目を見張る。
――
――生年月日:西暦20XX年7月11日
――身長:163cm・体重:57kg
――天恵:【将校】の解析度41%。
――
――生年月日:西暦19XX年1月9日
――身長:176cm・体重:71kg
――天恵:【将軍】の解析度9%。
(マズいな、どちらも第4段階……! 年老いた男――
二人が玖命たちが通った道を通り過ぎた直後、玖命と
ニヤリと笑う
(くっ! やはり最初から気付いていたか! 狙いは――出口を塞ぐ事……!)
瞬間、玖命は後方に跳び、銭、阿木と距離を取る。
だが、これに反応出来なかった男がいた。
「バレてるぞっ! かわせ!」
「え?」
直後、小林の眼前に阿木の槍が届く。
「うぉっと!?」
小林は咄嗟に剣でそれを弾きながら後退し、玖命の隣に立った。
「ははは、まさかバレてたとはね。いや、助かりましたよー。ありがとうございます」
「いえ、それよりよくかわしましたね」
「はははは、鍛えてますからね」
小林の言葉に嘘がない事は、玖命もよく理解していた。
何故なら、阿木は天恵の第4段階の【将軍】。しかし、小林は第3段階の【剣聖】である。不意を
しかし、小林は剣技をもってそれを防いだ。
弛まぬ努力が天恵の差を埋めているという何よりの証拠と言えた。
(小林涼平……この人も、俺と同じ……!)
玖命がちらりと小林を見たところで、阿木が言う。
「そこの男、【剣聖】小林か。なるほど、派遣所がここを突き止めたか」
銭と阿木に逃げ道を塞がれ、
(まずいな……銭は仲間の全体能力を上げる天恵。第4段階の【将校】が、【将軍】持ちの阿木の能力を上げれば……!)
「すぅ……カァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
深く息を吸い、阿木が気合いを入れる。
銭は後方から天恵を発動し、阿木の能力を上げてしまう。
ビリビリと伝わる気迫に、玖命と小林が呟くように言う。
「「ヤバい……」」
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