第19話 絶対防衛ライン1
「こ、ここで食い止めるって……何匹のゴブリンが出て来るかわかってるんですかっ!?」
わかる訳がない。それに――、
「それに、ゴブリンだけなんて事はないはずです。ダンジョン内にはきっとホブゴブリンだって……ううん、それ以上のモンスターだっているかもしれないんですよっ!?」
「……わかってます――っ!?」
そう言ったところで、川の中からゴブリンが飛び出してきた。
「ふっ!」
ゴブリンが飛び掛かる直前、その身体を一刀両断すると、川奈さんが喉を鳴らす。
「あ、あの、先程も思ったんですけど……伊達さんって……本当にランクGなんですか……?」
「ランクGですよ。今はね」
再び、ゴブリンが飛び出してくる。
「「ギィイイイ!」」
「さ、3体っ!?」
「ハァアアアアッ!」
――【探究】が完了しました。天恵【腕力D】の解析度100%。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【腕力C】を取得しました。
ありがたい……今はどんな天恵でも欲しい。
そう――、
「だ、伊達さん……?」
「俺の死角をカバーしてください。それ以外は俺がやりますから」
「で、でも私なんかじゃ……」
「大丈夫、さっきちゃんと出来てたじゃないですか。俺を信じてください……!」
なんて、出会って二日の人間を信じろなんて、自分が言われたらどう思うだろう。俺だったら信じられるだろうか。
いや、信じる信じないではないのかもしれない。
「……やるしか、ないんですね」
キュッと口を結んだ川奈さんは、大盾を強く握り、俺に言った。
そう……やるしかないのだ。
俺と川奈さんは互いにコクリと頷き、
橋の支柱を背に、川奈さんは左、俺は右を受け持つ。
先程のように川から飛び出た瞬間を斬り続けられればいいが、今の俺が一度に倒せるのは3体までだろう。
だが、一度に4体以上のモンスターが出てくれば、次の行動を制限されてしまう。
「出てきません……ね?」
「……いや」
1体、3体とくれば次は……!
「「ギィイイイ!!」」
「は、8体です!」
「ヘイトッ!」
それだけで俺は川奈さんに役割を伝えた。
「っ! こっちだよ!」
ゴブリンは流れるように川奈さんへと向かい、俺はその横を叩き、3体、また3体と倒した。
だが――、
「「ギィイイイ!!」」
「つ、追加10体です!? キャッ!」
まずい、これじゃあ川奈さんへの負担が――、
「「ギィイイイ!!」」
「「グァッ!」」
更に8体。ホブゴブリンが……2体だと?
「だ、伊達さん……!」
震える川奈さん、既に何体ものゴブリンが、川奈さんを狙っている。
「や、やだ……! やめてよ!」
「くそっ!」
2体、3体と倒しても、
「い、痛っ!? だ、伊達さんっ!」
その上ホブゴブリンまでとなると、壁が……抜かれる!
ホブゴブリンの石斧が、川奈さんの大盾を掻い潜るように払われる。
それを避けようとした川奈さんはしゃがむしかなかった。
だが、しゃがめば大盾を支える踏ん張りは利かなくなる。
「「ギィーーーーッ!」」
そんな隙を、ゴブリンたちが見逃すはずがなかった。
「まずいっ!」
「伊達さん……!」
川奈さんが目を閉じた瞬間、俺の視界に映ったものは――、
――【探究】が完了しました。天恵【騎士】の解析度100%。
――天恵【騎士】を取得しました。
っ! 使うしかない!
「こっちだぁあああああああああっ!!」
瞬間、全てのゴブリン、ホブゴブリンが俺に意識を奪われた。
天恵【騎士】のヘイト集め。これにより、川奈さんに集まっていたゴブリンが、俺に向かい走って来る。
「え……な、何で……?」
川奈さんは、支柱を背に、大きく息を切らせていた。
やはり、【騎士】の能力を使い過ぎていたか。
明らかに初討伐で捌く量ではない。天恵のキャパシティよりも、緊張状態による疲弊のが大きそうだ。
「っ! ここだ!」
俺は、弧を描くように剣を振り、ゴブリン3体を撃破。
返す刃で、ホブゴブリンの首を刈る。
――【探究】を開始します。対象の天恵を得ます。
――成功。最高条件につき対象の天恵を取得。
――ホブゴブリンの天恵【頑強F】を取得しました。
「嘘……あんな動き……!?」
――【探究】を開始します。対象の天恵【騎士】、【頑強F】を更に解析します。
「ハァアアアアッ!!」
――【探究】の進捗状況。天恵【頑強F】の解析度13%。天恵【騎士】の解析度7%。天恵【剣豪】の解析度9%。天恵【腕力C】の解析度1%。
「まだ……まだぁああああっ!」
【超集中】、【剣豪】、【腕力】、【頑強】、そして【騎士】。
五つの天恵が俺の身体を導く。
かわせる攻撃、潜める死角、耐えられる攻撃、斬り抜く隙。
倒さずともいい。足を斬り、腕を斬り、狙えれば首を刈る。
逃げようとも――、
「そっちに行くんじゃねぇよ……!」
【騎士】のヘイト稼ぎが奴らの足を止める。
その委縮を狙い、再び隙を衝く。
右に左に、上に下に……時には伏せ、時にはゴブリンの亡骸を足場とした。
3体、2体、3体、1体。
「っ! ゴ、ゴブリンメイジ!」
ゴブリンメイジ、火力こそ低いものの、魔法を使うゴブリン種の厄介な相手。
遠隔からあれを防ぐには――、
「――え?」
「ごめん、借りるよ」
俺は支柱を足場とし、駆けながら川奈さんの大盾を拾った。
【腕力C】により、大して重さもない。
これなら……行ける!
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