第74話 力づく
「何だ。お前か。僕に親友との縁を切られた天音君じゃないか」
不機嫌そうに藤田は眉を下げる。
「悪いけど君は邪魔な存在だ。さっさと。この場から消えてくれない? 」
素直に颯が言うことを聞くと思ったのだろう。興味を失ったように、颯から目を逸らし、藤田は再び愛海に視線を移す。
「そ、それは出来ない。…どう見ても宮城さんのピンチだと思うから」
未だに消えない恐怖心と戦いながら勇気を振り絞って、颯は藤田の要求を拒否する。ここで逃げるわけには行かない。もし逃げたならば、男としてみっともない。
ただ身体は正直であり、未だに藤田に対する恐怖心は抜けない。背中には何滴もの冷や汗をかいている。
「天音っち…」
恐怖から他者に助けを求めるような子供のような目を浮かべる愛海。心の中では助けを求めていたのだろう。はっきりと露見する。
「へぇ~~。反論するんだ~。いいよ!! 言動は個人の自由だ。好きにすればいい。ただ、それは僕にも当て嵌まる。もし止めたければ力づくで止めることだね。まぁ、君程度の人間だったら絶対に不可能だと思うけど」
完全に颯を見下した態度で、藤田は鼻で笑う。
(な、なめやがって~。や、やってやるぞ~~。相手は、あの藤田だからって関係ない。俺は、あの時よりも圧倒的に強いんだ!! やれ。やるんだ!! 颯!!! )
奮い立たせる言葉を自身に掛ける颯。そうしないと行動に移せない。
「うわぁぁ~~~」
大きな声で叫びながら、颯は藤田へダッシュで向かって行く。
未だに藤田には余裕が有る。力づくで止めるなど出来やしないと、見透かしている顔だ。
(やるんだ! やってやるぞ!! 藤田を止めるには力づくでないと)
右拳を強く握り締め、これでもかと歯を食い縛り、颯は藤田の右頬を全力で殴った。
「ぐわっ!? 」
油断していて颯の拳に襲われた藤田は、勢いよく地面に尻もちを付いた。
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