第76話 恋の予感
「…ありがとね。わざわざ送り届けて貰って」
藤田が逃げた後、愛海の恐怖心が抜けてないと推量した颯は、愛海を自宅まで送り届けることにした。
今は、その途中だ。愛海の道案内に従い、2人並んで彼女の自宅に向かう。
「全然。問題ないよ。それにしても大丈夫? 恐怖心から体調が悪かったりとか無い? 」
素直な気持ちを口にした上で、颯は愛海を気遣う。とにかく愛海の精神状態が心配であった。
「……。はるっちとみずきっちが惚れた理由が分かったかも…」
驚きでパチパチと目を瞬かせた後。颯には聞き取れない非常に小さな声でボソッと呟く愛海。
「うん? 何か言った? ごめん。聞こえなかった」
内容を聞き取れず、聞き返す颯。
「ううん。何でもないし!! ただの独り言だし!! 気にしないで!! 」
なぜか慌てた様子で、顔の前で両手をバタバタさせる愛海。
「そう? ならいいけど」
しつこいと愛海に不快感を与えると考え、颯は敢えて追求しなかった。そのため、疑問を抱いたまま、颯は愛海の自宅まで向かう形となった。
「ここが愛海の家だから」
愛海が、ある1軒家を指差す。1軒家は全身が真っ白の2階建てだった。
「そうなんだ。じゃあ、もう大丈夫だね。俺は、これで! 」
自身の用は済んだと判断して別れの言葉を告げ、颯は帰路に就こうと試みる。
「あ、ちょっとタンマ。待ってし!! 」
数歩ほど颯が歩を進めたタイミングで、愛海に呼び止められる。
「今日は助けてくれたり、自宅まで送り届けてくれたり、色々とありがとね。これからは。え~っと。うちともっと仲良くしてくれない? ダメ? 」
緊張した硬い面持ちで、愛海は颯に尋ねる。
「もっと仲良く? それは全然構わないよ? 宮城さんが求めるなら」
不思議そうに首を傾げながらも、颯は拒否せずに了承する。改めて今よりも仲良くしたいと口にする愛海の意図が理解できなかった。
「本当に!! 約束だからね!! 言質取ったし!! 」
颯の返答を受け、愛海は早口で捲し立てる
「う、うん。…オッケー……」
愛海の必死さに、少し圧倒された颯であった。
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