第144話 ◆仲間外れ
玖命が小林と会っている頃、伊達家のインターフォンが鳴る。
玖命が小林と共にレンタルルームに向かっている頃、伊達家のインターフォンが鳴る。
玖命がレンタルルームの椅子に腰を下ろしている頃、伊達家のインターフォンが鳴る。
……しかし、伊達家からは誰も出て来ない。
「ちっ」
舌打ちした後、伊達家の軒下にいた男は大きく息を吸う。
そして――、
「きゅうううううううめぇええええええええいくぅううううううううううううううううううんっっ!!!! あっそびまっしょぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」
大気が震えるかのような大声。
すると、家の中からバタバタと物音が聞こえ始めた。
「ぁんだよ、いるじゃねぇか」
男は苛立ちを見せながら、扉が開くのを待つ。
音も立てず、静かに扉を開けたのは――、
「う、
「あ? 何だ? 居候の……確か……女子ー?」
「
「んなの、玖命に会いに来たに決まってんじゃねぇか」
「きゅーめーはいない! 以上だ!」
四条が扉を閉めようとするも、
「ちょちょちょちょぉ! 派遣所にもいなかったんだぞ? そしたらここしかねーじゃねーか!」
翔はその扉を掴んで止める。
溜め息を吐いた四条が呆れながら翔に言う。
「何だよ、聞いてなかったのか? きゅーめーは今、北海道だよ」
「はぁ!? じゃああのグループトークのラーメン画像は本物だったって事か! にゃろう、俺様を………………いや、待てよ?」
「おい、家の前で座るな!」
「いいじゃねぇか減るもんじゃなしに」
「その
「お前、口悪ぃな」
「お前にだけは言われたくねーよ!」
「カカカカカッ!!」
四条の呆れ交じりの怒気も、翔には届かない。
「おい、座るなって! 私が
翔はブツブツ言いながらその場に座り込み、四条の言葉に反応を見せなかった。
「ダメだこりゃ……仕方ない、
その後、四条の連絡により、伊達
「おい! 完全に泥棒だろうが!」
「ちっげーよ! ちょっと借りるだけだよ!」
「泥棒はそういう風に言うんだよ! 大体そんなもん何に使うんだよ!?」
家の敷地内にある物置前で、言い合いをする四条と翔。
翔は埃の被ったビニール状のナニカを持ち、
「お、まびぃ嬢ちゃんじゃねぇか。しばらくぅ」
「そ、それ……貰い物の
「カカカカッ! 流石は玖命んチだっ! 物持ちがいーぜ!」
「そ、それで何する気なの……?」
ビニールプールを指差しながら聞く
「玖命がよぉ? 俺様抜きででっけーでっけー島にいるんだよ」
「仕事だからね、仕事」
「それでもよぉ? 川奈の嬢ちゃんがいて、玖命がいるなら……俺様もいねぇといけねぇだろ?」
その言い分に、四条が呆れる。
「どういう理屈だよ……」
そんな四条のツッコミにも負けず、翔は熱い想いを語る。
「俺様たちはチームよ! ならチーム全員でラーメンを囲うのがジョーシキってもんよ! カカカカッ!!」
「目的、完全にラーメンじゃん」
「おめぇらも違うかっ?」
「「え?」」
四条と
「玖命が買って来た土産の乾麺でいいのか? あぁ? ちげーだろ!? 熱々の生麺! それを皆で
「「確かに……本場のラーメンは……食べたい……かも?」」
「おっし決まりだぁ!」
そんな軽い決断に、
「た、食べたいだけだから! 違うから! 行くとかそういうのじゃないから!」
「カンケーねぇ!」
「私だって仕事があるんだからな!」
「リモートっつーやつで出来んだろ!」
四条の言葉も、翔には言い訳にしか聞こえない。
「お、お金ないし!」
伊達家の伝家の宝刀も、
「よかったな、嬢ちゃん! 旅費はタダだぁ!」
翔のツアーには関係ない。
「お、おいまさか……そのビニールプールは……!?」
四条の言葉で
翔が一体何をしようとしているのかを……。
直後、二人の目は見開かれた。
「「ひっ!?」」
まるで、見てはいけない悪魔を見たような、そんな目をするのだ。
翔は言う。
「仲間外れは……許さねぇ……!」
その日、東京湾に浮かべられたビニールプールは、バタフライ泳法をするナニカによって、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます