第92話 登場は突然に
「おぉい!! 何してくれてるの!! 絶対に気分を害してたよ!! 」
瑞貴から変な形で電話を切られ、焦りを覚える颯。瑞貴の声色から明らかに機嫌の悪さが窺えた。
「何って。颯ちゃんと親しそうな女の子に色々と聞いただけだよ? 」
特に悪びれた様子も無く、母親は平然と答える。反省の色も一切見えない。
「いやいや。急にお母さんが話に割って入るから瑞貴ちゃんが不機嫌になったんだよ!! そんなことも分からないの!! 」
焦りは怒りへと変わり、声を荒げる颯。完全に平静さを失っている。
「あら~~。これは相手の女子が電話を切った理由を完全に理解してないわけだ。相
手の女の子も大変な訳だ。うんうん」
やれやれと呆れた顔を作り、母親は大きく溜め息を吐く。
「な!? そ、それはどういうことだよ。抽象的じゃなくて、もっと具体的に説明し
てよ」
不満そうに眉をひそめ、母親からの説明を求める颯。明らかに不機嫌さを醸し出
す。
「相手の女の子が可愛そうだから言わない。その子のためだから」
颯の要求を躱すように拒否し、母親は瑞貴を守るような言葉を口にする。口は堅そうだ。
「う。…いいから教えてよ。勿体ぶらなくてさ」
母親の言う部分が理解できず、目を細めながら苛立ちを隠せない颯。いち早く分かりやすい説明を欲している。
『ピ~~ンポ~~ン』
そんな中、ドアフォンのボイスが自宅全体に響き渡る。当然、その音は颯の耳にも嫌なほど伝わる。
「お客さんみたいね。待たせたら悪いから早く出た方が良さそうね。どうする? 」
「…」
不満だが仕方ないため、颯は黙ってソファに腰を下ろす。後から詳しく問い質そうと決意もしていた。
颯の動きを確認した後、母親はリビングを抜け、玄関へと移動する。訪問者に対応するために。
ガチャッと自宅のドアを開ける音がリビングまで届く。
「あら、どなた? 見た感じ颯ちゃんと同じぐらいの年頃に見えるけど」
(うん? 同じぐらいの年頃? )
母親の対応と言葉に違和感を覚え、ソファから立ち上がりリビングを抜ける颯。そのまま玄関に移動する。
「あら! 颯ちゃんも出てきちゃったの? 」
少し驚いた様子で来訪者から颯に視線を移す母親。
だが、颯に母親の声は届かない。来訪者から目を離せないためだ。目の前には知っ
ている女子が居た。
「はぁはぁ。颯…君…。この女の人……誰かな?? 」
両膝に手を付き、苦しそうに息を荒らす来訪者。その正体は先ほど電話した瑞貴であった。
「もしかして颯ちゃんのお知り合いさん? 」
一方、母親は颯と瑞貴へ交互に視線を移しながら、不思議そうに尋ねた。
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