第2話何人いる?
旦那様と入れ違いで入所されたTさん。アイツには苦労させられたという話しを何故か私によくしてくれます。
私はTさんを「おかあ」と呼んでます。
たまに名前で呼ぶと凄い不思議そうな顔をして返事もしてくれません。
「おかあ、なんぞある?どこみようと?」
みたいな。大抵は
「アンタくらいよ、あっち行ったりこっち行ったりしてんの。たまには座ったら」
みたいな返事がきます。
その日はスタッフの休みが急に入り人数が足りませんでした。
いつものように他のスタッフはお風呂へ行ってて私はホールで見守り。
見守り、言っても雑用てんこ盛り。
オムツ交換終わってない人のオムツ交換やコール対応。利用者様の水分補給。
利用者様のお昼ご飯のお膳準備(お茶やオシボリなどです)。ベッドで寝てる利用者様を車椅子に乗せ、食堂へ。
合間に風呂をのぞき、洗濯へ。乾いた洗濯ものを仕分けし、畳んだり。
は基本の仕事。時々風呂の着脱を手伝ったりとかやったり利用者の喧嘩の仲裁やトイレ掃除なども飛び入り的にやります。
ホールで所在なげに座っているTさんを横目にバタバタと動いてました。
シーツ交換などが飛び入りで入りいつものペースで仕事が進みません。加えてコールが頻繁になり、訪室しても用件はなしでイライラはピークに。
『用事ないんなら鳴らすなよ』
心の中で悪態1つ。
他のスタッフからも(利用者様の)水分補給しといてよとつつかれもう気持ちが爆発寸前。
そのとき。
Tさんと目があいました。
オイデ、オイデと手招きしてます。
「ん?どしたん?」←私。
「聞いていいかね」←Tさん。
「いいよ。なに?」←私。
「アンタ、何人おるんかね」←Tさん。
へ?となった私。もう、さっきまでの怒りはさっぱり消えてました。
なんでも、詰め所にいたと思ったらホールにいて。あれ?と思ったら風呂にいた。風呂にいたと思ったら食堂から出てきて……。おかしいって思ったと。
ワシは一人だよ。ほら、手ぇ触ってみ。
な、いつも通りのだろ
とTさんの手を取り私の腕に乗せました。Tさんしばらく私の腕をスリスリ。
「おかあ、いいか?落ちついた?またくるからね」と頃合いをみて仕事に戻りました。
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