第123話 特別任務1
「集合ぉっ!!」
特別依頼とは名ばかり。
俺と川奈さんへの依頼は、思いの他、簡単な仕事だった。
「そうです、しっかりサハギンを引き付けてください!」
「は、はいぃ!」
「「カッカッカッカッ!」」
「ボルトルート!」
俺は雷系の魔法を放ち、サハギンたちの進行ルートを限定させた。触れれば凄まじい衝撃が走る雷撃に、サハギンはそのルートを進む他なかった。
ルートの終着点は――川奈さんの大盾。
サハギンの数は12体。
ガンガンと大盾を攻撃し、川奈さんに迫るサハギン。
「わわわっ!? 伊達さん! ちょっと多いようなっ!?」
「大丈夫、すぐに減りますから」
サハギンは大盾にしか向かえない。
左右、後方には雷撃の海。
前方には川奈さんの大盾。
だから、サハギンはこの大盾を突き進むか、
「カッ!」
「で、出ましたぁ!?」
大盾の上から顔を覗かせるサハギン。
俺はそのサハギンの首を刈り取ってやるだけ。
「ハァッ!」
サハギンの表皮はかなり硬い。
だが、何の抵抗もなく斬る事が出来た。
…………うーむ凄いな、
「な、何か軽くなった気がします!」
「あと11体ですね」
「は、早くお願いしますっ!」
まぁ、これには狙いもあるから、出来るだけ引き延ばしたいところだ。
「だ、伊達さんっ!? あの、サハギンが!? あのぉ!?」
俺は川奈さんの後方で、この一ヶ月で成長し、昨日手に入れたばかりの天恵を発動した。
「【
直後、俺の視界にメッセージウィンドウが表示される。
「おっと」
俺は慌ててとある表記を手で覆い、その部分を隠した。
――
――生年月日:西暦20XX年3月26日
――身長:146cm・体重:??kg
――天恵:【上級騎士】
「うーん……3%かぁ」
「ちょっと! 伊達さんっ!?」
「というか、この身長体重の表記っているか?」
「あのー! サハギンのノックが凄いんですけど!?」
【
「お、4%になった。川奈さん、あとどれくらいもちそうですか?」
「もう限界なんですけど!?」
「またまたぁ」
「なーに笑ってるんですかっ!」
「じゃあ、もう1体だけですよ?」
「いや、全部にしましょうよ!」
その後、俺は川奈さんの大盾を飛び越えようとしていたサハギンを1体倒した。
俺のこの様子に、川奈さんは諦めがついたのか、これまでに見せた事のない表情を浮かべた。
「ふぎ……ふぎぎぎ……っ!」
歯を食いしばり、サハギンの攻撃を防ぎ、耐える。
「あの!」
「何でしょう?」
「で、出来れば説明して欲しいんですけど!?」
確かに、川奈さんの疑問は
「伊達さんの事だから、何か狙いがあるのはわかるんですが! こ、このままじゃモチベーションが維持出来ないかとっ!!」
川奈さんらしい、自分のプレゼン。
そう言われたら俺も説明せざるを得ない。
「えーっとですね、天恵を効率よく成長させようとしています」
「そ、そんな事出来るんですか!?」
その間、サハギンのノック音はガンガンと響いている。まるで借金取りのようだ。
「川奈さんがEランクになる前に【上級騎士】となれたのには大きな理由があります。一つ、高攻撃力を持つ
「つ、つまりどういう事ですかっ?」
「【騎士】の天恵は、ダメージ……というより、攻撃を受ける事で大きく成長します」
「本当ですかっ!?」
「勿論、ヘイト集めも大事ですけどね。なので、このままサハギンの攻撃を受け続けていれば、あっという間に【聖騎士】になれる…………はず」
そこまで言うと、川奈さんはガクッと肩を落とした。
「最後だけ、伊達さんの性格が少し出ましたね……」
「はははは、一応根拠はありますから。川奈さんのためだと思って、お付き合いください」
「ま、まぁ? 伊達さんがそこまで言うのであれば付き合いますけどっ! ひっ!?」
ガンガンガンガン、結構なノイズだけど、これ以上のノイズと戦わなければならない状況が必ず来る。
俺だけじゃなく、川奈さんの成長も、この先絶対必要だ。
「お、いいですね、6%」
「ふぐぅ……ぐぐぐっ……!」
その後、俺は、大盾の上から飛び出るサハギンをモグラ叩きする役回りに徹した。
川奈さんを応援し、川奈さんに愚痴を零されながらも、その成長を見守った。
そして――、
「お?」
――天恵:【上級騎士】
日が暮れ始めた頃、川奈さんの天恵成長が止まった。
「川奈さん、終わりです」
「はぁはぁはぁ……へ?」
「そのサハギンたち……倒せます?」
「うぅ……伊達さん、今日は翔さんより厳しいですぅ……」
涙目になりながらも、川奈さんは諦めなかった。
こういうところは
不屈の心か。
「じゃ、じゃあそんな川奈さんに魔法剣をプレゼント!」
「雷! 雷がいいです!」
流石、しっかりサハギンの弱点を把握している。
その後、川奈さんは時間をかけつつも、しっかり着実にサハギンの数を減らし、10体のサハギンを倒していった。
「はぁはぁはぁ……お、終わりましたぁ……!」
「お疲れ様です」
サハギンの死体を前に、大の字になって寝転ぶ川奈さん。
――天恵:【上級騎士】
もしかして俺たちは、最強のチームになれるかもしれない。
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