第20話 ◆絶対防衛ライン2
目にも止まらぬ動きで川奈ららの大盾を借りた伊達
それを見た川奈は自身の目を疑った。
(い、今のはシールドバッシュ……!? な、何で【騎士】の能力を伊達さんが……!?)
伊達は駆けながらゴブリンの右腕を切断し、その手に持っていた剣を隣のホブゴブリンの首に刺した。
そして、一瞬剣から手を放し、切断されたゴブリンの右腕が持っていた石斧を取り、ゴブリンメイジに投げつけたのだ。
頭部に石斧が当たる前に、伊達は絶命に至ったホブゴブリンの首から自身の鉄の剣を引き抜く。と同時、反転し振り返りながらその背にいたゴブリン2体の首を刈ったのだ。
(な、何あれ……何なのアレ……!?)
目まぐるしく動き回る伊達と、それを目で追う川奈。
――【探究】を開始します。対象の天恵を得ます。
――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。
――ゴブリンメイジの天恵【魔力G】を取得しました。
伊達がどれだけゴブリンを屠ろうとも、
4体のゴブリン、2体のホブゴブリン。またゴブリン。
再び現れるゴブリンメイジも、視界に捉えるなり伊達は瞬殺した。
伊達に吸い込まれるように倒れ続けるゴブリン。
何度も、何度も、倒される無数のゴブリンに、川奈は自身の肩を抱く。
(これが……天才の世界……!)
そして川奈は気付くのだ。
息を切らしながらも、ゴブリンたちを斬り続ける伊達の動きがより速く、より練達されていく事に。
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度45%。天恵【騎士】の解析度30%。天恵【剣豪】の解析度11%。天恵【腕力C】の解析度4%。天恵【魔力G】の解析度20%。
(嘘……ゴブリンの数が……)
先程まで、伊達が捌けていたゴブリンは一太刀に3体。それが4体、5体と増えていく。
伊達は戦いの中で研磨される天恵以上の収穫を得ている。
どんなモンスターの姿、形は勿論の事、習性や特性、弱点や強みをも調べつくした伊達が、戦いの中で新たに発見するゴブリン種の行動パターン。
伊達は戦いの中で、頭の中でそれを何度も書き換え、改善し、より洗練していった。
(右、右、左。この攻撃で側面のゴブリンは動きを止める。やはり。ならこっちが最優先。次!)
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度58%。天恵【騎士】の解析度46%。天恵【剣豪】の解析度12%。天恵【腕力C】の解析度6%。天恵【魔力G】の解析度60%。
武器を持ったゴブリンを背にする事すら、伊達の想定内だった。
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度71%。天恵【騎士】の解析度54%。天恵【剣豪】の解析度13%。天恵【腕力C】の解析度8%。天恵【魔力G】の解析度100%。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【魔力F】を取得しました。
「はぁはぁ……それじゃないんだよなぁ……!」
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度92%。天恵【騎士】の解析度71%。天恵【剣豪】の解析度14%。天恵【腕力C】の解析度10%。天恵【魔力F】の解析度10%。
積み上がるゴブリンたちの死体。
だが、伊達はそれらに
天恵【超集中】が、彼の集中力を更に高め、天恵の解析倍率を上げる。
「このホブで……!」
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度100%。天恵【騎士】の解析度92%。天恵【剣豪】の解析度16%。天恵【腕力C】の解析度12%。天恵【魔力F】の解析度30%。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【頑強E】を取得しました。
「よし!」
その時、ゴブリンの石斧攻撃が伊達に迫っていた。
「あ、危ないっ!」
川奈が叫ぶも――、
「…………えっ?」
ゴブリンの攻撃は確かに伊達に当たった。
だが、脇腹に決まったソレは、伊達にダメージを与えなかったのだ。
「防具もないのに……嘘……?」
天恵【騎士】、【頑強E】により、ゴブリンの攻撃は通らなくなった。
これにより、伊達の攻撃の幅が更に広がる。
「はぁはぁ……きょ……今日は……大収穫だな……」
伊達にも疲れが見え始めた頃、それを見透かしたかのように天恵が動く。
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強E】の解析度5%。天恵【騎士】の解析度100%。天恵【剣豪】の解析度17%。天恵【腕力C】の解析度13%。天恵【魔力F】の解析度40%。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【上級騎士】を取得しました。
「は……はは……これでまた……身体が軽くなった……」
そう零した伊達の姿を見、ゴブリンたちの目は恐怖に満ちていた。
「ハァアアッ!」
気合いを込め、ヘイト稼ぎの掛け直し。
【上級騎士】が使うヘイト稼ぎは【騎士】のものとは訳が違う。
ヘイトを稼ぐと同時に、対象の能力を下げる効果を持つ。
あるゴブリンは力が出なくなり、あるホブゴブリンは行動そのものが遅くなった。
「いいじゃん……これ!」
伊達は再び剣を振り、ゴブリンたちの脅威で在り続けた。
全ては、町への被害を避けるため、力を使い切った川奈を守るため。
「……凄い……」
幾度の攻防、幾度の戦闘を終え、川奈はようやく立ち上がる力を取り戻した。
支柱を支えに立ち上がり、川奈ららの視線の先には――最後のゴブリンを倒し、項垂れながらも、荒い呼吸を繰り返しながらも、立ち続け、守り続けた伊達の姿があったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お気に入り登録、レビュー、感想、いいね、ありがとうございます。励みになります。今日はもう一話だけ投稿出来ると思います!
※補足:サブタイトルの左側に「◆」が付いている話は、主人公視点ではなく、三人称視点で進行する物語です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます