第99話 いざ勝負!!
「遥希ちゃんの言うことはつまり。うち達が颯君のために朝食を作って、誰が1番満足させれたかを競うってこと? これで間違ってない? 」
遥希の言葉を分かりやすく意訳する瑞貴。
「ああ。その通りだ。誰の朝食が1番美味しくて満足できたかは勿論だが颯に決めてもらう。お前達、異論は有るか? 」
確認するように、遥希は瑞貴と愛海に視線を送る。当然2人と遥希の視線は時間差を経て交わる。
「いいよ。やろうよ。颯君にうちの愛を込めた手作り料理を食べて貰いたいとも思ってたから」
「う、うちも。作ってやるし。はるっちやみずっちにも愛海は負けないし。絶対に」
自信たっぷりな態度の遥希に対抗するように、勝負に対するやる気を口にする瑞貴と愛海。2人とも負ける気は更々無さそうだ。
「ふふっ。やる気は有りそうだな。だが私は負けんぞ。料理は私の得意分野だから。絶対に譲れん」
遥希も余裕な態度を全く消すこと無く、強気な姿勢を貫く遥希。遥希からは自身がヒシヒシと伝わる。それを少なからず颯も感じる。確固たる自信が遥希の中に秘められてそうだ。
「確かに遥希ちゃんは料理が上手だよね。うちよりも間違いなく料理のスキルは高いと思う。でも料理はスキルだけが全てじゃないから。料理を振舞う相手に対する気持ちがスキルを超越することも有り得るから。うちは気持ちだけは遥希ちゃんにも愛海ちゃんにも決して負けないから。料理に愛を込めて必ず颯君のハートと胃袋をキャッッチするよ」
「ほう? やる気も敵対心も十分じゃないか。スキルと気持ちの勝負か。面白いな。ただ1つ伝えたい内容も有る。颯に対する気持ちは私もお前には負けないからな? その点は留意しておけよ瑞貴」
「本当に? うちの颯君に対する気持ちは遥希ちゃんの想像以上に熱くて強いと思うけど? 」
「ははっ。確かにそうかもな。ただそれでも私の方が上だがな」
「ふふふっ。面白いこと言うね」
「瑞貴もな」
バチバチッ。バチバチッ。
薄ら笑いを浮かべる遥希と満面の笑み(目は決して笑ってない)の瑞貴から放たれた
そのせいで気後れした愛海は遥希と瑞貴の前哨戦に参加できない。黙って事の流れを見届けることしか出来ない。完全に出遅れてる様子だ。
「それじゃあ始めるか。それと始める前に颯に聞きたいことは1つ有るが。いいか? 」
バチバチの瑞貴から視線を外し、颯に意識を向ける遥希。火花の散る視線での熱い戦闘は一時休戦だ。
「え!? 俺に? 」
突然の指名に驚きを隠せず、無意識に自身の顔を指差す颯。
「ああ。丸投げするようで悪いが、颯に朝食対決のお題を決めて貰いたい。何でもいいぞ。王道の朝メニューでなくてもいい。とにかく颯の食べたい物をお題として決めてくれ。それに私達はただ従うだけだ」
急展開で大きな役割を振られる颯。お題など決めるなど思いもして無かった。
「ええ~~。俺? いきなり言われても難しいな~~」
頭を悩ませながら顎に手を当てて真剣に考える颯。いざ、お題を決めるとなると中々難しい。すぐには浮かばないのが人間だ。
「う~~ん。何かな。今は、おにぎりが食べたい気分かな…」
独り言のように颯はボソッと欲求を呟く。結構な小さな声だったが。
当然、遥希達が聞き逃す訳も無く。
「聞こえたか? 颯は、おにぎりが朝食に希望だそうだ。お題は、おにぎりだ。文句はないな? 」
「もちろん」
「有るわけないでしょ!! 」
遥希の声掛けが起爆剤となり、一斉にキッチンに向けて動く3人。
非常に行動が速い。
まず遥希が1番初めに冷蔵庫に到着する。慣れた手付き(颯の自宅の冷蔵庫にも関わらず)で冷蔵庫の1番上の段を開ける。中身に目を通す。数秒後、2段目の野菜の入った所を開ける。同じように中身に目を通す。
「うん。食材少ない! 私は買い出しに行ってくる」
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