第27話 成果
「こ、ここここここれは……!?」
声が裏返りながら俺は聞いた。
そう、目の前に座る川奈ららに。
「今回の報酬ですけど?」
そんな可愛く小首を傾げられても困るのだが?
俺が聞きたいのは、目の前のテーブルに置かれた札束の事だ。
それを見て、何を理解したのか、川奈さんは得心した様子で一枚の紙を俺に渡してきた。
そこにはこう書かれていた。
明細書
ゴブリン(小)――――1000円×187体=187000円
ゴブリン(中)――――2000円×102体=204000円
ゴブリン(大)――――3000円×63体=189000円
ホブゴブリン(小)――5000円×17体=85000円
ホブゴブリン(中)――7000円×10体=70000円
ホブゴブリン(大)――9000円×7体=63000円
ゴブリンメイジ(小)―3000円×15体=45000円
ゴブリンメイジ(中)―4000円×9体=36000円
ゴブリンメイジ(大)―5000円×6体=30000円
解体費用―――――――△90900円
緊急討伐―――――――100000円×2=200000円
特別手当―――――――50000円×2=100000円
合計―――――――――――――――――1,118,100円
「ひゃ、ひゃくじゅういち……まん!?」
「相田さんに聞きました。ランクGの依頼では異例の報酬らしいですよっ!」
「こ、この緊急討伐というのは……?」
「モンスターパレードを未然に防いだ事への報酬だそうです」
「特別手当って……?」
「公に出来ない事の謝礼扱いだと」
「謝礼……?」
「あの
「つまり、口止め料みたいなものだと?」
「ははは、そうは書けないですからね」
だからといって、とんでもない金額なのにはかわりない。
「それで、この報酬を分けないとなんですけど……ほとんど伊達さんの成果なので……ゴブリン30体分の半分、これは(中)の魔石換算が一般的だそうなので、2000円×30体で、60000円。これが私と伊達さんで倒した分ですね。計算すると、半分の30000円が私の取り分ですね」
「え? あ……そうなのかな?」
「はい、そうなんです。それで、緊急討伐と特別手当は二人分出てるので、これはそのまま割ってしまいましょう。一人15万円ですね」
「はぁ……?」
「つまり、この明細の18万円が私の取り分で、残りの93万8100円は伊達さんの取り分という事に――」
「――ちょ、ちょっと! ちょっと待ってください! 本気ですかっ!?」
「足りませんでした?」
「いや、満ち足りてるけど! 本当にそんな割り振りでいいんですか?」
「はい、ちゃんと相田さんに教わりましたっ!」
そんな輝かんばかりの笑みを浮かべなくても……。
いや、確かに正しい計算方法だが、彼女は依頼主。もう少し我儘を言っても許される立場だ。
「これに、今回の依頼報酬の15000円と、チームリーダー手当5000円を合算すると……95万8100円ですね」
フエタ。
「こ、これを俺に……!?」
「『俺に』って、元々伊達さんの分なんですから」
面白い存在を見るような目で川奈さんは言う。
こ、こんな大金今まで見た事がない……いや、逆に請求書とかでは見た事あるんだけど、収入としては初めてだ。
「なので、この受領書にサインください」
「ほ……本当にいいんですか……?」
「ダメな事なんてないですから」
「わ、わかりました……」
俺は喉を鳴らし、受領書にサインをした。
書き慣れているはずなのに、筆跡鑑定をすれば俺じゃないと判定されるくらいには、歪んだ名前を書いてしまったと思う。
ニコニコする川奈さんがキャッシュトレイをすっと前に出す。
顎先から垂れる汗が気にならなかった。
過呼吸になってたと思う。
いや、明らかに不審者だった。
「お、重い……」
お金とは
そう思い、俺は100円均一で買った面ファスナーで口を塞ぐ財布に
――が、
「は、入らない……だと!?」
分厚過ぎて金が入らない。
何だこの現象は、こんな論文出ていただろうか?
「わぁ、何ですか、そのお財布!? 今、バリバリって音鳴りましたよね!? それって、スニーカーとかに付いてるやつですよね!?」
川奈さんは、どうやらこの最高の機能性を誇る財布に目を奪われたようだ。
「面ファスナーのお財布なんて初めて見ました! どこで買ったんですかっ?」
「ひゃ、100円均一で……」
「こ、これ100円なんですか!? というか、100円均一って何ですか!?」
……こ、これが……金持ちの無自覚マウントというやつか!?
「あ、えっと近くにあるから行ってみるといいかも……ね。ははは」
「わかりました! 調べて行ってみます!」
何て無邪気な目をしているんだ。
がしかし……このお金は早いところ
心臓に悪いどころの騒ぎじゃない。
……でも、また
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