第64話 欠席
颯が正体不明の男子と出会った次の日。当たり前のように学校が有った。
今日、聖羅は石井と学校内で会っていない。会いたくないわけではない。心の底から会いたい。
だが会えない。理由はシンプルだ。
石井が体調不良で学校を休んでいるからだ。そのため、会いたくても会えない。
早朝に石井から聖羅に連絡が届いた。その内容は謝罪と欠席する理由だった。
そんな唯一の仲間が居ない学校で、聖羅は寂しく時間を過ごす。
いつも通り授業は終了する。教室も騒がしくなる。
だが、普段通り彼氏の石井と合流できない。石井が学校を休んでいるからだ。それだけで、聖羅には大きなストレスが掛かっているに違いない。心細さも有るだろう。
そんな聖羅は教室を退出する。どうやらトイレで用を足す予定らしい。
早歩きで廊下を歩く。
「ねえねえ。今日は彼氏さんと一緒じゃないね」
「彼氏さん学校を休んでるらしいよ! 」
「それはざまぁないな!! 1人だと哀愁感が漂うな」
「浮気したくせに彼氏と付き合ってリア充な学校生活を過ごしてるのが、正直ムカついてたんだよ。少し気分が良いわ。学校を休んだ石井には感謝だな! 」
「本当に!! 1人だと何だかビクビクしてるね。やっぱり仲間が居ないと周りからの視線や言葉が恐くて仕方ないのかな? 」
廊下に身を置く生徒達から容赦の無い視線や言葉が飛ぶ。男女関係なく、聖羅の姿を認知した生徒達は口々に放つ。廊下に身を置く大部分の生徒達の視線が、聖羅に集中する。
「っ!? 」
視線と悪口に耐えられず、聖羅は前だけを向きながら、廊下を駆け抜ける。
学校のルールでは廊下を走ってはいけないが、そんな校則を無視し、必死な形相で歯を食い縛りながら、全力で両腕を振り上げる。
多くの視線が聖羅の背中に突き刺さる。これらの視線は鋭く、尖っている。実に痛そうだ。
しばらく走り続けると、女子トイレ前に到着する。
聖羅は迷うこと無く、トイレに駆け込む。
適当に空いてるトイレに入り、高速でカギを閉める。
「はぁはぁはぁ…」
大きく息を乱しながら、まるで強烈な頭痛に襲われているかのように、聖羅は両手で頭を抱える。
「2人なら大丈夫なはずだった。でも。…でも1人になったら話は別だった。……きつすぎる……」
未だに息を荒らしながら、聖羅は何とか苦しそうに言葉を紡ぐ。
そんな絶望的な状況の中、聖羅の頭に1つの言葉が流れる。
『ふふっ。まぁいいや。今日は、この辺に終わらせるよ。あ〜〜ぁ。僕の言う通りにすれば今の過ごし辛い学校生活を劇的に変えてあげられるのにな〜』
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