第72話 ターゲットの変更?

「クソ。あいつら僕に好き放題やりやがって…」


 身体を痛そうに、普段よりも遅く、足を少し引きずるように歩く藤田。


 あれから男子2人に引きずられた後、誰も利用していないトイレで、藤田はボコボコにされた。男子達は遥希に関わらないと言うまで徹底的にボコボコにすると何度も口にしていた。


 当然、藤田は黙って受け身になる訳では無かった。男子3人の暴力に必死に抵抗した。


 だが、体格と人数に大きな差があった。正直、男子2人の敵では無かった。


 抵抗虚しく、最終的に藤田は一方的に殴られる形になった。


 そのせいで、制服で隠れた部分の身体には幾らか腫れや傷が残っている。おそらく鈍い痛みが藤田の身体を襲っているのだろう。容易に想像できる。


 苦しそうに廊下を進みながら、自分のクラスである2年7組に戻ろうと試みる藤田。


 重い足取りで2年7組の教室に移動する最中、偶然にも藤田は向かい側から歩いて来る愛海を発見する。


 愛海も藤田の存在に気づき、自然と2人の目が合う。


「っ…」


 恐怖心からか。立ち止まり、愛海は分かりやすく両肩を跳ねさせる。


「ふふっ。僕にも少しは運が有るみたいだね」


 その怯え具合に、藤田は自然に零れた薄ら笑いを浮かべる。何処か嬉しそうだ。


 そして、「ターゲット変更」と面白そうに呟いた。

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