第149話 ◆準備完了
「……ふぅ」
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【体力B】を取得しました。
玖命の背後には、オークの亡骸が積み上がっていた。
汗一つかいていない玖命を見、
(何か……この前より強くなってない……?)
「
「あ、え? な、何?」
「申し訳ないんですけど、解体班呼んで頂いてもいいですか? 流石にこの数だと、明日に響きそうで……ははは」
苦笑する玖命に、
「もしもし? 調査課の
苛立ちを見せながらスマホを切る
「伊達」
電話の内容がほぼ聞こえていた玖命にとって、この後何を言われるかの見当はついていた。
「え……はい」
「さっさとダンジョンに入れるようになりなさい。20秒で終わる通話が1分半になっちゃうから」
「あ、はい。何か……すみません」
「謝る必要はないわよ。別に悪い事してないんだし」
「はぁ」
「それじゃ、さっさとホテルに帰って。ゆっくり休みましょ」
「確かに、あんまり眠れなかったですし」
玖命が言うと、
「ぐっ……!」
少しばかり顔を歪めていた。
「大丈夫……大丈夫……うん」
その後、現場保全の後、ダンジョン破壊担当の天才が駆けつけ、玖命の依頼は終わった。
思わぬ臨時収入にホクホク顔の玖命だったが、タクシーで隣に乗る
「そんだけ稼ぐと来年の税金は半分持ってかれるわね」
「は、半分……!?」
そう、玖命を地獄の底に叩き落としたのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
北海道旅行を満喫していた川奈ららだったが、早くもその旅行に飽きがきていた。
「旭川ラーメンも食べちゃったし、夕張は流石に遠いし……中々有意義に、とはいかないですねぇ」
そう呟きながら、川奈は喫茶店でロールケーキをつついていた。
「
ブツブツ言いながら紅茶をかき混ぜていると、川奈のスマホが反応を見せた。
「あれ?
超心臓―――うーみー
四条棗―――うーみー
Rala――うーみー
Rala――海がどうしたんですか?
四条棗―――今、北海道向かっててさ
Rala――え!?ホントですか!?
超心臓―――翔さんとビニールプールと一緒ですね!
Rala――それって…どういう事ですか?
四条棗―――まぁ、この調子だと明日の深夜くらいになりそうなんだよね。
Rala――車ですか?結構かかりますね。
四条棗―――結構速度出てるよ。時速40〜50kmくらい。
超心臓―――乗り心地最悪ですけどね。
Rala――よくわかりませんけど、それならこっちで合流しますか?伊達さんは札幌支部にいるみたいですけど。
四条棗―――私と
Rala――え!何でですか!?
超心臓―――何か、お兄ちゃんと二人してラーメンの画像送ったのが原因みたいです。
四条棗―――仲間外れは許さねぇとかキレちらかしてた。身に覚えは?
Rala――あり過ぎて怖いです…。
四条棗―――それじゃー、仕方ないな。
超心臓―――仕方ないですね。
Rala――少しは助けてくださいよぉ…。
四条棗―――こっちも被害者だからね。
超心臓―――現在進行形で…。
「ひ、被害者……?」
超心臓―――とにかく、明日の22時頃、函館に着く予定でーす!
四条棗―――色々準備しといた方がいいかもなー。
「じゅ、準備……。準備か……うん、確かにそれは悪くないかもしれません」
Rala――わかりましたー!お待ちしてまーす!
川奈はそう返信すると、喫茶店から飛び出すように出た。
(うんうん、私って準備いいよねー!)
玖命、川奈、翔……全ての面々の動きが決まり、その全員が北海道へ集結する。
ヤケ食い旅行に飽き始めていた川奈の表情が明るくなる。
(やっぱり天才はこうでなくちゃ!)
川奈の向かう先は――追加料金を払ってまで広いスペースをとってもらった、ホテルのクローク。
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