第107話 スカート

 石井との会話を終えた後、颯は教室に戻る。


「「「あ!? 」」」


 遥希、瑞貴、愛海が颯を待っていた。1学期では頻繁に見た光景だ。


 遥希達は嬉しそうに颯を大いに歓迎する。


 颯が自分の席に座り、遥希達が周りを囲う。


「ずいぶん遅かったな。何か有ったのか? 」


 遥希が意外そうに颯に尋ねる。


「…ちょっとトイレに」


 どこか上の空の態度で答える颯。


「颯君!! 遅くて心配したんだよ~~」


 勢い良くダイブするように颯に抱きつく瑞貴。


 瑞貴のシャンプーの香りが颯太の鼻をくすぐる。非常に心地よい香りであった。


「おい!! 颯を独占するなよ!! 」


 遥希が強引に瑞貴を引き剥がそうと試みる。


「そうだし!! みずっち!! 」


 愛海も遥希に加担する。


「いやだ~~。離れたくない~~」


 踏ん張る様に、瑞貴は颯にしがみ付く。中々離れない。


 瑞貴の抱き付く力が颯の身体に強く伝わる。


 丁度、遥希のスカートが颯の目の前でヒラヒラと揺れる。


 少しでも手を伸ばせば届く距離だ。


『早速だが命令だ。お前は最初に遥希達に嫌われるように努力しろ』


 つい先ほどの石井の言葉が脳内に何度も響き渡る。


 命令に従わなければ、遥希達は少なからず被害を被る。


(やらないといけないんだ!! 俺がやらないと )


 胸中で自身に喝を入れる颯。気持ちを奮い立たせる。


「わっ。おっと」


 わざとらしくバランスを崩したフリをし、颯は遥希のスカートを上に捲る。


 遥希の制服のスカートが宙に舞う。


 真っ白のパンツが、ほんの一瞬だが露になる。パンツの色と形をしっかりと颯の目は焼き付ける。


「キャッ」


 悲鳴のような声を上げる遥希。珍しく女の子らしい声色を漏らし、恥ずかしそうにスカートを両手で押さえる。


「お。おい!! 何をする!!! 」


 動揺と同時に怒りも露にする遥希。遥希の顔はトマトのように真っ赤に染まる。


「ご、ごめん。身体のバランスを崩しっちゃって」


 申し訳なさそうに謝罪する颯。後悔と罪悪感が颯の心を支配する。


 遥希のスカートの中が見えたことで、瑞貴も愛海も固まる。瑞貴は颯をホールドしたまま動かない。


「もぅ~。まぁ、仕方がない。次からは気を付けろよ」


 恥ずかしそうにスカートを整えながら、遥希は厳しい口調で颯を注意する。


「ごめんなさい」


 丁寧に頭を下げる颯。


『ブブッ』


 直後に、学生カバンに入った颯のスマートフォンが振動する。1つの通知がSNSを介して届く。


『よくやった。非常に滑稽だった。まだ終わりじゃないぞ。もちろん分かってるよな?次の命令だ』

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