第3話 新たな天恵
これは……ステータスウィンドウ? いや、メッセージウィンドウか。
何だ、何だこれ?
本来メッセージウィンドウは、天恵を得た時、天恵が成長した時にしか見る事が出来ない。
一部の天恵にはステータス確認が出来るものもあるようだが、今回のこれはそういうものじゃないという事はわかる。
今、メッセージウィンドウに何て書いてあった?
――ゴブリンジェネラルの天恵【集中】を取得しました。
ゴブリンジェネラルの天恵を……取得した?
馬鹿な? 天恵が二つ?
そんな事ある訳……だって天恵は天才一人につき一つ。
それが絶対不変のルールだったはず。
でも、それが間違いだったとしたら……?
いや、そんな事を考えている暇はない。
なら、出来ない事はない。やってやれない事はないかもしれない。
大丈夫、この状態ならば……【集中】を使えば!
「ぅ……う、動けぇええええええええええええええええっ!!」
俺は吼えながら全力で前方に飛び込んだ。
直後、俺の足下で瓦礫が破壊された。
俺はゴブリンジェネラルの股下をくぐり抜け、息を切らしながらただ真っ直ぐ走った。
大丈夫、痛みはなんとか【集中】の天恵が散らしてくれている。
天恵【集中】の能力は文字通り集中状態をキープする能力だ。
痛みを忘れるように、生存に意識を集中させる。
それだけで、俺の身体は動いた。
いや、強制的に動かしたとも言えるだろう。
走って、走って……辿り着いた先は、先程宇戸田が俺に向かって投げたナイフがある場所だった。
地面に刺さったソレを抜き、振り返ると既にゴブリンジェネラルは大剣を振り上げていた。
大丈夫……【集中】のおかげで――、
「見える!」
かわしながらナイフでゴブリンジェネラルの手元を斬る。
「グァ!?」
解体用のナイフにしては切れ味は悪くない。
だが、致命傷には程遠い。
次は……振り払い!
しゃがんでかわす。
かわしざまに、相手の攻撃力を利用して……斬る!
「ギャァアアア!?」
流れるゴブリンジェネラルの血。
地面に落ちた小指を見て、目の色が変わる。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
身体全体が縮み上がるような強烈な咆哮。
「そうだよな……怒るよな……ははは」
ギロリと睨みつける姿はまるで鬼のようだ。
今まではおもちゃだったようだけど、完全に俺を敵として捉えた。ここからが奴の本気……!
「ガァアッ!」
「くっ!」
右に振り、左!
「っ!?」
くそ、左に振り切らず突いてきた。
相手も【集中】持ちなだけあって流石の動き。
「ガァッ!」
突いた直後にタックル。
くそ、避け切れない……!
「ぁ……」
ゴブリンジェネラルが俺の真横を通り過ぎて行く。
どうやら足がもつれて転んでしまったようだ。
しかし、転ばなければ確実に絶命に至るタックルだった。
これ以上長引かせるのは悪手。
集中しろ。集中して集中して、集中するんだ。
今、俺に出来る事はそれしかない。
手に入れたばかりのこの天恵【集中】を使う事しか、俺には出来ないのだから。
そう思った矢先だった。
――【探究】を開始します。対象の天恵【集中】を更に解析します。
「え? うぉっ!?」
メッセージウィンドウに気を取られている場合じゃない。
奴の攻撃に集中しなくちゃ……でも、今のメッセージは……?
そこからの攻防はあまり覚えていない。
ゴブリンジェネラルの攻撃を避ける事だけを最優先に考え、身体を動かした。
俺の身体能力は一般人とほぼ変わらない。
勿論、訓練こそしているものの、素人に毛が生えたようなものだ。対して、ゴブリンジェネラルは速度こそあまりないものの、大きな身体と怪力は、俺の比ではない。
ランクBに位置付けられているゴブリンジェネラルだが、油断すればランクAの天才ですら殺されてしまうだろう。
だから、油断する訳にはいかない。
一つのミスが、俺の人生を終わらせるのだから。
「はぁ……はぁ、はぁ……ど、どうした! まだ俺はやれるぞっ!」
煽り、
――【探究】の進捗状況。天恵【集中】の解析度22%。
「くっ! そこ!」
捌き、
――【探究】の進捗状況。天恵【集中】の解析度38%。
「わぁあああああああああああああ!」
挑み、
――【探究】の進捗状況。天恵【集中】の解析度64%。
「上か、下か……!? 上か!? 上しかないよな!? くそ!」
時にはゴブリンジェネラルを信じ、生死を賭けるように動いた。
――【探究】の進捗状況。天恵【集中】の解析度89%。
「ゼェ……ゼェ……」
「は、はは……疲れてるじゃないか……」
ゴブリンジェネラルの動きが遅くなろうとも、体力がないのは俺も同じ。
体力が切れた時が、俺の最期。
……ならば、体力が切れる前に倒せばいいだけの事。
――【探究】が完了しました。天恵【集中】の解析度100%。
――おめでとうございます。天恵が成長しました。
――天恵【超集中】を取得しました。
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