あなたとのきゃっちぼーる

神稲 沙都琉

第1話おとしもの

朝と夜は胃瘻と言って直接お腹へ栄養を流してて、お昼だけはヨーグルトを食べてる利用者様がいます。名前はOKさんです。


お昼前。いつものように利用者様を食堂へと入れていってます。

何気なく目に入ったのはOKさん。いつもより早く食堂に入ってました。


「ありゃ、どしたん?時間間違い?」

「私に聞かんで」


と話しながら他の利用者様を食堂へと次々に入れていきます。

OKさんは所在なげに車椅子に座り私の動きを目で追ってます。


一通り、入れ終わりOKさんの横へ。


「なんぞ用事かや?」←私

「足、落ちた」←OKさん

「…。はい?」←私

「足、落ちた」←OKさん


ありゃ、大変じゃん。捜索願い出すかい?と聞いたらいらんという。


じゃ、どうしたらいい?と聞いたら下にあるから拾ってという。


拾ってはいいけどさ、落とし物拾って交番届けないと横領でつかまらん?と聞いたら私のやから大丈夫と。


イヤイヤ、名前書いとらんしと私。

(既に足はあげてステップに乗せてる)

交番届けて3ヶ月して持ち主こんと私のになる?いやぁ、この足、いらんねぇ。臭いしさあと続けると何も言わず笑ってただけのOKさんが一言。


「しばくばい」





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