第73話 情報提供の要求
「やぁ。ちょっと時間を貰っていいかな? 」
ターゲットを変更した藤田は、放課後に早速、微笑を浮かべながら愛海に接触する。
周りに誰も居ない1人で下校しているタイミングを狙い、愛海が正門を抜けて少しした所での接触を図る。
「!? 」
藤田を目にした愛海は分かりやすく動揺を顔に出す。明らかに藤田に対する恐怖心が見える。
「いきなりで悪いけど。八雲遥希の弱みについて知らないかい? 僕にとって彼女は厄介な存在なんだよ。それに、この僕に恥もかかせた。実に許せないことだ。だから、僕に貴重な情報を提供してくれないかい? もし教えてくれなければ。分かってるよね? 」
脅すような意味合いを持った言葉を出し、藤田は愛海から情報提供を求める。
少し、無言が続いた後、迷っているのか。愛海は何度か顔を左右に振る。そして決心がついたように、藤田を鋭い眼光で見つめる。
「い、嫌だし!! 大切な友達を売ることなんて。愛海には出来ない!! 」
勇気を振り絞った口調で、愛海は藤田の要求を拒否する。
結構な体力を消耗しているのか。少し愛海の息が荒れる。
「へぇ~~。まさかの拒否か~」
愛海に要求を拒否されたことで、藤田は不機嫌そうに顔をしかめる。藤田にとって予想外だったのだろう。彼の中で愛海は都合よく自由に扱える人間だったのだろうか。
「それじゃあ。前のように。君の大切な縁を切ってしまおうか」
二ヤ~っと悪いことを企てる不気味な笑みを作る藤田。
「っ!? 」
藤田の不気味な笑みに反応し、顔色を悪くしながら、愛海はビクッと肩を跳ねさせる。思い出したくもない嫌な記憶が愛海の脳内を駆け巡ったのだろう。
「そ、そこまでだ。もう、そこまでにしない? 」
藤田の後方から聞き覚えのある声が生まれる。
「うん? 」
不機嫌そうに目を細め、藤田はゆっくり振り返る。藤田の視界から愛海は消える。新たな人物が藤田の視界に収まる。
そこには、恐怖心を抑えるように歯を食い縛る颯の姿があった。
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